債務不履行による損害賠償

 特定物・不特定物のところでは民法521条
Article 521(1)Unless otherwise provided for in laws and regulations, any person may freely decide whether or not to conclude a contract.
 を取り上げました。may「(もう大人なんだから)自由に契約してもよいし、しなくてもよい」ということです。
 今回は契約を破るとどうなるか?を取り上げてみたいと思います。

目次

民法415条債務不履行による損害賠償

(債務不履行による損害賠償)
(Compensation for Loss or Damage Due to Non-Performance)
第四百十五条債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
Article 415(1)If an obligor fails to perform consistent with the purpose of the obligation or the performance of an obligation is impossible, the obligee may claim compensation for loss or damage arising from the failure; provided, however, that this does not apply if the failure to perform the obligation is due to grounds not attributable to the obligor in light of the contract or other sources of obligation and the common sense in the transaction.
蘭箱絵巻 ←ここをタップしていただくと、幕府の役人とオランダ商館員が天秤を使って取引を行っている様子が窺えます。会計用語では「経費」・「費用」はexpensesでした。pens「(天秤に吊るして)量って」、ex「支出する」ということです。Compensation「賠償」にもpensが使われています。きちんと損害を量って償うわけです。

2前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
(2)If the obligee is entitled to claim compensation for loss or damage pursuant to the provisions of the preceding paragraph, and any of the following cases applies, the obligee may claim compensation for loss or damage in lieu of the performance of the obligation:

一債務の履行が不能であるとき。
(i)the performance of the obligation is impossible;

二債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
(ii)the obligor manifests the intention to refuse to perform the obligation; or

三債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。
(iii)the obligation has arisen from a contract, and the contract is cancelled or the obligee acquires the right to cancel the contract on the ground of the obligor's failure to perform the obligation.

民法369条抵当権の内容

(抵当権の内容)
(Content of Mortgages)
第三百六十九条抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
Article 369(1)A mortgagee has the right to have the mortgagee's claim satisfied prior to other obligees out of the immovables that the obligor or a third party provided to secure the obligation without transferring possession.
[Google翻訳でフランス語訳]
Le créancier hypothécaire a le droit de faire satisfaire sa créance avant les autres créanciers sur les immeubles que le débiteur ou un tiers a fournis pour garantir l'obligation sans en transférer la possession.

2地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。
(2)Superficies and farming rights may be the subject matter of a mortgage. In this case, the provisions of this Chapter apply mutatis mutandis.

まとめ

 

 

危険負担

 今回のテーマは、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったとき、例えば自然災害等で債務が履行不能となった場合を主として考えていきたいと思います。
 また、この根拠となる履行不能自体及び履行遅滞も取り上げてみます。

目次

民法536条債務者の危険負担等

(Obligors' Burden of Risk)
民法536条 (債務者の危険負担等)
 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。

Article 536(1)If the performance of an obligation becomes impossible due to grounds not attributable to either party, the obligee may refuse to perform counter-performance.
 危険負担とは、契約は成立したものの、引渡しがまだ完了してないうちに自然災害等でその引渡しが不能となったとき、債権者、債務者のどちらに泣いてもらうかを定めたものです。例えば、商品売買では契約直後には次のような債権があります。

   代金支払請求権
      →
 売主       買主
      ←
   商品引渡請求権

 ところが自然災害等のため、商品引渡しが不能になると商品引渡し請求権が消滅します。

   代金支払請求権
      →
 売主       買主

 この段階で条文と照らし合わせてみますと、債務を履行できなくなったのは売主、債権者は買主だと分かります。つまり、残っている債権・債務関係ではなく、消滅した債権・債務関係で判断するのですね。そして債権者である買主は反対給付、すなわち代金支払の履行を拒むことが許される、と言っています。
 例えば、ジョンご愛用のロールスロイスを買おうと思ったのに、買えなくなってしまった。たとえ原因が自然災害であろうと、お金を払う筋合いは無いということです。売主にすれば、踏んだり蹴ったりでしょうけど…

2債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

(2)If the performance of an obligation becomes impossible due to grounds attributable to the obligee, the obligee may not refuse to complete counter-performance. In such a case, if the obligor benefits from being released from that obligation, the obligor must reimburse the obligee for the benefit.

 今度は自然災害等でなく、買主の責任で(例えば、失火)履行不能になった場合です。この場合は買主は代金を支払わなくてはなりません、ならないのですが、売主が火災保険に入っていたとしますと、買主からの支払代金と合算したら二重取りになります。だから保険金は買主に償還しなさい、と言っているのです。
 英訳のmay notにご注意下さい。The BeatlesのCan't buy me loveでI may not have a lot to give「あげられるものがたくさんあるかも知れないし、ないかも知れない」というのがありました。しかし法律文でのmay notは、must notよりは柔らかい表現ですが、「許されない」という意味で、「~しなくてもよいし、~してもよい」という意味ではありません。

(履行不能)
(Impossibility of Performance)
民法412条の2債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない。

Article 412-2(1)If the performance of an obligation is impossible in light of the contract or other sources of claims and the common sense in the transaction, the obligee may not request the performance of the obligation.
 見覚えのあるフレーズが出てきました。
 in light of the contract or other sources of claims and the common sense in the transaction
 「契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」
 このフレーズは前回の民法400条(特定物の引渡しの場合の注意義務)に出てきましたね。少し詳しく見ていきましょう。
 in light of「~に照らして」、contract「contra(相互の)+act(行為)、契約」、sources「原因」、claims「正当なcomplain(苦情)を無視し続けると、claims(債権)がある形をとって強制的に行使される場合があります」、common sense「常識、社会通念」、 in the transaction「trans(越えて)+action(行為)、トランザクション(取り引き)上の」、
 or otherをわざと、或いはうっかりはずしましたが、契約によらない債権・債務関係というのもあります。例えば、代表的なのは交通事故等でしょう。これについてはいづれ取り上げることにして、今のように細かく分解・分析して再びフレーズに総合化する、という作業を繰り返せば、自然と条文が覚えられると思います。Google翻訳にかけて発声してもらうのもよいかと思います。和文でも英文でも。耳から覚えるのは集中力を鍛えられますから。
 それはそうと本条1項は端的に言って「ないものねだりは止しましょう」と、とれます。特定物であれば確かにそうです、そうなんですが、不特定物の場合は?問屋に小麦粉やバターが無くなったからといって、メーカーから取り寄せれば済むわけです。代替がきくからですね。とはいっても問屋の倉庫ごと滅失したら、保管場所がなくなります。また、タワーマンションの眺望のよい部屋が滅失した場合、下層階の部屋が同じ間取りだからといって、果たして代替物と言えるのか?ちょっと疑問です。

2契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、第四百十五条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない。

(2)The impossibility of the performance of an obligation based on a contract as of the time of the formation of the contract does not preclude claiming compensation for loss or damage that arises from the impossibility of the obligation pursuant to the provisions of Article 415.

民法412条履行期と履行遅滞

(履行期と履行遅滞)
(Time of Performance and Delay in Performance)
第四百十二条債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。

Article 412(1)If a fixed due date is assigned to the performance of an obligation, the obligor is liable for delay from the time that due date arrives.
 例えば12月31日の大晦日が確定期限だとすると、明くる年の1月1日の元旦から履行遅滞です。

2債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。

(2)If an uncertain due date is assigned to the performance of an obligation, the obligor is liable for delay from the time when the obligor receives the request for performance after the due date arrives or the time when the obligor becomes aware of the arrival of that due date, whichever comes earlier.
 「出世したら払うよ」という出世払いが典型例です。一応の期限、「出世時」がありますが不確定です。

3債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

(3)If no time limit is assigned to the performance of an obligation, the obligor is liable for delay from the time the obligor receives the request for performance.
 確定期限も不確定期限もないときです。

まとめ

 危険負担の問題は現実には頻繁に起こらないとは思いますが、日本は地震や洪水等の被害が多い国です。起こった場合、売主に不利なことは覚えておきましょう。
 一方、履行遅滞のほうは頻繁に起こり得ます。交通事故などの不法行為では、不法行為があった時から履行遅滞です。運転にはくれぐれも注意しましょう。

特定物・不特定物

Japanese Law Translation様のサイトでは日本の民法とその英訳が載せられています。民法192条 (即時取得)なら次のようです。

(即時取得)
(Good Faith Acquisition)
第百九十二条取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
Article 192
A person that commences the possession of movables peacefully and openly by a transactional act acquires the rights that are exercised with respect to the movables immediately if the person possesses it in good faith and without negligence.

 commencesは以前、命題と論理のところで不思議の国のアリスのフランス語版を取り上げましたが、その中でcommençait à s’ennuyer「退屈し始めていた」というのが出てきましたのでお分かりになると思います。ドイツ語のほうは分離動詞an|fangen「~し始める」で似ていません。

目次

民法399条債権の目的

民法399条 (債権の目的)
 債権は、金銭に見積もることができないものであっても、その目的とすることができる。

Article 399
Even something that cannot be given an estimated monetary value may be the subject matter of a claim.

