An afterimage - Syncronize to Skarlets - (2020)

久々にCD買った。

2024年最初で最後だな。

80年代に活動した日本のニューウェーブ/ポストパンク〜ネオサイケデリック系のバンド、シンクロナイズ(ザ・スカーレッツ)の編集盤。

僕の感覚ではJoy division、the cure、エコバニ、ルースターズといった感触の音楽。

やっぱ当時物のパンクって浪漫あるよな〜。嫌でも情報が入ってくるこの令和の時代においてはありえないほど純粋な音楽。日本の音楽とか一切聴いてなさそう。それがいい!

音楽性は海外ではよくある感じなのだが、そのチョイスが不思議というか日本ではあまりない感じ。

特にこの低音の太い声で朗々と歌うヨーロッパ風のボーカルは日本では殆ど見かけない。海外ではモリッシーとかエコバニとかポップグループとかなんぼでもおるけど、日本だと同時代のザ・スラッジとかしか知らない。

それを日本語で聴けるのは魅力だし、何より日本人が作っているのでメロディーが日本人好み。本国のバンドだとアルバムの半分くらい退屈な曲が占めるなんてこともザラだけど、その点このバンドは海外のバンドのいいとこ取りと言える。

それに加え空間系の音を使いこなす美しいギター。やはりキュアーとかU2とかを想起させる。このギターだけで刺さる人には刺さるだろう。

あとこの異様な歌詞もすごい。日本の風土を全く感じさせない独特の世界観をもってる。

CDのライナーでも書かれていたがこの時代のロックの歌詞って不良を強調した物かはっぴいえんど的なですます調みたいなパターンで決まってた気がするけど、それを見事に破壊してる。まぁそれはINUとかもっと凄いんだけど、このバンドは楽曲の世界観を壊さない事に重きを置いていてそれを完璧こなしている。古臭さを全く感じさせない。

 

 

都市通信

バンドの代表曲的な感じだろうか。イントロから優勝。流麗なイントロからストレートなパンクになる無理やり感が愛らしい気がする。

 

転写

この曲地味に都市通信より好きだなぁ。テクノポップのエッセンスがパンク感をより深めている。ジョイ・ディヴィジョン度はかなり高い。

 

Easy Money

リズム隊のグルーヴが気持ち良い。この曲はキュアーっぽくもある。初期のポストパンクスタイルは今聴くと売れそうだけど、当時は早すぎたんじゃないかなと想像できる。キュアーとか誰も聴いてなさそうだし…。

 

訪問者

パンクから一転マイナー調のバラードかと思わせてボーカルが入った途端、一気にパンクに引き戻すその対比が独特の世界観を生んでいる。なんか単調で長いんだけど聴いてられるんだよなぁこのバンド。歌詞含め楽曲の世界観がしっかり作り込まれている。

 

幼年期

非常にキモいビートにキチガイピアノと不気味なノイズが不完全な生命体である幼年期を表してる感じがして文学性を感じる。蛹の中でどろどろに溶けた状態をイメージします。けど不思議とポップ。この曲を幼年期と名付けるセンスのなせる技だよな。イメージが湧きやすい。最低限のベースが楽曲の肝だと思う。

 

連続線

これまたキモい曲。これは初期キュアーの退屈な曲にすごく近い感触。アルバムにこういう曲があるとすげぇ良いんだよな。煙に巻かれる感じというか。この感覚をよく邦楽に落とし込めたなと思う。

 

PRIEST

この曲、日本一早いビジュアル系説あるよな笑。plastic treeとかがやってても何らおかしくない世界観。これで83年。やはり早過ぎたバンド。

 

MODE

氷や万華鏡という感じのギターが素晴らしい。四つ打ちで彼らなりのダンスチューン。ボーカルの節回しが独特過ぎる笑。ボーカルがぶっ飛んでるんだよなぁ。何言ってるか全然分からない笑。いや〜変態。褒めてます。

 

Dlsillusion

アレンジがパンクからニューウェーブの所まで来たなという感じ。音響を意識して空間を使いだしたな。エコバニU2とか新世代の香りがする。

 

愛の見解

ここから言語化が難しい領域に入ってくる。テーマが風景描写からインナーワールドや哲学まで拡がっていく。これも煙に巻かれるような印象でアルバムにあると良いんだろうなぁ。

 

Please

一番メロディアスでポップ。この風通しの良い躍動感のあるネオアコ的な世界観はラルクに通ずるものがある。これも日本で最も早いネオアコ説ある。

 

holiday

この曲からはロックを感じます。先の曲がラルクならこれはルナシーか…いや全然違うか笑。ハンドクラップのアレンジが秀逸。キュアーがセカンドからサード出した時みたいな厚みの増したアレンジが魅力。

 

NOBUYA

歌詞の才能が爆発してる。SFサイコホラーサスペンスというか…。この人その気になれば星新一みたいなSS書けそう。本あんま読まんから知らんけど。この曲はYMOとか好きな人は刺さりそう。アバンギャルドポップって感じ。当時この曲が子供の部屋から流れてきたらお母さんから苦情がきそう笑。

 

POLAR SONG

この曲は正にエコー&ザ・バニーメンという感じ…というかキリングムーン。極寒の地でオーロラや鍾乳洞の湖と小舟が目に浮かぶ。…全部エコバニのジャケやけど笑。9分もあるのに長さを感じさせない。アウトバーンから北海を泳ぐとか今まで聴いたことない歌詞。クソかっこいい。

 

Sun Room

ここからスカーレッツに改名。基本何も変わらないような。エコバニ路線のネオサイゲデリア。ギターリフが素晴らしい。

 

告白

久々のキュアー路線。訪問者と同系統。あれよりもっとドラマチックでディスインテグレーションの先取りみたいな。シンクロナイズ時代はバラードをやる事への照れがあったように思う。ストレートなメロディーになっただけに歌詞の歪さが浮かび上がって面白い。

 

Clear Screen

Pleaseのリメイク。ゴージャスなネオアコ。Lotus Eatersを思い出した。

 

反射率

ここまでこのバンドを聴いてきて非常にらしい楽曲だなと思う。エスニック風?のシンセが特徴的。全てが独特。

 

Liverpool

タイトル通りイギリスのドンヨリとした空気を感じるが、それでいてフレーズはアジアンテイストな気がする。

 

精霊代

気合いの入った一曲。これもキリングムーンっぽい。「この胸の痛みはお前には触らせはしない」というフレーズが珍しくエモーショナルで良い。

 

残像

厳しいフレーズと朗らかながらどこか退廃的なパートが交錯する構成の楽曲。喪失感を歌っていて個人的な内容の楽曲なのだろう。バンドの終焉を感じさせる。厳しいフレーズが足掻きというかバンドの体裁を保つ為のバランス感覚が伺える。

 

彼方

これもバンドの終焉を感じさせる楽曲。個人的な内容ながらこれを弾き語りでやることは出来ないだろう。そこにバンドのプライドを感じるが、ここまで来るとボーカルのソロって感じ。

 

総評、通して聴いて洋楽の影響は強いがそれだけに留まらないバンドであることが確認できた。特に訪問者、幼年期、連続線、MODE、反射率などのひねくれた楽曲は独自の魅力がある。久々に音楽をじっくり聴く機会をくれたバンドに感謝!

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