ポリティカル・コレクトネスが学問の進歩の邪魔をしている? |
今日の横浜南部は湿ってて不安定な天気でした。
さて、先日の放送(https://www.youtube.com/watch?v=_VBef3QypnY)でも触れましたが、ポリティカル・コレクトネス、つまり「政治的に正しいとされていること」が、実は学問の進歩を妨げているという問題を指摘した記事がありました。
鋭い内容でしたので、その要約を以下にご紹介しておきます。
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By アレックス・ベレゾウ われわれは、学問によって居心地の悪さを感じることがある。 たとえば天文学は、地球が太陽の周りをまわっていることを証明したおかげで、神学における天動説をひっくり返したし、物理学では、われわれの住む宇宙が、いつか日か終わりを迎えるということが唱えられている。 そしてDNAの配列は、われわれの本当の祖先や、ガンやアルツハイマーの遺伝的傾向を暴くことにより、われわれの人生の考え方を永遠に変えてしまったのだ。 このような研究の中には、社会的に議論を呼ぶ可能性もあるため、研究者たちが政治的に非難されることを恐れて、その結果を公の場で発表するのをやめてしまうようなケースも少なくない。 ネイサン・コンファスという学者は、「科学の土台」(Foundations of Science)という専門誌に書いた論文の中で、この恐怖が「科学の探求における、自己修正的な性質を妨げるものだ」と論じている。 コンファス氏の論文は、ギリシャの「若者を堕落させた」という罪で処刑された、古代ギリシャのソクラテスの話から始まっている。 彼によれば、このような「処刑した側の考え方、つまり社会道徳を脅かすような学問的な研究は禁止すべきだとするものは、今日でもまだ広く共有されている」というのだ。 この論拠として、コンファス氏は「集団や人種の間の知能の差を研究すること」がタブーとなっていることを挙げ、「それを語ることさえ道徳的に誤っているし、危険でさえある」と信じる人々によって抑圧されている、と述べている。 このような見解を支持する人々は、もちろん「差別を防ぐ」という立派な意図を持っていることは明らかだ。ところが「地獄への道には善意が敷き詰められている」のであり、完全な平等性というものを維持しようとする誤った努力は、知識の進歩を妨げるものだ。 コンファス氏は、「もしその仮説が特定の道徳的価値や望ましい政治目標を支持していると見なされると、学者は証拠が揃っているにもかかわらず、その研究を止めてしまうことが多い」と述べている。 彼の言うことは正しいのであろうか?実は完全に正しい。 実際のところ、学者たちは自分たちの研究において政治的には好ましくない結果が出た場合に、それを受け容れないだけでなく、そもそも「政治的正しさに疑問を呈することさえも、自分の経歴に傷をつけるものだ」と考えているほどだ。 ローレンス・サマーズといえば、クリントン政権の元財務長官で、ハーバード大学の教授だが、彼は「男女間では知的な面で差がある」と示唆したおかげで終身在職権を剥奪されている。 このような厳しい圧力のおかげで、何人かの学者たちは確実に存在するこの「男女の脳の違い」を、研究することさえためらっているのだ。このような遠慮的な態度は、神経科学という学問の進歩にとっては明らかに「足止め」となっている。 同じようなことは、気候学の分野にも起こっている。 たとえば気候変動についての政治的に唯一正しい考え方というのは、「すべて悪いことは100%人間の責任によるもの」であり、「地球にはすでに死神がやって来つつある」というものだ。 このような「この世の終わり」的で非科学的な考えについて疑問の声を挙げた学者たちは、結果的に「気候変動否定者」(climate deniers)というレッテルを貼られたりしている。 もちろん気候学というのは、より懐疑的で慎重な「煮え切らない」アプローチによって進歩するはずなのだが、あまりにも多くの人々が、このようなアプローチをとったおかげで放逐されたり悪魔化されたりしている。 ホームレスの原因についての議論でも、政治的に正しいかどうかが問題となっている。「政治的に正しい説明」によれば、ホームレスの原因は貧困にあるということになっている。たしかに貧困は、その一つの原因であることは明らかだ。 ところがその議論で無視されることの多いのは、全米ホームレス協会のデータによると、20%から25%のホームレスが精神的に重い病を抱えており、これは全人口の中の割合と比べても、4倍の数字になるという事実だ。 同じデータでは、ホームレスの中の38%がアルコール依存症であり、26%が薬物依存症であると推察されている。そのデータでは「ホームレスを生み出している最大の原因は、アルコール・麻薬依存症にある」と指摘されている。 たしかに多く(というかほとんど)の人々は、心地良い幻想を優先して現実を無視することを好むのかもしれない。コンファス氏は、この現象の原因として「事実と道徳的な価値観を合成しようとするのは、人間の本能的な衝動にある」と考えている。 これをいいかえれば、世界をありのままに描き出す(ポジティブな)説明は、「世界はこうあるべきである」と定める規範的な言葉に「自動変換」されてしまうことが多いということだ。 このような根本的な混乱は、学問の議論をゆがめ、その進歩を妨げてしまうものだ。 もしコンファス氏の「われわれの認知不一致は人間の本性につきものである」という点が正しいとすれば、証拠を元にして作成される政策目標は、残念ながら、いつまでも達成できないことになるだろう。 ===
ここから見えてくるのは、社会的な価値観(政治的に正しいこと)と、学問的な真実は実は違うことがあるということ点でしょうか。 見過ごされがちですが、実はかなり重要な問題です。
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