[Google翻訳 ドイツ語]
Auch etwas, dessen Geldwert nicht geschätzt werden kann, kann Gegenstand eines Anspruchs sein.
 英語の関係代名詞thatは先行詞somthingを修飾しています。The Beatlesのfrom me to youの歌い出し"If there's anything that you want~"を彷彿とさせます。ドイツ語のほうは先行詞はetwas、中性名詞です。dessenは中性・属格(2格)の関係代名詞です。命題と論理のところで出てきた、不思議の国のアリスでは、",das ihre Schwester las"「彼女のお姉さんが読んでいた、」というのが出てきました。何を?答えはDas Buch、中性・単数です。これが先行詞で主格ですが、関係詞節中では、お姉さんが主格の主語で、本は対格(4格)の目的語です。だから関係代名詞はdas。フランス語では"le livre que lisait sa sœur"「彼女のお姉さんが読んでいた本」、先行詞はle livre、男性名詞ですが、フランス語の場合は先行詞の性別に関わらず、関係詞節中で主語になればqui、目的語になればqueです。今の場合は目的語でqueですが
 The BeatlesのMichelleでは
These are words that go together well
Sont des mots qui vont tres bien ensemble
 関係詞節中で主語なのでquiになっています。
 一方、イタリア語・スペイン語の場合は先行詞の性別に関わらないのは同じですが、主語であろうが目的語であろうが、それぞれche、queが基本で、スペイン語だけ主語のときquienというのがあります。関係代名詞はインド=ヨーロッパ語族を特徴づけるものといってよく、命題と論理~その2で出てきた、ロシア語"в книжку, которую читала сестра"、ポーランド語"do ksiazki, która czytala siostra."は「お姉さんの読んでいた本に」という意味で、また、ヒンディー語では、जो(ジョー)という関係代名詞があります。 

ドイツ語の関係代名詞
  男性 m. 女性 f. 中性 n. 複数 pl.
1 主格 N. der die das die
2 属格 G. dessen deren dessen deren
3 与格 D. dem der dem denen
4 対格 D. den die das die

 上の条文の英語訳では、最初の~できない、がcannot、後の~できる、がmayになっています。これでよいのです。canはknowと姉妹語ですから面識とか慣れ親しんでいて「できる」、これはドイツ語のkönnenとkennenにも言えます。
 mayのほうは「~してもよいし、~しなくてもよい」といった感じです。ゲルマン語派でmay, mögenのmはギリシャ語のメガ、ラテン語のmax、ヒンディー語のマハーに通じて「大きい」を意味します。mayは「(もう大人なんだから)~してもよいのか、~しなくてもよいのかは自分で決めなさい」位の感覚です。ロシア語にはмочь「することができる;~し得る;~して良い」があって、canとmayの両役を兼ねています。может「多分、恐らく」というmaybeに相当するものもあります。一方、нужно/надо「~しなければならない」はneed, necessityの系統で、本来はno, nicht, Hetの語源、「欠乏」を意味していると考えられます。サンスクリットのニルヴァーナ(涅槃)はnil「0ゼロ」+vana「vent, wind、風と同根」で「煩悩の火が吹き消された状態、悟りの境地、安らぎ」。
 ドイツ語のmögenにあった「~してもよい」という意味は、dürfenにとって代わられました。must, müssenも「(もう大人なんだから)~しなければならない、じゃなきゃ変だ」位の感覚です。これの否定は英語ではmust not「~してはいけない」でよいのですが、ドイツ語のほうはdürfenの否定を使って「~してはいけない」を表現します。
 The BeatlesのCan't buy me loveでは
Money can't buy me love
= Money can't buy love for me
お金は僕に愛を買い与えてくれることはできない
I may not have a lot to give
あげられるものがたくさんあるかも知れないし、ないかも知れない
 君が喜ぶのならダイヤモンドの指輪を買ってあげるし、お金には躊躇しない。でもね、お金では僕に愛を買ってくれることは出来っこないんだよ、という歌なんですね。

 make, machenは使役動詞として使われると「(強制的に)~させる」の意味で使われます。大きさが関係しているのかも知れないし、そうでないのかも知れません、maybeです。同じ使役動詞でもlet, lassen「(自然に任せて)~させる、語源はlie, lay等と同じく、緩める」、この系統にはlazy, relax、なんてものもあります。makeとletの差違は
The BeatlesのHey Judeの出だし
Hey Jude, don't make it bad.
Take a sad song, and make it better.
Remember to let her into your heart,
Then you can start to make it better.
 3行目にletが使われていて、「あるがままに彼女(オノ・ヨーコ)を受け入れる、ということを覚えておきなさい」位の意味でしょうか、他はmakeで強制的です。1行目「(自分で自分を強制的に追い込んで)悪くとるなよ」、2行目「悲しい歌だって、(強制的に)よりよくできる」、4行目「それからが(強制的に)よりよいスタートをきることができるのさ」。

ドイツ語の助動詞
不定詞 können müssen sollen wollen dürfen mögen möchte werden lassen gehen
意味 ~できる・
~の可能性
がある
~ねばならない・
~に違いない
~すべきだ・
~という
うわさだ
~するつもりだ・
~と主張して
いる
~してもよい
(否定で)
~してはいけない
~かもしれない・
(本動詞)
~を好む
~したい・
~が欲しい
~だろう
(1人称、2人称)
~するつもりだ
~させる ~しに行く
s.1 kann muss soll will darf mag möchte werde lasse gehe
s.2 kannst musst sollst willst darfst magst möchtest wirst lässt gehst
s.3 kann muss soll will darf mag möchte wird lässt geht
p.1 können müssen sollen wollen dürfen mögen möchten werden lassen gehen
p.2 könnt müsst sollt wollt dürft mögt möchtet werdet lasst geht
p.3 können müssen sollen wollen dürfen mögen möchten werden lassen gehen

もう大人なんだからmay「~してもよいし、~しなくてもよい」という 自由、もう大人なんだからmust「~しなければならない、じゃないと変だ」という強制は表裏一体のものです。また、let「(自然、成り行きに任せて自由に)~させる」とmake「(強制的に)~させる」の区別は重要です。不思議の国のアリスで、(as well as she could, for the hot day made her feel very sleepy and stupid), (できるだけ、というのは、お日様が(強制的に)彼女を大変眠たく、そして愚かしくさせたから)
 これがletだと、確かに日射しは自然現象(強制的にではなく)でしょうけど、そうするとas well as she could, For(できるだけ、というのは)が頭についているのはいかにも大袈裟すぎるきらいがありそうです。この後、次の文章が続きます。whether the pleasure of making a daisy-chain would be worth the trouble of getting up and picking the daisies, when suddenly a White Rabbit with pink eyes ran close by her.
 英語のworthは本条(民法399条)のドイツ語訳にGeldwert「Gelt(金)+wert(価値)、金額」がありますが、このドイツ語のwertと同根です。金銭に見積もることができないものとは?、昔でも精神的苦痛による損害賠償請求権などがあったでしょうが、金銭に見積もられていたかどうか、今ではほとんど金銭に見積もられて判決が言い渡されています。確認的な条文といえます。
 ところで不思議の国のアリスは児童文学ですが、使われている単語は結構難しいのでは?と思うことがあります。日本の英語教育はそろそろ検証段階にきているようです。こちらを御覧ください。小学校で教科化「英語」の厳しい現実 神奈川大・久保野教授に聞く

民法400条特定物の引渡しの注意義務

民法400条(特定物の引渡しの場合の注意義務)
 債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。

Article 400
If the subject matter of a claim is the delivery of a specific thing, the obligor must retain the thing with the due care of a prudent manager, which is determined in light of the contract or other sources of claims and the common sense in the transaction, until the delivery.

[Google翻訳 ドイツ語]
Wenn es sich bei dem Anspruchsgegenstand um die Lieferung einer bestimmten Sache handelt, muss der Schuldner die Sache mit der gebotenen Sorgfalt eines umsichtigen Geschäftsleiters aufbewahren, die unter Berücksichtigung des Vertrags oder anderer Anspruchsquellen und des gesunden Menschenverstandes bei der Transaktion bestimmt wird , bis zur Lieferung.

 特定物とは?英語ではof a specific thing、ドイツ語ではeiner bestimmten Sacheとなっています。具体的にはどういうものなんでしょう。そこでGoogle翻訳で実験してみることにします。
「その車が新車であるとき」
英:If the car is a new car
独:Wenn das Auto ein Neuwagen ist

「その車が中古車であるとき」
英:If the car is a used car
独:Wenn es sich bei dem Auto um einen Gebrauchtwagen handelt

 一旦英訳したものをドイツ語訳していますが、newをusedに変えるだけでドイツ語訳に大きな変化が起こっています。Es handelt sich bei D(与格) um A(対格)の構文に置き換わっていますね。意味的にはどうなんでしょうか。英語に直訳するとIt acts itself by D around A、「それがそれ自身Dのそばでの行為が、特定のAの周りでの行為である」=「Dに係る法律行為が、特定のAに関する法律行為である」、無理やりこじつけ(make)たきらいがありますが、Anspruchsgegenstand = an|sprechen「英:speak to、話しかける、請求する」+gegen「英:against~に対して」+stand「立っている」=「請求の対象」です。Do you understand?のstandです。写像の像といってもよいでしょう。一対多の対応ですが、これが分かればOh, I see.となります。今のところは代金支払請求権と商品の引渡請求権位しか見えてこないかも知れません。こういった請求権に係る行為(handeln)、これがDの行為になるわけですが、○○請求権の行使、□□請求権の行使、…、と一杯あるわけです。日本の法律用語ではこれらの請求権が「債権の目的」です。この一杯ある中で特にeiner bestimmten Sache「ある特定の物の」die Lieferung「引渡し」の請求に関するA(特定物)の行為(handeln)であるときに、ドイツ語ではこのような文型をとるのです。数式的に表せば
 x = y
 において、yが中古車とか特定物のときには違う表し方をするんだ、ということです。

 [Google翻訳でフランス語に変換]
 Si l'objet d'une réclamation est la livraison d'une chose spécifique, le débiteur doit conserver la chose avec le soin d'un gestionnaire prudent, qui est déterminé à la lumière du contrat ou d'autres sources de réclamations et du bon sens dans la transaction. , jusqu'à la livraison.
 今度はフランス語です。Si = If = Wennであることは人間の優れたパターン認識能力でお分かりになると思います。日本の法令では、これらはひらがなで「とき」と書かれます。時間の場合は漢字で「時」と書きます。例えば民法193条「盗難又は遺失の時から2年間」というのがあります。
 l'objet d'une réclamation
=the subject matter of a claim
=das Anspruchsgegenstand
 「債権の目的」の表現ですが、ドイツ語はずいぶん違う印象を与えますね。英語のsubject、これだけなら文法用語としては「主語」、しかしsubject matterとなると法律用語としては「目的」となるんですね。
 The BeatlesのStrawberry fields forever
 Let me take you down
 (強制はしませんが)ご案内しましょうか
 cause I'm going to Strawberry fields
 ストロベリーフィールズに行くところですから
 ・・・
 It doesn't matter much to me
 それは私にはどうでもいいこと
 ジョンご愛用のロールスロイスは高かったんでしょうね、今はブリティッシュ・コロンビア博物館にあるそうです。
 それはそうと契約によらず、その他の場合に債権・債務関係が発生するのでしょうか?

