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ウォーハンマー『混沌狩り』第二回、GameJapan8月号にて連載中

 私事が立て込んですっかり紹介が遅れてしまいましたが、通算5回目となる『ウォーハンマー・ファンタジーロールプレイ』のキャンペーンリプレイが今月号のGameJapan8月号に掲載されています。私も本名で参加させて頂いています。しかもウォーハンマーの花形、「魔狩人」を担当しています。

GAME JAPAN (ゲームジャパン) 2008年 08月号 [雑誌]

GAME JAPAN (ゲームジャパン) 2008年 08月号 [雑誌]

 今回はいよいよウォハンならではの悦楽、スラーネッシュの神に焦点を当てたシナリオが展開します。これはこないだ発売された新作サプリメント『堕落の書』の内容をふんだんに盛り込んだものになっています。ダークファンタジーらしい、頽廃した連中との邂逅劇を、想像力を働かせつつ読んでいただければ幸いです。

 今回は、私のキャラクターの出番が多かったので、それにかこつけて〈キャラクターのロールプレイ〉という考え方について、補足させていただきます。

 ウォーハンマーの醍醐味は、卑賎な職業から大人物に至るまでの泥くさい職業遍歴をルール化した「キャリア」システムにあります。そして今回私が担当しているキャラクター、魔狩人のコンラッドは、「遺跡荒らし→吸血鬼狩人→魔狩人」という遍歴をたどったことで、なかなか一筋縄ではいかない〈意志決定〉を楽しめる立場に立っています。正規のシグマー教団に所属していない、流れ者の魔狩人であることから、ほかの魔狩人から蔑まれているという、美味しいのだか美味しくないのだか人によって感想が変わるだろうポジション取りをしています。
 そしてこれは、実は「混沌狩り」の第一話から狙ってやっているものでもあります。なぜなら後で遭遇するかもしれない設定上の困難に対して、ある程度柔軟に対応できるような理屈を自分で作っておけば、後でいくらでも設定のすりあわせができるからです。ウォーハンマーは設計コンセプトが古典的なゲームなので、前もってPC自身が挑むことになるだろう、キャラクター自身の課題のタネを蒔いておいたのです。
 特に、シビアな設定が盛りだくさんの背景世界「オールドワールド」では、このテクニックは特に役立ちます。とかく世知辛いことで有名なオールドワールドだからと言って、シビアな設定をPCまでもがすべて唯々諾々と受け入れる必要はないのです。設定は、つねに遵守しなければならない〈制限/情報〉ではなく、〈障害〉すなわち「解決可能な課題」でもある。そういう風に考えれば、自然と魅力的なキャラクターはできます。
 私はそういう風に考えて、コンラッドを提示しました。その結果、「魔狩人なのに、同行する魔女のレジーナをなぜ殺さないのか?」「腹に混沌変異ができた仲間のアルブレヒトをなぜ処刑しないのか?」「魔狩人の責務より吸血鬼を殲滅することに熱意を燃やしている理由は?」こういった設定上の疑問が、何度かGMから投げかけられることになります。これらの課題に対して私は、俵ねずみ氏が提唱した〈キャラクターのロールプレイ〉を意識しつつ、一つ一つ行動宣言で対応しましたし、そこがなにより楽しかった。〈ロールプレイング・ゲーム〉でしか味わえないようなおもしろさを、十分に味わうことができたのです。*1
 もちろん、チーム全員で生き残るという〈役割分担〉、混沌を駆逐するという〈課題の解決〉も大事です。それがなくてはTRPGに〈ゲーム〉としての手応えを感じないという人もいるでしょう。しかし私はそれとは別に、魔狩人コンラッドにできる〈ロールプレイング〉や、そこから立ち上がるウォーハンマーならではの〈狙いの再現〉といった設定面での目標も、このキャンペーンの中で見出し、楽しませてもらったということになります。
 以前から私の記事を読んできた方なら何度かみかけたことがあるかもしれませんが、私は『ウォーハンマー・ファンタジーロールプレイ』の目標を、以下の4つとしてとらえています。

■ウォーハンマーFRP4大目標

  • 〈課題の解決〉:混沌の猛威に耐えて生き延びる。できるならば、さらに撃退する。
  • 〈役割分担〉:「キャリア」ルールを活かしたパーティ間協力を実現する。
  • 〈ロールプレイング〉:ルールや世界設定から解釈可能なキャラクター個人の設定の整合性を保つ。余裕があれば、さらにそれを活かした行動宣言を行う。
  • 〈狙いの再現〉:『ウォーハンマー』らしいと全員一致で感じられるゲームをセッション中に作り上げ、受容する。

 私はこの4種類で区別したTRPG独特の構造を〈目標の多層構造〉と呼んでいます。
 今回のリプレイでも、このどれか1つだけに偏らないよう、細心の注意を払ったつもりです。そしてそのような4大目標をまんべんなく(できれば高いレベルで)満たすようなプレイこそが、TRPGにおける「筋のよいプレイ」だと認識しています。
 〈ロールプレイング〉について、もう少し補足をしましょう。今月号の最後のくだりで、魔狩人コンラッドは、ある重要な人物と対話をすることになります。ここで魔狩人なら大きく打って出るべきところを、私はこの第二話の成長で初めて技能〈学術知識:死霊術〉を取ったことを再現すべく、一見カッコ悪い〈意志決定〉をすることにしました(この意志決定が、次回のリプレイでも、大きく響くことになります)。
 紙面の都合上、そうしたプレーヤー自身の意識の変遷は見えにくいかもしれません。しかし、私がこれまで論じてきた〈キャラクタープレイ〉と〈キャラクターのロールプレイ〉との違い──いわゆる「演出」と言われてきたものと、私が考える〈ロールプレイング〉との差異が伝わるようなプレイを、少しは商業誌で実現できたのではないかと思います。まだまだプレーヤーとして力不足だとは思っていますけれども。
 GM兼リプレイライターである岡和田晃さんid:Thornは、限られたページ数の中で、数時間にわたるセッションの内容を的確にまとめてくださっています。ここまでの5回の中で、プレーヤー同士の息もどんどん合ってきています。
 みなさん、ぜひ手にとってみてください。

ウォーハンマーRPG 基本ルールブック

ウォーハンマーRPG 基本ルールブック

*1:すぐれた〈意志決定〉は、すぐれた〈背景世界〉と密接に相互作用します。設定が行動を支援し、行動が新たな設定・データを構築します。そのようなサイクルがシステムデザイン、マスターリング、プレイングによって実現することが、TRPGの面白さです。