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『八乙女×2』32話の感想

八乙女×2 - 氏家ト全 / 【第32話】今年ももう終わりかと言う季節 | マガポケ

 この記事が終わると一旦ブログが平常運転に戻れます。うれしい。
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第32話「今年ももう終わりかと言う季節」

 前半4コマが4ページ、後半ショートで10ページ。計14ページなのでちょっと長め。その中でも後半の割合が大きいので余計にじっくりとした進行の話を読んだ印象になりますね。年末故の特別感。

 前半。両八乙女家の大掃除。シンプルながら隣人同士が同じタイミングで大掃除を行う、というシチュエーションの面白さが溢れてる。ものすごくフランクにお隣さんに行ったり来たりする。まぁ本作ではいつものことなんですが、大掃除という一般的な状況に当てはめることでその特殊さが際立って見えるというか。
 大掃除のやる気を出す方法。「やる気を出す」から話が始まるので面白かったんですが、ハルルのボケが正真正銘の中二病なので笑った。リアルに中二、という背景の強さは今年しか成立しないw
 意味なく行き来しすぎ(特にハルル)、という前提を踏まえて発展を見せる後半の2ページも良かった。それぞれは単独の4コマ(8コマ)だが、ちゃんと時間が経過し、その日の出来事が積み重なってる感。大掃除が終わったと思ったらカイの部屋にめっちゃ残してあって、今度こそ終わったと思ったら次は改めてカイの部屋に私物を持ち込む。微笑ましい。座椅子という普通他人の家には持って行かないもの、というオチも良かった。2人の距離感であり、大掃除直後故のフットワークの軽さだったのかもしれない。
 地味にうまかったのは、カイ母の排水溝のネタ。1コマ目の鏡に映る姿がちょっとだけ印象的だったんですが、その鏡の中の顔というのがオチとして出てきて、今度はその鏡の中を見せない(おそらく2コマ目がそれ)。鏡の前だから自分の顔が勝手に目に入ってくる、だから思いついたオチ、という意味でも面白いし、4コマ漫画としての見せ方も秀逸だったと思います。

 後半。忘年会。文芸部の忘年会を、本木家にて。なぜかルイも同席。この文芸部を取るかルイを取るかという問題が本作には常にあったと思うんですが、ついに両方取るという究極の解答。部の先輩はもうすぐ卒業しちゃうので、こういう特別なシチュエーションを描けるのは忘年会だけだったんじゃないかな。
 そんなルイと文芸部の先輩、初対面の絡み。武隈パイセンがパイセン風吹かせようとするので笑ってしまった。いや、変な計算とかではなく普通に天然なんでしょうけどね。しっかり者で憧れの先輩、みたいになってもおかしくないのに、惜しい……。
 王様ゲーム。本木ランが王様になった瞬間、中学生の間に緊張感が走る。笑える場面なんだけど、妙にリアルというか、彼女だけ一線越えた存在という説得力がある。指令はアユムがカイに顔面騎乗……は当然無理なので耳掃除。「酒入ってんのかな?」(未成年)というぶっ込み方で笑ったんだけど、その代理案の耳掃除も結構過激……とは言わないけど中二男子にはちょっと刺激が強すぎやしませんか。ドキドキソワソワして夜眠れなくなっても不思議じゃないんですが、顔面騎乗のあとだと普通にほのぼのとした空気に感じてしまうからうまいな。もしくはずるい。
 割り箸の傷に気づいてしまったルイが王様。知らないフリしてカイに好きな指令を出せる。独り相撲ではあるが、妙に心理戦、情報戦みたいな展開になるので面白い。指令が肩もみというのも微笑ましくて良いですね。というか、直前に下ネタからの耳掃除があったので変な指令は出しづらい、という流れもあったんだと思う。キスはもちろん無理だし、ハグにしても王様にさせるパターンの命令なので、男子が1人しかいない会では成立しない。そう考えると肩もみはめちゃくちゃ妥当、現実的なラインでギリギリ下心って感じで良いですね。ただし、その思惑はカイの汚文字によって崩される。いろんな人に叱られる汚文字。
 ハルルが王様。今度は数字を言った直後にカイが当たったと気づく。ので急遽指令を考え直して、 “私のこと名前で呼んでもらおうかな” 。出た、ハルルの名前呼びの件! 本作の連載の中で長い間引っ張られてきたこと。表立ってテーマとして語られるほどではないがずっとハルルが気にしてたこと。それが王様ゲームとはいえ、一旦の勝利(?)を迎えることになるとは……。ちょっと感慨深いですね。
 お泊まり。みんなが寝静まった頃、ルイがハルルとサシ。カイが当たったことをハルルが気づいた、ことにルイは気づいていたのでその件。ルイは偶然、事故という形でカイを特定(失敗)したわけだけど、ハルルは割り箸とは対照的にカイそのものを見てたことで気づく。別に2人は同列の状況にいないので勝ち負けではないんだけど、どうしてもハルルが長年の関係性の蓄積によって勝ち取った、みたいな印象にもなってしまう。それを深く掘り下げるでもなく、静かに納得し、そのまま眠りにつくルイ、という場面の終わり方がめちゃくちゃ良かった。最終ページでエモくなることはたまにありますけど、最終ページ1つ前でこういうのが来るとびっくりしてしまうぜ。
 ということで最終ページ。朝チュン。カイに勝利したと思われるハルルだが、カイからの目覚めの挨拶は「八乙女」。元の木阿弥という絶望感で笑った。まぁ、カイとしては指令として言っただけなので、彼の気持ちも分かるのですが、ハルルが可哀想なのも痛いほど分かるw


 終わり。次回は「初詣&雪雪雪!!」だそうで。そのまんまですね。先輩たちの合格祈願がメインになる気がする。
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