民法401条種類債権

民法401条(種類債権)
 債権の目的物を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。
2 前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後その物を債権の目的物とする。

Article 401
(1)If the object of a claim is designated only with reference to a type and its quality cannot be determined in light of the nature of the juridical act or intention of the parties, the obligor must deliver a thing of medium quality.
(2) In the case referred to in the preceding paragraph, if the obligor has completed the acts necessary to deliver the thing, or has designated the thing the obligor is to deliver with the consent of the obligee, that thing thenceforth constitutes the subject matter of the claim.
 債権の目的物のときはthe object of a claimだったり、thing constitutes the subject matter of a claimというんですね。
 obligor「債務者」、obligee「債権者」は、franchisor「本部」、franchisee「加盟店」に字面は似ていますね。力関係は逆転していますが…
 本条は「種類債権」となっていますが、「不特定物債権」の別名です。「不特定物」はいづれ「特定物」となるのですが、1項では、3パターンあります。
①問屋がお菓子屋さんに直接に原料を持参
 原料の小麦粉7袋、バター6箱等をお菓子屋さんに「はいどうぞ」と差し出したとき
②お菓子屋さんが問屋に取り立てに行く
 問屋がお菓子屋さん用の小麦粉7袋、バター6箱を予め取り分けておいて「取り分けておきましたので、いつでもどうぞ」と連絡したとき
③お菓子屋さんの住所以外に送付
 送付するのが問屋の義務なら現実の提供時、問屋の好意なら発送時

 2項は、問屋がお菓子屋さんの同意の上で「お菓子屋さんの分は、これこれです。」と指定したときに特定されます。

民法521条契約の締結及び内容の自由

(Freedom of Conclusion and Terms of Contract)

民法521条 (契約の締結及び内容の自由)
 何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。

Article 521(1)Unless otherwise provided for in laws and regulations, any person may freely decide whether or not to conclude a contract.
 Unless otherwise「特別の定めがない限り」は熟語として覚えておいたほうがよいでしょう。
Unless otherwise provided, shipments shall be made in a manner decided on by the Company.「特別の定めのない限り、発送は企業が指定した方法でなされるものとする。」

2契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。

(2)Parties to a contract may freely decide the terms of the contract, subject to the restrictions prescribed by laws and regulations.
 term「期間、用語、内容」、subject「主題、(subject matterで)目的、(subject to~)~に従って」は多義語です。どの訳がピッタリくるか、を判断しましょう。

まとめ

 債権編のトップ、民法399条から取り扱いました。債権の話しなのに特定物・不特定物等の「物」の話しが出てきます。「引き渡し」の請求権という債権が絡んでくるからですね。債権の発生には契約「その他」がありますが、そのうち契約は「私的自治の原則」に従い、自由なのです。may contract「契約してもよいし、しなくてもよい」しかし、契約が守られなければ?というのが今後のsubject「主題、テーマ」です。make(強制)が出てきそうですね。

商品売買~その三(予約・手付)

 商品売買シリーズその一では現金仕入と現金売上を扱いました。債権・債務は物権の移転と同時に発生・消滅しました。
 その二では掛けでの仕入を扱いました。物権が先に移転し、掛け仕入では債務が残り、掛け売上では債権が残りました。
 今回は先に債権・債務が発生し、物権は後から移転する、といったことを扱います。

目次

民法556条予約

民法556条(売買の一方の予約)
 売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生ずる。
2 前項の意思表示について期間を定めなかったときは、予約者は、相手方に対し、相当の期間を定めて、その期間内に売買を完結するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、相手方がその期間内に確答をしないときは、売買の一方の予約は、その効力を失う。

 これは通常「売買一方の予約」と呼ばれ、不動産を担保に融資が行われるときによく見られます。

 金融業者等(将来の買主)→融資→将来の売主

 金融業者等は融資の際、「○○年△△月迄に完済なき場合、当社が甲不動産を残額で買い取る」といった条件を付けるのです。これで予約権(仮契約)が設定されました。
 そして完済なき場合、その予約権を行使するのです。売買契約(本契約)の成立です。期限を定めてますから条文2項は適用されず、催告することなしに行使されます。融資を受けた側が資金繰りに困って多重債務に陥っている場合があります。融資を回収する手段が不動産ですから、登記の早い者勝ちです。そこで順位を保全するために「仮登記」といったことも行われます。

 予約の英訳としてはreservationが多いでしょう。宿泊業ではbookingも使われます。日本語には「宿帳」「宿泊者名簿」という言葉がありますが、英語で簿記はbook keeping。「簿」(竹冠ですが…)がbook に対応するのでしょう。

民法557条手付

民法557条 (手付)
 買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
2 第545条第4項の規定は、前項の場合には、適用しない。

 この条文は債務不履行(default)でないときの解約規定といってよいでしょう。まず、1項で述べていることは次のように買主が履行に着手しているが、売主が未だ履行に着手していないケースを考えるとよいでしょう。

 履行に着手
   買主 →放棄→ 売主
 履行に着手
   買主 ←倍返し← 売主

 一番目の流れはOKです。売主が未だ履行に着手していないので、買主は手付を放棄すれば解約できます。
 二番目の流れはNGです。買主が既に履行に着手しているので、売主が「倍返し」するから解約しようよ、というのは通りません。
 それではどういうときに「履行に着手」したといえるのかというと、 判例では「客観的に外部から認識しうるような形で履行行為の一部をなし又は履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした」ことをいいます。不動産の売買契約であれば、買主は代金を提供して履行を求めたり、代金の一部の支払いを成したこと、売主は不動産の引渡しか所有権移転登記がなされたこと等です。

 第2項は、解約手付による解除は、債務不履行(default)による解除(cancellation of contract)と異なるから、損害賠償(compensation for damages)の問題は生じないことを、注意的に定めたものです。

 「手付」は買主・売主が一方的に契約を解除できるものとして支払われる性格がありますが、「内金」は契約の解除を行わないことを前提に、契約の証拠として支払われる性格があります。英語ではearnest money deposit(EMD、直訳は「誠実なお金の積み立て」)というのがありますが「内金」に相当するでしょう。deposit = de「下に」+ponere「置く」、本などを下に置いて平積みにするイメージ。どんどん積み重ねていって「積み立てる」イメージです。銀行預金もdepositといいます。

PONERE
  イタリア語 スペイン語 フランス語
  porre poner poser
s.1 pongo pongo pose
s.2 poni pones poses
s.3 pone pone pose
p.1 poniamo ponemos posons
p.2 ponete ponéis posez
p.3 pongono ponen posent

発生主義

 A common accounting method for most accountants is accrual basis accounting, which reports expenses when they are incurred. Cash basis accounting reports expenses when they are actually paid.
 ほとんどの会計士にとって、一般的な会計方式は発生主義会計で、それは経費が発生するときに計上するものです。現金主義会計は費用が実際に支払われるときに計上するものです。

「経費」・「費用」がexpensesです。
 その代表例が「仕入」(purchase, 略:PUR)です。費用であることを明確にするためにpurchasing expense, purchase costとも呼ばれます。
 「財務諸表」(financial statements)の一つである「損益計算書」(profit and loss statement 略:P/L、あるいはincome statement)に記入されます。
 「仕入」勘定口座(account account)の相手方の「勘定科目」(account title)が「現金」のときは「財務諸表」のもう一つのもの、「貸借対照表」(Balance Sheet, 略:B/S)のDebit(借方, 略:Dr.)の「資産」(Assets, 略:A)の部に最終的に記入されます。「資産」はさらに二分され、「流動資産」(current asset, 略:CA)と「固定資産」(fixed asset, 略:FA)、この「固定資産」はさらに二分され「無形(固定)資産」(intangible asset)と「有形(固定)資産」(tangible asset)に分けられますが、最終的には「売上高」(Sales, 略:S)との差額が「流動資産」のうちの「現金及び現金同等物」(Cash and cash equivalents)に記入されます。

 「仕入」が掛けのとき、「買掛金」(Account Payable 略:A/P)が発生します。これは「貸借対照表」の「貸方」(Credit, 略:Cr.)の「負債」(Liabilities, 略:L)の部に記入されます。

 「売上」が掛けのとき、「売掛金」(Account Receivable, 略:A/R)が発生します。これは「貸借対照表」の「借方」の「資産」の部の「流動資産」に記入されます。

 現金主義でも現実に掛けが存在する場合があります。要は計上のタイミングであり、掛け売買が発生しても実際の入出金があるまで計上せず、従って「買掛金」・「売掛金」の勘定科目は存在しないことになります。ただ、これらの科目がないと、実際の入出金があるまでの間、債権・債務の関係を把握するのが困難になります。

 命題と論理のところで「不思議の国のアリス」冒頭部分が出てきました。アリスが大人になって、立派な「公認会計士」(certified public accountant, 略:CPA)になり、ある会社の「監査人」(auditor)として「監査」(audit)を行ったとします。「帳簿」(book)を「二三度」(once or twice)覗いたアリスは
 "and what is the use of a book,” thought Alice, “without Account Receivable or Account Payable?”
 どうやら「現金主義」はアリスのお気に召さなかったようです。
 ※「発生主義」(accrual basis)のaccrualの語源はac(ad,~へ)+cruere, crescere(成長する)です。英語のgrow, green, greatのgr-、フランス語のcroissant(三日月、クロワッサンは新月→上弦の月に成長します。)のcr-、イタリア語のcrescendo(音楽記号の<ですね)のcr-等と同根です。英語で「事業を拡大する」はincrease businessといいます。accrualは時間経過とともに「発生」することを表しているのです。

前払金のいろいろ

 Wikipedia英語版で「前払金」を調べてみました。
  [前払金をadvance paymentで検索したとき]
 An advance payment, or simply an advance, is the part of a contractually due sum that is paid or received in advance for goods or services, while the balance included in the invoice will only follow the delivery. The term "advance" may also refer to a loan.
[Google翻訳]
 前払い、または単に前払いとは、商品またはサービスに対して事前に支払または受領される、契約上支払われるべき金額の一部であり、請求書に含まれる残高は納品後にのみ支払われます。 「前払い」という用語はローンを指す場合もあります。
※The term "advance"「前払いという用語」termには「期間」、「用語」、その他いろいろな意味があります。一方、advanceの語源はフランス語の「前進」(avance)です。この語源はラテン語のab「~から」+ante「前」です。オーストラリアの原住民アボリジニーはab「~から」+origin「最初」、つまり「最初から居た人」です。フランス語から入った語をラテン語風に戻そうとする動きがイギリスで起こり、「負債」(仏:dette→英:debt)、「冒険」(ラ:adventurus→仏:aventure→英:adventure)は良いのですがavanceをad「~へ」+vance「?」と勘違いしたのでadvanceになったらしいのです。「蛇足」、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」の類いです。

[前払金をdeferred expenseで検索したとき]
 A deferred expense, also known as a prepayment or prepaid expense, is an asset representing cash paid in advance for goods or services to be received in a future accounting period. For example, if a service contract is paid quarterly in advance, the remaining two months at the end of the first month are considered a deferred expense. The prepaid amount is then recognized as an expense in subsequent accounting periods, with the corresponding amount deducted from the prepayment.

