映画やドラマなどの動画を初見で「倍速視聴」「10秒飛ばし」する習慣が広がる背景について考察した筆者の記事「映画を早送りで観る人たち」シリーズ(全9回)は昨年、SNSで大きな話題になり、テレビなどのメディアにも取り上げられた。それだけ世間の関心が高いテーマであることを改めて実感した次第である。
先日、同シリーズに追加取材と大幅な加筆を行った『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形』(光文社新書)という本を出した。同書中、倍速視聴積極派のひとりとして登場するのが、ゆめめさんだ。
彼女は会社勤めの傍ら、「note」で若者のトレンドや消費動向をリポートする「ワカモノのトリセツ」を同世代の相方ほっちさんと共同運営している。同サイトで2019年10月時点で早くも、「倍速視聴とスキップ視聴が若者の行動として当たり前になっている」と指摘していた。
ゆめめさんは1995年生まれの、いわゆるZ世代。1974年生まれである筆者の“常識”からすれば、彼女の映像コンテンツ視聴スタイルは驚くことばかりだった。
1時間ドラマを5分30秒で観る
稲田 ゆめめさんと面識をもったのは、我々がZOOM出演した「ABEMA Prime」ですね。私の1本目の記事「『映画を早送りで観る人たち』の出現が示す、恐ろしい未来」が話題になり、2021年5月に同番組が倍速視聴と飛ばし見の特集を組んだ。そこでゲストとして呼ばれたのが、早送り違和感派の私と、早送り積極派のゆめめさん。私、ゆめめさんの視聴スタイルを知ってびっくりしたんですよ。
ゆめめ どんなところがですか?
稲田 「1時間ドラマを5分30秒で観る」「動画配信サイトの画面下にあるあらすじを読み、その内容が書いてあるところまで飛ばし飛ばし10秒スキップして、『今あらすじに書いてある2行目ぐらいのシーンって、ここだな』と確認しなが観る」とか。すごいなと。
ゆめめ 自分の周囲の人たちもみんな倍速視聴してるのが当たり前なので、べつに自分が変わったことをしているという意識はなかったですね。
稲田 その後、書籍用の取材でじっくりお話を聞きました。「『東京リベンジャーズ』のアニメシリーズを1.5倍速で観たけど、主人公の家に男の子たちが集まってワイワイ喋っているような、ケンカ以外の日常のワンシーンは飛ばす」など、衝撃発言が満載で(笑)。
ゆめめ 実写版の映画が公開されると聞いたので、予習用にアニメ版を観ようと思ったんです。でも、その時点で10数話まで放映が進んでいたので、倍速と10秒スキップしないと追いつけないなと(笑)。