「自民一強」の空気は否めないが、データを見ると野党が与党を凌駕するブロックもある。消費増税や憲法改正を目前に控え、国民にとって重大な選択を迫られる参院選から目を離してはいけない。
真の「勝敗ライン」は?
参院選公示日前日の7月3日。山本太郎氏率いる「れいわ新選組」が、前代未聞の選挙戦に打って出た。東京選挙区から出馬するとみられていた山本氏が、急遽、比例区に鞍替えして再選を目指すことに決めたのだ。
しかも、比例1位ではなく3位でのスタート。政党が定めた順位で当選が決まる「比例特定枠」を使い、1位に筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の舩後靖彦氏、2位に重度障害のある木村英子氏を充て、自分の当選より、党の躍進を優先させる奇策を打ち出した。
「泡沫政党の苦し紛れ」、そう思うのは早計だ。れいわ新選組の戦略は、「自民一強」の政局にくさびを打ちこむことになる可能性がある。
本誌は今回、参院選の当落に関する重要な「生データ」を入手した。大手マスメディアA社が全国で行った当落世論調査および、自民党が行った最新の当落調査データである。
ページ末の表には、この2つのデータに加え、政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏、選挙プランナーの松田馨氏、時事通信解説委員の山田惠資氏3名の当落予想を掲載した。
これらのデータから現時点で予想される自民党の推定獲得議席数は、選挙区・比例の合計で56議席となった。65議席を獲得して大勝した'13年の参院選からは10議席前後減らすものの、与党が過半数となる「53」を超える見込みだ。
「勝つ」と大声では言えないが、「負ける」わけでもない。実は自民党もこの辺りを落とし所にして、選挙前から予防線を張り巡らしている。
「非改選含め、自公合わせて過半数が勝利ラインになる」
報道陣の前で、菅義偉官房長官がしきりにこう強調するのはそのためだ。自公合わせて「53」というと、本誌が予測した自民党単独の獲得数よりも少ない。
ちなみに、争点のひとつの憲法改正に必要な3分の2以上の議席数を与党が確保するには、「86」が求められる。
一方で自民党の二階俊博幹事長、萩生田光一同代行は「改選過半数(63議席)をしっかり取っていくのが目標だ」という。また甘利明選対委員長は「『安定多数の59議席を目指していく』と自民党員に発破をかけている」(自民党関係者)。
党内幹部で方向性がまるで一致していないように思えるが、勝敗ラインを複数作り、どのような結果になっても「自民勝利」を色濃く打ち出すのが目論見なのだ。