 A deferred expense is similar to accrued revenue, where proceeds from goods or services delivered are recognized as revenue in the period earned, while the cash for them is received later.

For example, if insurance is paid annually, 11/12 of the cost would be recorded as a prepaid expense, decreasing by 1/12 each month as the expense is recognized. This prevents overstatement of expenses in the period of payment and avoids understating them in subsequent periods.

Similarly, cash paid for goods or services not received by the end of the accounting period is added to prepayments to prevent overstating expenses in the payment period. These costs are recognized in the income statement (P&L) in the period the goods or services are received and deducted from prepayments on the balance sheet.
[Google翻訳]
 繰延費用は、前払いまたは前払費用とも呼ばれ、将来の会計期間に受け取る商品またはサービスに対して前払いされた現金を表す資産です。たとえば、サービス契約が四半期ごとに前払いされる場合、最初の月末の残り2か月は繰延経費とみなされます。前払い金額はその後の会計期間で費用として認識され、対応する金額が前払い金から差し引かれます。

繰延経費は未収収益と似ており、納品された商品やサービスからの収益は稼いだ期間に収益として認識され、その現金は後で受け取ります。

たとえば、保険が毎年支払われる場合、費用の 11/12 が前払費用として記録され、費用が認識されるたびに毎月 1/12 ずつ減少します。これにより、支払期に経費が過大に計上されることを防ぎ、その後の期間に経費が過少に計上されることを防ぎます。

同様に、会計期間の終わりまでに受け取らなかった商品またはサービスに対して支払われた現金は、支払期間中の支出の水増しを防ぐために前払いに追加されます。これらの費用は、商品またはサービスを受け取った期間の損益計算書(P&L)で認識され、貸借対照表の前払金から差し引かれます。
※deferred「延期された、繰延の」の語源はde-「~から(下に)」+ *bher「運ぶ、子どもを生む」です。de-は前に出てきたdeposit「下に置く、積み立てる」のde-ですね。「後ろ」はpost-でpostponeは「後ろに置く、延期する」。poneはさっき出てきたPONEREから来ています。deferredは「下に運ばれた、延期された」。*bherはインド=ヨーロッパ祖語での音価がbherで、英語ではbear「運ぶ、耐える、子どもを生む」、過去分詞はborn。ラテン語ではferre「運ぶ、耐える」に変化したことを示します。ferreからはferry「フェリー、運搬船」、conference「会議、con(一緒に)+ference(身を運ぶこと)」、difference「差、dis-,dif(分離して)+ference(事物が移動すること)」、offer「(公的に)身を運ぶ、申し出る、提供する」、prefer「pre(前に)+fer(事物を)運ぶ、好む」、refer「re(何度も)+fer(事物を)運ぶ、言及する」、これは一つ目の文章の最後のところrefer to a loanで出てきました。suffer「sub(下に)+fer(事物を移動する)、被らせる」、transfer「trans(超えて、越えて)+fer(物を)輸送する、(人が)転勤する」、いろいろありますね。他には「認識する」recognizeが出てきています。-GNO語源ですね。Unrecognized Flying Object「未確認飛行物体、UFO」

 「保険」(insurance)の話が出てきたので日本での保険契約に係る仕訳をしてみましょう。
[保険契約条件]
・積立部分と掛捨部分からなる積立型保険
・保険期間は5年
・保険料は、総額120万円の初年度一括払い
・5年後の満期返戻金は、80万円
・掛捨保険料総額は、40万円(年8万円)
 勘定科目は次の通りです。

積立保険料 (積立部分) 資産 積立保険料 (保険積立金)
危険保険料
(掛捨部分)
当期分 支出 支払保険料 (危険保険料)
次期以降分 資産 前払保険料 (前払金)

普通預金から支払った場合、当期の仕訳は前払金400,000から当期分80,000を差し引いて
____________________
積立保険料 800,000|普通預金 1,200,000
前払金   320,000
支払保険料  80,000
 これは「繰延費用」(deferred expense)の説明とほぼ一致しています。

 ところで、Wikipedia日本語版では「前払金」は「仕入等に先立って、相手方に金銭等を交付した場合に計上される勘定科目」となっています。こちらはadvance paymentと言えるでしょう。

 手付金の支払い (仕入側の処理)
 (1)手付金を支払ったとき
 2025-01-21に小麦粉30kg入り1袋@6,000円を7袋、バター200g入り1箱@500円を6箱、合計45,000円の20%である9,000円を手付金として現金で支払った場合の仕訳は
2025-01-21 (前払金) 9000 (現金) 9000

借方前払金
日付 勘定科目 金額
2025-01-21 現金 9000
貸方現金
日付 勘定科目 金額
2025-01-21 前払金 9000

 (2)商品を受け取ったとき
 2025-01-26に小麦粉30kg入り1袋@6,000円を7袋、バター200g入り1箱@500円を6箱、合計45,000円分の商品を受け取り、代金のうち9,000円は注文時に支払った手付金と相殺し、残額は掛けとした場合の仕訳は
2025-01-26 (仕入) 45,000 (前払金) 9,000
              (買掛金) 36,000

借方仕入
日付 勘定科目 金額
2025-01-26 諸口 45000
貸方前払金
日付 勘定科目 金額
2025-01-26 仕入 9000
貸方買掛金
日付 勘定科目 金額
2025-01-6 仕入 36000

 手付金の受け取り (売上側の処理)
 (1)手付金を受け取ったとき
 2025-01-21に菓子X1,000個(@300円)、菓子Y500個(@500円)、合計55,000円の20%である11,000円を手付金として現金で受け取った場合の仕訳は
2025-01-21 (現金) 11000 (前受金) 11000

借方現金
日付 勘定科目 金額
2025-01-21 前受金 11000
貸方前受金
日付 勘定科目 金額
2025-01-21 現金 11000

 (2)商品を引き渡したとき
 2025-01-26に菓子X1,000個(@300円)、菓子Y500個(@500円)、合計55,000円を引き渡し、代金のうち11,000円は注文時に受け取った手付金と相殺し、残額は掛けとした場合の仕訳は
2025-01-26 (前受金) 11,000 (売上) 55,000
       (売掛金) 44,000

借方前受金
日付 勘定科目 金額
2025-01-26 売上 11000
借方売掛金
日付 勘定科目 金額
2025-01-26 売上 44000
貸方売上
日付 勘定科目 金額
2025-01-26 諸口 55000

まとめ

 ・民法556条(売買の一方の予約)は主に金銭消費貸借で債務不履行があった場合に予約権を行使できるという、担保的性質を持つものです。
・民法557条(手付)は債務不履行がなくても相手が履行に着手するまでは、買主は放棄、売主は倍返しで解約できる、ということです。

財務(finance)

 文部科学省の英語表記は"Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology"で略称はMEXTです。経済産業省の英語表記は"Ministry of Economy, Trade and Industry"です。

 財務省の英語表記は"Ministry of Finance"です。国や地方自治体の財務は我が国では財政と呼びますが、英語ではどちらも"finance"です。そうかと思えば、"United States Secretary of the Treasury"は、アメリカ合衆国財務長官、日本の財務大臣に相当します。日本では地方自治体でも財政破綻とか騒がれています。アメリカの地方自治体でも起こるのでしょうか?財政や財務とはなんでしょうか?地方自治体の財政は、地方自治法 第二編 第九章以下にあります。

目次

fine

 "How do you do?"と聞かれれば
 "I'm fine, thank you."と答えます。
 "I think I'm finished."と答えると「私は終わってる。(もうダメだ)」の意味になります。
 また、天候を表すとき晴天であれば
 "It's fine today."
 といいます。一方、日本語ではどうでしょう。

 「晴天」すなわち「晴れ」は、埃(ほこり)を払う、穢(けがれを)祓う、等「はらう」に通じるところがあります。また、「素晴らしい天気ですね、今日は。」も「晴」の字が入っています。「昨日まで曇り空だったのが、雲一つない素晴らしくいい天気になりました。」

 インターネットの世界ではどうでしょう。「クラウドコンピューティング」(cloud computing)、インターネット網を「雲」(cloud)に見立てているわけです。「ウェブ」WEB、インターネット網を「蜘蛛」(spider,糸を紡ぐ者)の巣(web)に見立てているわけです。これらを払いのけたらとんでもないことが起きそうです。

 最初の英語のfineに戻ると、何かが終わって晴れ晴れした状態になる、この「何か」とは?考えられるのは「借入金」、「買掛金」等の負債、債務でしょう。そのためには資産、負債、損益、キャッシュフローの把握・分析・管理、資金の調達と運用が必要となるでしょう。
 現状を正しく把握・分析・管理するためには日々(journal)の仕訳・主要簿の各勘定口座への転記を行い管理し、会計年度(fiscal year)ごとに会計(accounting)を行い、資金が不足なら債券(bond)を発行して資金調達したり、剰余があれば運用にまわす。この幅広い活動が「財務」(finance)です。では次に動詞のfinishのフランス語、イタリア語、スペイン語バージョンを見てみましょう。

finish
FINIRE
  フランス語 イタリア語 スペイン語
  finir finire terminar
s.1 finis finisco termino
s.2 finis finisci terminas
s.3 finit finisce termina
p.1 finissons finiamo terminamos
p.2 finissez finite termináis
p.3 finissent finiscono terminan

※スペイン語にはfinalizarもあります。

 フランス語のfinirは第二群規則動詞に属します。choisir「選ぶ」、fournir「提供する」、réfléchir「よく考える」、réussir「成功する」, s'agir「~が問題である」などです。英語のchoose, furnish, reflect,…に相当します。
 この他、abolish←abolir「廃止する」、demolish←démolir「壊す」、establish←établir「確立する」、nourish←nourrir「養う」、perish←périr「滅びる」等があります。finish←finir「終える」のように法則性(-ish←-ir)がありますね。
 この-ishの-shは-sk「切る」と同義でreddish「赤っぽい」は切り分けるとしたら青とか他の色じゃなくて赤の部類、ということです。「空」と「大地」に切り分けたら英語では上がskyですが、スラヴ語派では下が~スク(例:ベラルーシの首都ミンスク)のように地名になります。また英語でワンピースを切り分けたら上がshirtで下がskirtです。木の切れ端からはskii, ship、丸太に刻み目をつけて登り易くするとscale、エスカレーター、定規も関係あります。人体はskin, skull, skeletonに切り分けられます。鷹はhawk「have(掴む)+k(奴やつ)」、ハプスブルクのハプス(鷹:haps「haben(掴む)+s(奴やつ))もそう。k, sは指小辞と呼ばれ、日本でも「馬」のことを、東北のある地域で「馬ご」、沖縄のほうで「馬ぐゎ」と言うらしいです。ちなみに英語で鮫はshark「切る奴」でsharpな歯を持っています、等「切り」がありませんが…
 一方、動詞につくと「~し切る、やり切る」、これは日本語のような膠着語によく見られますし、perfect「per(貫通して)+facereの完了分詞=やり抜いた、完全」というのがあります。日本語には「やり遂げる」というのもあります。北ゲルマン諸語(デンマーク語、ノルウェー語、スウェーデン語)ではskall「切る」を不定詞の前につけて「やり切る」を表現します。「スコール!」は「飲み切れ!」で、まさに「乾杯!」です。skallは英語でshallに相当します。ドイツ語では話法の助動詞として、sollen(英:shall)、wollen(英:will)、未来の助動詞としてwerdenというのがあります。スラヴ語派では助動詞を使わないので未来型を作るのが大変です。一つの概念の現在は不完了体、その未来は完了体(未来において完了)というペアで一つ一つ覚えていくしかないのです。不完了体が原型で完了を表す辞が頭のほうにつくものや語尾のほうにつくもの、例えばзнать「知っている」が不完了体で、узнать「(未来に)知る」が完了体です。逆に完了体が原型で不完了体に辞がつくもの、全く両者に関連性が見られないものがあります。ラテン語も助動詞がないのですが、-SC「切る」を使ったCOGNOSCERE「知っている」という動詞があります。GNOに「知る」という概念を含んでいますが、これに-SC「切る」がついて「(過去に)分かり切った。だから知っている」という意味であり、英語では単独で(進行形にしないで)「~している」意味の動詞を「状態動詞」と呼んでいます。I'm knowing~というのはダメということです。日本語でも「私は知っていている」とは言いません。(ただし、ラテン語にはCOMPREHENDERE「理解する」というのがあり「動作動詞」と呼んでいます。) 次にCOGNOSCEREの現代語の活用を載せておきます。

COGNOSCERE
  イタリア語 スペイン語 フランス語
  conoscere conocer connaître
s.1 conosco conozco connais
s.2 conosci conoces connais
s.3 conosce conoce connaît
p.1 conosciamo conocemos connaissons
p.2 conoscete conocéis connaissez
p.3 conoscono conocen connaissent

 現代語ではGNOのGが脱落していますが、英語ではknowに残っています。gn,kn等は何かが集まって固まりになったものを表します。集落に人が集まる。互いに顔馴染みになる。そういう「面識」があってknowといえます。ラテン語でgenuは「膝」、英語でknee、何か集まってコブのようになっている。似たものを探すとknight「騎士、膝まづく者」、knob「ドアノブ」、knot「結び目」、knuckle「拳(こぶし)」…、発音はされずとも綴り字には残っています。pregnant「妊娠中」、ここからgenerate, generationの意味がわかりますね。gn, knは、東方ではロシア語:ズナーチ(знать)、ヒンディー語:ジャーンナー(जानना)のようになります。ギリシャ語には東西両方の要素があります。ge(大地)+org(耕す)=「農民、人名でジョージ」、syn-「一緒に」からはシンフォニー、シンクロナイズ等。ヨーロッパからインドまで拡がったインド=ヨーロッパ語族の勢力は今や南北アメリカ、オーストラリアまで拡がっています。
 「私は彼女を10年前から知っています。」
 英語なら
 It is ten years since I knew her.
 または
 Ten years have past since I knew her.は
 仏:Il y a dix ans que je la connais.
 伊:La conosco da dieci anni.
 西:Hace diez años que la conozco.
 面識とかではなく、単に知識として知っているときは次の語を使います。

SAPERE
  イタリア語 スペイン語 フランス語
  sapere saber savoir
s.1 so sé sais
s.2 sai sabes sais
s.3 sa sabe sait
p.1 sappiamo sabemos savons
p.2 sapete sabéis savez
p.3 sanno saben savent

ホモサピエンスのサピエンスの元になる語ですが、ゲルマン語派のsay, sagen等と関係があるらしい。北欧神話saga「サーガ」は口伝えで伝承されました。アイヌのユーカラのようなものです。喋ることができるから「賢い」わけです。一方、インド、イランの神話veda「ヴェーダ」はvideo, view等と関係があるらしい。「見たこと」を書き記したものでしょう。
 「あなたは車の運転ができますか?」-「はい、しかし、今日はできません。」
 英語なら
 Do you know how to drive a car? - Yes, but I can't today.等となるでしょう。
 仏:Savez-vous conduire? - Oui, mais, aujourd'hui je ne peux pas.
 伊:Lei sa guidare la macchina? - Si, però, oggi non posso.
 西:¿Sabe usted conducir? - Si, pero, hoy no puedo.

POTERE
  イタリア語 スペイン語 フランス語
  potere poder pouvoir
s.1 posso puedo peux
s.2 puoi puedes peux
s.3 può puede peut
p.1 possiamo podemos pouvons
p.2 potete podéis pouvez
p.3 possono pueden peuvent

 POTEREのPOTは「壺、ポット」から来ています。能力を容量に見立てているわけです。ポテンシャル(potential)はここから来ています。一方、英語の可能の助動詞はcanですが、ドイツ語ではkönnenです。英語の「知っている」はknowでした。ドイツ語ではkennenです。どれも語源は-GNOで、慣れ親しんでいるから「できる」なのでしょうね。

 fine, finishの派生語finallyは次のように使われます。
 I finally redeemed my mortgage.
 redeemはmortgageと相性がよいです。mortgageは借金のカタ、「抵当」です。不動産を担保に住宅ローンを組む、そのローンをやっと完済したときの表現です。
 対してloanを「支払う」はpay offです。
 I'm still paying off my loan.
 It will take more than ten years to pay off my housing loan.
 また、finishは次のように先頭の文字を縦読みするとmegafeps「メガフェップス」となる動詞の一員でもあります。

[メガフェップス:動名詞~ingをとる動詞]
mind ~ing(~するのを気にする)
enjoy ~ing(~して楽しむ)
give up ~ing(~をやめる)
avoid ~ing(~するのを避ける)
finish ~ing(~し終える)
escape ~ing(~するのを逃れる)
practice ~ing(~する練習をする)
stop ~ing(~するのをやめる)
 enjoy,practiceを除けばあまり前向きな意味の動詞がありませんね。しかし、look forward to ~ing(~するのを心待ちにする)というのがあります。look forward to to doというのは見たことがありません。前向きな意味だからといってto不定詞をとろとは限らないのですね。また、beginはbegin ~ing、begin to do、両方ともよく見かけますが、beginが進行形になるとto doをとるのが普通のようです。不思議の国のアリス冒頭、Alice was beginning to get tired…等。
 Alice was beginning getting tired… というの見たことありますか?

finance

 期首はbeginning of term、期末はend of termといいます。スペイン語のterminarはfinishの意味ですが、何故termが「期間」の意味になったのでしょうか。よくわかりませんが期間に区「切って」(-SC, SK)、期間中、仕訳して記帳された取引(transaction)を、期末(end of term)になると一緒に集め(-GNO)て会計(accounting)します。termもfinanceも「終える」の概念を含んでいます。期末は大忙しです。集計作業に追われます。-GNOはゲルマン語派の-GE(together等)、ラテン語のCUM(co-, con-等)、と同根ですが、東のロシア語ではc「シーと書いて、スと発音。c + 造格は"一緒に"」、ヒンディー語ではसाथ「サート(一緒)」のように"s"の音になります。いずれにしても集まって一緒になるわけです。

 前回の「データベース~仕訳」の「キーなど」のところで「損益計算」というVIEWを作成しました。今回もこれを使います。このVIEWに定義されているSELECT文にGROUP BY句がありました。

 GROUP BY strftime('%Y-%m',貸方売上.日付)

 この場合は、2024-12、2025-01、…のように"月別"に類別しなさい、ということです。

 一方、借方仕入テーブル、貸方売上テーブルには2025-01まで記帳済みです。
完全外部結合~借方仕入&貸方売上
('2024-12-01', '現金', 45000, '2024-12-01', '現金', 55000)
('2024-12-06', '現金', 45000, '2024-12-06', '現金', 55000)
('2024-12-11', '現金', 45000, '2024-12-11', '現金', 55000)
('2024-12-16', '現金', 45000, '2024-12-16', '現金', 55000)
('2025-01-01', '買掛金', 45000, '2025-01-01', '売掛金', 50000)
('2025-01-06', '買掛金', 45000, '2025-01-06', '売掛金', 50000)
('2025-01-11', '買掛金', 45000, '2025-01-11', '売掛金', 50000)
('2025-01-16', '買掛金', 45000, '2025-01-16', '売掛金', 50000)

 新年度に入ってから売上が落ちています。月別に集計しましょう。前回の復習ですが、損益計算ビューのSELECT文は、ラベル, SUM() AS 引用名の形式にしました。以下の項目を集計します。

strftime('%Y-%m',貸方売上.日付) AS '日付'
'売上高',SUM(貸方売上.金額) AS '売上高'
'取得原価',SUM(借方仕入.金額) AS '取得原価'
'売上総利益(粗利益)',SUM(貸方売上.金額 - 借方仕入.金額) AS '売上総利益'
'利益率',SUM(貸方売上.金額 - 借方仕入.金額) * 100 / SUM(貸方売上.金額) AS '利益率'

select="SELECT * FROM 損益計算 "
for rec in c.execute(select):
  print(rec)
 この結果は
('2024-12', '売上高', 220000, '取得原価', 180000, '売上総利益(粗利益)', 40000, '利益率', 18)
('2025-01', '売上高', 200000, '取得原価', 180000, '売上総利益(粗利益)', 20000, '利益率', 10)
 この類別の仕方に新年度以降の利益率を取り出す、という条件を付けたいときは、次のようにします。

select="SELECT 日付, 利益率 FROM 損益計算 GROUP BY 日付 HAVING 日付 >= '2025-01'"
for rec in c.execute(select):
  print(rec)

 あるいはWHERE句単独で
select="SELECT 日付, 利益率 FROM 損益計算 WHERE 日付 >= '2025-01'"
for rec in c.execute(select):
  print(rec)

 この結果は、どちらも
('2025-01', 10)
 となります。HAVINGのほうはGROUP BYとセットで、日付が2025-01以降という条件を保持しながら、日付で類別しなさい、という意味です。分詞ですね。それにしてもデータベースというものは、とても便利です。
 「必要は発明の母」
 仏:La nécessité est mère de l'invention.
 伊:Necessità è madre dell'invenzione.
 西:La necesidad es la madre de la invención.

 データベースの集計結果をグラフにしてみました。HTMLも載せておきます。

<div style="width: 400px;">< canvas id="canvas1"></canvas></div>
<script>
const canvas =
document.getElementById('canvas1');
const ctx1 = canvas.getContext("2d");
const salesHeights = [220000,220000,200000];
const costHeights =[180000,180000,180000];
const month = ['2024-11','2024-12','2025-01'];
const WIDTH = 20;
const OFFSET = 4;
ctx1.beginPath();
ctx1.strokeStyle = '#ff0000';
for(let i=0; i<salesHeights.length; i++) {
  const x = i * WIDTH * OFFSET + 20;
  const y1 = canvas.height - costHeights[i] / 3000;
  const y2 = canvas.height - salesHeights[i] / 2000;
  ctx1.lineTo(x + 10, y2);
  ctx1.stroke();
  ctx1.fillStyle = '#0000ff';
  ctx1.fillRect(x, y1, WIDTH,canvas.height);
  ctx1.fillStyle = '#ffffff';
  ctx1.fillRect(x, canvas.height-10, WIDTH,canvas.height);
  ctx1.fillStyle='#000000';
  ctx1.font = "10px serif";
  ctx1.fillText(month[i],x - 10, canvas.height);
}
ctx1.strokeStyle = '#000000';
ctx1.beginPath();
ctx1.moveTo(20, 0);
ctx1.lineTo(20,canvas.height-10);
ctx1.lineTo(canvas.width-20,canvas.height-10);
ctx1.lineTo(canvas.width-20,0);
ctx1.stroke();
ctx1.fillStyle='#000000';
ctx1.font = "10px serif";
ctx1.fillText("220", 0, canvas.height - salesHeights[0] / 2000);
ctx1.fillText("180", canvas.width-20, canvas.height - costHeights[0] / 3000);
</script>

 赤い折れ線グラフは売上高(net sales)を、青い棒グラフは取得原価(仕入、purchasing expense, cost of sales)を表しています。売上高は前年度220千円から新年度200千円に落ちました(fell, dropped)。取得原価は180千円で変わらずです。
 ところで、何故売上高にわざわざnet「正味の」がついているのかというと、恐らくこうでしょう。売上高は収益の一種です。収益には本業以外の儲け、家賃収入、株の配当収入等ありますが、「収益」は一般にrevenueと呼ばれます。net sales「正味の売上高」はそうした本業以外の儲けを除外したものです。
 次にpurchasing「仕入」はよいとして、expenseはex「外に」+ pendere「吊るす」です。ペンダント等の語源ですが、「秤量する」という意味もあります。秤(はかり)できちんと計量して支出したのだと思います。dispenseも秤できちんと計量して分配したのだと思います。現代のキャッシュディスペンサーには秤は見当たりませんが…。
 そして
 売上高 - 取得原価 = 売上総利益(粗利益)
 なのです。「利益」には次のような種類があります。「粗い」grossは最終利益ではありませんよ、ということです。
 売上総利益(粗利益):gross profit
 営業利益:operating profit
 経常利益:ordinary profit

 profitの代わりにincomeとしているものもよく見かけます。「営業利益」ならoperating income等。最終利益である「純利益」ならnet incomeです。revenueの語源、「来る」(英:come)の現代語の活用を載せておきます。

VENIRE
  イタリア語 スペイン語 フランス語
  venire venir venir
s.1 vengo vengo viens
s.2 vieni vienes viens
s.3 viene viene vient
p.1 veniamo venimos venons
p.2 venite venís venez
p.3 vengono vienen viennent

まとめ

 語源は記憶の便にとても役立ちます。
 アメリカ合衆国の「財務」Treasuryは「財宝」の意味だそうです。「財宝長官」とは…

データベース~仕訳

 データベースは、とても便利なツールです。様々な分野で広く使われています。今回は簿記への応用を取り扱いたいと思います。しかし、日常様々な取引を分析して仕訳を行うことは人間の仕事であり、データベースの役割は仕訳が終わってからが本領発揮です。AI化が進んでも、仕訳はまたまだ人間がやるべき仕事のようです。

目次

記帳の自動化

 仕訳が終わってから各勘定口座へ転記することを自動化したいと思います。それは
・仕訳で指示された勘定口座のテーブルを、存在しなければ作成する。
・作成された、あるいは既存の勘定口座のテーブルに、仕訳の指示通りに日付、相手方の勘定科目、金額を転記する。
・仕訳の指示通りに転記できたかどうかを確認するため表示する。

若手プログラマー必読!5分で理解できるER図の書き方5ステップ|ドコモビジネス|NTTコミュニケーションズ 法人のお客さま

 ↑をタップして下さい。データベースを設計するためにはいろいろな用語「エンティティ」、「アトリビュート」、「リレーションシップ」、「カーディナリティ」、何やら抽象的な言葉が登場します。

 「エンティティ」はデータベースではテーブル、エクセルではワークシート、数学では{ }に相当します。容器ですね。

 「アトリビュート」はデータベースではレコード(行)、レコード内のカラム(列)、エクセルではセル(レコードは範囲指定で実現)、数学では部分集合や要素でしょう。{ }の中に入るものです。

 残りの「リレーションシップ」と「カーディナリティ」は次のプログラムで説明します。

import sqlite3
conn = sqlite3.connect("Cosmos.db", isolation_level=None)
c=conn.cursor()
sql="SELECT name FROM sqlite_master WHERE TYPE ='table'"
for rec in c.execute(sql):
  print(t)
print()
while(True):
  print("記帳を終了しますか?")
  num=input('0で終了:')
  if num == '0':
    break
  print("日付 勘定科目 金額 勘定科目 金額")
  #UI
  date=input('日付:')
  title1=input('勘定科目:')
  price1=input('金額:')
  title2=input('勘定科目:')
  price2=input('金額:')
  #勘定口座名(テーブル名)
  account1="借方"+title1
  account2="貸方"+title2
  #借方テーブルの作成
  if date != ' ' and title1 != ' ' and price1 != ' ':
    sql="CREATE TABLE IF NOT EXISTS "
    sql+=account1
    sql+="( 日付 DATE,勘定科目 VARCHAR(20),金額 INTEGER)"
    c.execute(sql)
    #借方テーブルへの転記
    sql="INSERT INTO "
    sql+=account1
    sql+=" (日付,勘定科目,金額) VALUES (?,?,?)"
    user=(date,title2,price1)
    c.execute(sql,user)
    #借方テーブルの確認
    print(account1)
    select="SELECT * FROM "+account1
    for rec in c.execute(select):
      print(rec)
  #貸方テーブルの作成
  if date != ' ' and title2 != ' ' and price2 != ' ':
    sql="CREATE TABLE IF NOT EXISTS "
    sql+=account2
    sql+="( 日付 DATE,勘定科目 VARCHAR(20),金額 INTEGER)"
    c.execute(sql)
    #貸方テーブルへの転記
    sql="INSERT INTO "
    sql+=account2
    sql+=" (日付,勘定科目,金額) VALUES (?,?,?)"
    user=(date,title1,price2)
    c.execute(sql,user)
    #貸方テーブルの確認
    print(account2)
    select="SELECT * FROM "+account2
    for rec in c.execute(select):
      print(rec)
conn.commit()
conn.close()

 「リレーションシップ」は勘定科目のカラム、上のプログラムではtitle1, title2が互いに相手勘定を指し示すことで関係性を表現します、確かに表現できるのですが、この関係は一対一の対応関係とは限りません。そこで「カーディナリティ」が登場します。

 「カーディナリティ」は、「鳥の足」とも呼ばれます。一対一の対応関係にあるとき、「鳥の足」の形にはなりません。これがベストです。あいまいさはありません。しかし、どうしても「鳥の足」の形になることがあります。これが「諸口」です。一対多の関係になったり、多対一の関係になったり…。

 上のNTTコミュニケーションズ様のサイトでは、これらの他に「ユースケース」というものが出てきます。どのタイミング(イベント)で、どういう処理が行われるのか、といったことを記述しますが、これはとても重要です。そのソフトウェアの使用上の注意であるとか、取扱い説明書の元になるものです。DX化が進められていますが、エクセル等を使う仕事はそのスキルを持った属人的なことが多いでしょう。その人が転勤したらどうでしょう?引き継ぎの際に口で説明しきれるでしようか?

 図示化できるものは出来るだけ図示化したほうがよいですね。「百聞は一見に如かず」
 フランス語:Voir, c'est croire.
 イタリア語:Vedere per crédere.
 スペイン語:Ver es creer.
 ですから。図でなくても表でもよいです。

借方と貸方テーブルを作るとき
※右の例では借方仕入テーブル
に2024-12-25,現金,100が、
貸方現金テーブルに同一日付
の2024-12-25,仕入,100が 
記帳されます。     
日付:2024-12-25↩️
勘定科目:仕入↩️ 
金額:100↩️   
勘定科目:現金↩️ 
金額:100↩️   
借方テーブルのみ作るとき
※右の例では借方仕入テーブル
に2024-12-25,諸口,100が
記帳されます。     
日付:2024-12-25↩️
勘定科目:仕入↩️ 
金額:100↩️   
勘定科目:諸口↩️ 
金額:↩️     
貸方テーブルのみ作るとき
※右の例では貸方売上テーブル
に2024-12-25,諸口,100が
記帳されます。     
日付:2024-12-25↩️
勘定科目:諸口↩️ 
金額:↩️     
勘定科目:売上↩️ 
金額:100↩️   

 上のプログラムで
  if date != ' ' and title1 != ' ' and price1 != ' ':
    sql="CREATE TABLE IF NOT EXISTS "
    sql+=account1
 となっているところがあります。日付、勘定科目、金額の3点セットが揃わなければテーブルを作らない、ということです。これはド・モルガンの法則を使って
  if date == ' ' or title1 == ' ' or price1 == ' ':
    sql="CREATE TABLE IF NOT EXISTS "
    sql+=account1
 とも書けます。入力項目のうち、どれか一つでも空欄であると処理しませんよ、ということですが、通常は「以上でよろしいでしょうか?」と「確認」が必要なところですね。

 これも仕訳と同じく完全にAI化することは難しいと思います。というのは現実に発生する現象なり、事象なりを把握し理解して仕訳したり、数式に翻訳することが機械には難しいのです。どうやって機械に学習させたらよいのでしょうか?人間であればまず現象なり事象なりを次のように「文章題」に置換えることが可能です。

 ある菓子工房で2種類の原料A(小麦粉)、B(バター)を使って2種類のお菓子X,Yを作っています。その工房の生産能力はお菓子Xについては月産2500個まで、お菓子Yについては月産1200個までです。お菓子Xを1個作るには、A(小麦粉)が0.004袋、B(バター)が0.002箱、お菓子Yを1個作るには、A(小麦粉)が0.006袋、B(バター)が0.008箱必要です。1ヵ月間に仕入れることのできるA(小麦粉)は最大14袋、B(バター)は最大12箱です。お菓子X1個あたりの利益を5円、お菓子Y1個あたりの利益を10円として、月間利益を最大にするには、お菓子X,Yの月間生産個数をいくらにすればよいでしょうか。

 という文章題を数式に置換えてみましょう。
 まず、お菓子Xの月産個数を小文字のxとすると月産2500個までですから
 x ≦ 2500 ・・・①
 次にお菓子Yの月産個数を小文字のyとすると月産1200個までですから
 y ≦ 1200 ・・・②
 その次は…、ちょつと複雑なので表にして整理してみましょう。

  x個あたり y個あたり 最大量
A(小麦粉) 0.004x 0.006y 14袋
B(バター) 0.002x 0.008y 12箱

 この表を列方向(縦)に見ると文章題通りです。お菓子Xが1個あたり、A(小麦粉)0.004袋とB(バター)0.002箱だからx個あたりだとx倍になるわけです。隣のy個あたりも同様にA(小麦粉)0.006袋とB(小麦粉)0.008箱がy倍されています。
 次に行方向(横)に見ると、A(小麦粉)の1ヵ月の使用量が、0.004x袋 + 0.006y袋でこれが最大で14袋なので
 0.004x + 0.006y ≦ 14 ・・・③
 同様にB(バター)について
 0.002x + 0.008y ≦ 12 ・・・④
 最後は利益の式
 5x + 10y = i ・・・⑤
 これがポイントです。①~④の不等式(inequality)と異なり、方程式(equation)であることが一つ、右辺のiは切片(intercept)を表しています。途中(inter)で捕まえる(cept)するわけです。何を捕まえるかというと、方程式の表す直線(straight line)です。y切片とx切片で捕らえられると線分(line segment)になります。lineは線形(linear)、リネンなど同語源です。そして平面(plane)は直線によって半平面(half plane)ずつに分けられます。不等式の表す領域(domain,region)はこのうちのいずれかです。①~④を連立するとこの共通部分が求められます。⑤とも連立させるには、直線の傾き(inclination of a line、あるいは単にslope)が-1/2であることは分かっていますが、iの値、この場合y切片ですが、これが不定なので図によって解くことになります。

<div style="width: 400px;"><canvas id="canvas1">< /canvas ></div>
<p>
<script>
const canvas = document.getElementById('canvas1');
const ctx1 = canvas.getContext("2d");
ctx1.strokeStyle='#000000';
ctx1.beginPath();
ctx1.moveTo(50,0);
ctx1.lineTo(50,canvas.height);
ctx1.moveTo(0,canvas.height-20);
ctx1.lineTo(canvas.width,canvas.height-20);
ctx1.moveTo(50,canvas.height-70);
ctx1.lineTo(250,canvas.height-20);
ctx1.moveTo(50,canvas.height-100);
ctx1.lineTo(167,canvas.height-20);
ctx1.stroke();
ctx1.fillStyle='#ffff00';
ctx1.beginPath();
ctx1.moveTo(51,canvas.height-60);
ctx1.lineTo(89,canvas.height-60);
ctx1.lineTo(120,canvas.height-51);
ctx1.lineTo(130,canvas.height-40);
ctx1.lineTo(130,canvas.height-21);
ctx1.lineTo(51,canvas.height-21);
ctx1.lineTo(51,canvas.height-60);
ctx1.fill();
ctx1.fillStyle='#000000';
ctx1.font = "10px serif";
ctx1.fillText("7000/3", 15, 53);
ctx1.fillText("1500", 20, 85);
ctx1.fillText("1200", 20, 95);
ctx1.fillText("2500", 115,
canvas.height-10);
ctx1.fillText("3500", 150,
canvas.height-10);
ctx1.fillText("6000", 240,
canvas.height-10);
</script>
</p>

 上の図をどのようにして描いたのか、HTMLを載せておきます。moveTo()はcanvasから浮かせたペンをここで降ろすイメージで始点です。lineTo()はcanvasに置いたペンをここまで動かすイメージです。直線の描画終了はstroke()です。
 黄色の領域の描画はfillStyle()で色を指定し、一筆書きで領域を作りfill()を実行します。数値、文字はfillText()を使いましたがstrokeText()を使うと中抜き文字になります。
 描画の仕方がお分かりになったことと思いますので解説に移ります。

 上の図で黄色の領域が①~④の連立不等式の表す領域です。x ≧ 0, y ≧ 0の領域だけで考えましょう。

 x ≦ 2500 ・・・①
 これはx軸で2500と書かれたところより左の領域です。

 y ≦ 1200 ・・・②
 これはy軸で1200と書かれたところより下の領域です。

 0.004x + 0.006y ≦ 14 ・・・③
 これはx = 0とおくとy ≦ 14/0.006 = 7000/3
 y = 0とおくとx ≦ 3500
 これはy切片が7000/3、x切片が3500の直線の下の領域です。

 0.002x + 0.008y ≦ 12 ・・・④
 これはx = 0とおくとy ≦ 1500
 y = 0とおくとx ≦ 6000
 これはy切片が1500、x切片が6000の直線の下の領域です。

 これらの共通部分が上の図の黄色の部分で、ちょっといびつな六角形になっています。右上の頂点(2つの直線の交点)の座標は \begin{eqnarray} \begin{bmatrix} 0.004 & 0.006 \\ 0.002 & 0.008 \end{bmatrix}\begin{bmatrix} x \\ y \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 14 \\ 12 \end{bmatrix}\end{eqnarray} の解、(2000,1000)です。そして最終的な結論である、利益を最大にする点もここなのです。
 ⑤の表す傾き-1/2の直線がy切片iを最大にすべく下から上がっていく。黄色で示した領域と共通部分を持つ限界がこの点です。文章題の答えは
 お菓子X 2000個、お菓子Y 1000個のとき利益最大となります。すると⑤から
 5 × 2000 + 10 × 1000 = 20000円
 が利益最大です。
 このときのグラフを描くためには
 5x + 10y = 20000
 の両辺を定数項の20000で割って\begin{eqnarray}\frac{x}{4000} + \frac{y}{2000} = 1\end{eqnarray}と変形すると、x切片が4000、y切片が2000と求まります。

 線形計画法の説明としては以上ですが、それにしても利益が20000円とは少なすぎます。
 小麦粉1袋30kgで6000円、バター1箱200gで500円と仮定すると、仕入値(取得原価)は

  お菓子X お菓子Y
A(小麦粉) 120g(24円) 180g(36円)
B(バター) 0.4g(1円) 1.6g(4円)
合計 120.4g(25円) 181.6g(40円)

 となり、それぞれ5円、10円のマージンを上乗せすると、売価は30円、50円です。制約条件の小麦粉14袋まで、バター12箱まで、というのが供給限界なら値上げしかありませんが、自社の生産能力に起因するのなら、工房の広さ、設備、人員数など検討できますね。いっそ仕入量を100倍の小麦粉1400袋、バター1200箱というのも可能です。利益も100倍の200万円です。このようにいろいろ考えるのは「財務」の分野です。取引先も増えるでしょう。すると簿記のほうでも単なる人名勘定では済まなくなり、「顧客管理システム」の構築が必要となります。これは上のNTTコミュニケーションズ様のサイトをご覧下さい。各種のマスタテーブル等があり、複雑ですね。

キーなど

[主キー(primary key)]
 これはIDと考えるとよいでしょう。例えば、○○マスタテーブルで同性同名の人物、同一名の商号を持つ企業が転勤、移転したりすると住所変更の際に特定しづらいので別にカラムを設けて特定化しやすくするわけです。ただし、ここが空欄(' ')であると効果なしですね。
 ところで仕訳帳(daybook DB D.B.)にはIDが見当たりません。IDがあれば
UPDATE 仕訳帳 SET 相手勘定='現金' WHERE ID='2056'
 などと修正可能ですが、簿記では記録は記録として残し、修正仕訳で対応することになっています。

[外部キー(foreign key)]
 これこそリレーションシップを実現するものです。簿記では相手勘定科目がそうですね。仕訳帳にある元丁欄は総勘定元帳(general ledger)のページ数とリレーションシップがあるので外部キーです。

[ビュー(view)]
 総勘定元帳(general ledger)などはテーブルで作成することもできますが、VIEWで作成するほうがよいでしょう。先の文章題の例を掘り下げます。
 1日の生産量: 菓子X 200個、菓子Y 100個
 5日ごとに5日分売り上げることにすると
 菓子X:30000円(1000×@30円)
 菓子Y:25000円(500×@50円)
 ∴売上合計:55000円

 小麦粉消費量: 200×120 + 100×180 = 42000g
 5日ごとに仕入れることにすると
 5×42000 = 210kg = 7袋(30kg入り@6000円)
 バター消費量: 200×0.4 + 100×1.6 = 240g
 5日ごとに仕入れることにすると
 5×240 = 1200g = 6箱(200g入り@500円)
 ∴仕入合計:45000円

 仕入、売上を4回分記帳しました。

select="SELECT * FROM 借方仕入 FULL OUTER JOIN 貸方現金 ON 借方仕入.日付=貸方現金.日付"
for rec in c.execute(select):
  print(rec)
print()

この結果は
('2024-12-01', '現金', 45000, '2024-12-01', '仕入', 45000)
('2024-12-06', '現金', 45000, '2024-12-06', '仕入', 45000)
('2024-12-11', '現金', 45000, '2024-12-11', '仕入', 45000)
('2024-12-16', '現金', 45000, '2024-12-16', '仕入', 45000) 既にデータが入っている借方仕入テーブルと貸方現金テーブルを完全外部結合しているだけです。新たにテーブルを作る必要はありません。

select="SELECT * FROM 借方仕入 FULL OUTER JOIN 貸方売上 ON 借方仕入.日付=貸方売上.日付"
for rec in c.execute(select):
  print(rec)
print()

 この結果は
('2024-12-01', '現金', 45000, '2024-12-01', '現金', 55000)
('2024-12-06', '現金', 45000, '2024-12-06', '現金', 55000)
('2024-12-11', '現金', 45000, '2024-12-11', '現金', 55000)
('2024-12-16', '現金', 45000, '2024-12-16', '現金', 55000)

 次の長いSELECT文はさらにその次のVIEWの元になるものです。
select="SELECT strftime('%Y-%m',貸方売上.日付) AS '日付','売上高',SUM(貸方売上.金額) AS '売上高','取得原価',SUM(借方仕入.金額) AS '取得原価','売上総利益(粗利益)',SUM(貸方売上.金額 - 借方仕入.金額) AS '売上総利益','利益率', SUM(貸方売上.金額 - 借方仕入.金額) * 100 / SUM(貸方売上.金額) AS '利益率' FROM 借方仕入 FULL OUTER JOIN 貸方売上 ON 借方仕入.日付 = 貸方売上.日付 GROUP BY strftime('%Y-%m',貸方売上.日付)"
for rec in c.execute(select):
  print(rec)
print()

 この結果は
('2024-12', '売上高', 220000, '取得原価', 180000, '売上総利益(粗利益)', 40000, '利益率', 400)

 これがVIEWの定義です。損益計算という名前をつけました。
sql="CREATE VIEW IF NOT EXISTS 損益計算 AS SELECT strftime('%Y-%m',貸方売上.日付) AS '日付','売上高',SUM(貸方売上.金額) AS '売上高','取得原価',SUM(借方仕入.金額) AS '取得原価','売上総利益(粗利益)',SUM(貸方売上.金額 - 借方仕入.金額) AS '売上総利益','利益率', SUM(貸方売上.金額 - 借方仕入.金額) * 100 / SUM(貸方売上.金額) AS '利益率' FROM 借方仕入 FULL OUTER JOIN 貸方売上 ON 借方仕入.日付 = 貸方売上.日付 GROUP BY strftime('%Y-%m',貸方売上.日付)"
c.execute(sql)

select="SELECT * FROM 損益計算"
for rec in c.execute(select):
  print(rec)
print()
 この結果は
('2024-12', '売上高', 220000, '取得原価', 180000, '売上総利益(粗利益)', 40000, '利益率', 18)
 となって、あたかもテーブルのように使用できます。次は、*(アスタリスク)のかわりに特定カラムを選択したものです。

select="SELECT 日付, 利益率 FROM 損益計算"
for rec in c.execute(select):
  print(rec)
('2024-12', 18)
#[QPython] Press enter to exit ...

 一種の疑似テーブルで読み込みだけ可能、書き込み不可です。また、sqlite3ではできませんが、OracleなどではVIEWに権限(GRANT)が付与できて、特定の者しか読み込みできない、といった使用法もあります。

まとめ

 「簿記上の取引」というものがあります。民法192条、それに続く193条では盗難、遺失さえも取引です。簿記でもそうです。日常感覚とは違います。簿記では、まず「簿記上の取引」かどうかを見極めることから始まります。これが最初の「仕訳」でしょう。その後細かい仕訳を行います。データベースを使用する、あるいは手作業で転記するのはその後のことです。

商品売買~その二(掛け)

 前回は「即金即決」のお話しでした。買い手の「引渡し請求権」は売り手の現実の引渡しにより消滅し、同様に売り手の「代金支払い請求権」は買い手の代金支払いによって消滅しますが、消滅するまでこれらの権利が残っているわけです。どういったときにこうした権利が残るのか?と言えば、代表選手は「掛けでの仕入れ」、及び「掛けでの売り上げ」でしょう。今回はこれを見てみましょう。

目次

買掛金

 会計は英語でaccounting、会計士はaccountant、公認会計士はCPA(certified public accountant)です。買掛金(Accounts=ac「ad~に」+count「計算する」+payable=pay「支払う」+able「可能な」)と、英語を分解してみると「支払い能力のある(あるいは、支払うべき)勘定口座」といったところでしょうか。将来的には支払わなければなりません。負債(liability=li「結びつける」+ability「能力」)の一種ですね。liはleとも。とても古いインド=ヨーロッパ語族の言葉で、派生語はleg「足」、league,alliance「連盟、同盟」、listen to「~に耳を傾ける」、rely on「~を頼る」、lean on「~に寄りかかる」等、数多くありますが、ゲルマン語派ではドイツ語の副詞語尾lich、英語の副詞語尾like,lyは「体」の意味で、日本語でも副詞句「這う這うの体で(ほうほうのていで)」というのがあります。日本語のほうは後に「逃げる」意味の動詞が続きますが、ly,lichはオールマイティーに動詞一般と「結びつき」ます。「体」がいろいろな部位と結びついているように。li,leを語源とする「負債」liabilityはまさに「結びついている、あるいは縛られている」感じをイメージするとよいでしょう。そして買掛金(Accounts payable)はこの一種なのです。そして貸方(右、Credit)に記帳する決まりです。クレジットカードをイメージして下さい。後払い可能です。買掛金は後払いなのです。

 売掛金(Accounts receivable)は、資産(Assets)の一種です。この語源はsat「満足」です。satisfy「満足させる」、satisfaction「満足」、これは分かり易いと思います。ところがsad「悲しい」も同語源だそうで、「何で?」という感じです。沖縄方言で「愛し(かなし)」というのがありますが…
 ところで、抵当権の実行というのがあります。これはローンの返済等が滞ったときに、銀行が抵当権の付いた宅地や建物を競売にかけて回収する、ということですが、これは抵当権を「満足」するため、という表現を使います。つまり、宅地や建物等の「資産」(Assets)は「抵当権」(mortgage)を「満足させる」(satisfy)ために使える、ということです。しかし競売をかけられた側は大きな「悲しみ」(sad)でしょう。それはともかく売掛金(Accounts receivable)は「回収能力のある、あるいは回収するべき勘定口座」です。元々は現金なり、あるいは掛けで仕入れた商品を保有し、それを販売して買い手方にたいしては後払いでよしとしたものです。あくまでも買い手方に対してです。源泉は保有していた商品だけしか販売できないので借方(左、Debit)に記帳します。デビットカードをイメージして下さい。残高までしか使えません。後払い可能なのは貸方(右、Credit)の買掛金だけなのです。保有しておらず、存在しないものは販売不可能なのは当然といえるでしょう。次は財務諸表(financial statements)のうちの一つである貸借対照表(Balance Sheet)です。

Balance Sheet(B/S)
Debit Credit
ASSETS LIABILITIES
・Cash and cash equivalents ・Accounts payable
・Accounts receivable SHAREHOLDERS' EQUITY

 まだ取り上げていないShareholders' equity「株主資本」があります。貸方(右、Credit)はこれを超えて負債(Liability)の買掛金(Accounts payable)による仕入(purchase)が可能です。ただし、信用(Credit)があればこそです。銀行でクレジットカードを作るときには審査(credit check)があります。一方の借方(左、Debit)はちょっと分かりにくいかと思いますが、次の人名勘定のところで説明します。

 損益計算書は費用(Cost)を借方(左、Debit)、収益(Revenue)を貸方(右、Credit)に書きます。Income statementとも呼ばれます。

Profit and Loss statement(P/L)
Cost Revenue
 purchasing expense
(Cost of sales)
sales

人名勘定

 取引先ごとの債権・債務の状態を把握するために、取引先の企業名をつけた勘定を「人名勘定」といいます。買掛金・売掛金の増減が把握できます。
(1)掛けで仕入れたとき
 4/1に○○商事から商品100円を掛けで仕入れたときは次のようになります。

○○商事
      4/1 仕入 100

 ○○商事が信用してくれたから貸方(右、Credit)に記帳するわけです。これで当社の○○商事に対する債務が発生しました。

(2)掛けで売上げたとき
 4/2に●●商事に商品200円を掛けで売上げたときは次のようになります。

●●商事
4/2 売上 200      

 ●●商事は当社に対し債務(支払い義務)が発生しました。だから借方(左、Debit)に記帳するわけです。Debitは「相手側」の債務ということなのですね。

(3)買掛金を支払ったとき
 4/29に○○商事に買掛金100円を現金で支払ったときは次のようになります。

○○商事
4/29 現金 100 4/1 仕入 100

 これで当社の○○商事に対する債務は消滅しました。

(4)売掛金を回収したとき
 4/30に●●商事から売掛金200円を現金で回収したときは次のようになります。

●●商事
4/2 売上 200 4/30 現金 200

 これで●●商事の当社に対する債務は消滅しました。

 [参考]

CREDERE
  イタリア語 スペイン語 フランス語
  crédere creer croire
s.1 credo creo crois
s.2 credi crees crois
s.3 crede cree croit
p.1 crediamo creemos croyons
p.2 credete creéis croyez
p.3 credono creen croient
DEBERE
  イタリア語 スペイン語 フランス語
  dovere deber devoir
s.1 devo debo dois
s.2 devi debes dois
s.3 deve debe doit
p.1 dobbiamo  debemos devons
p.2 dovete debéis devez
p.3 devono deben doivent

簿記の5要素

①資産の勘定は、増加を借方、減少を貸方
②負債の勘定は、減少を借方、増加を貸方
③資本の勘定は、減少を借方、増加を貸方
④収益の勘定は、消滅を借方、発生を貸方
⑤費用の勘定は、発生を借方、消滅を貸方

 ②の負債(liability)の一種に債務(debt)があります。この増加は貸方ですので注意しましょう。Debitは簿記上の左を意味しますが、debtは自己の債務を意味します。

まとめ

 買掛金・売掛金は物権が先に移転し、債権が残るときの簿記上の勘定口座です。民法では「債務引受」、「債権譲渡」などが後で登場します。