関連ワードトップに「自己破産」
私には、ひとつ大きな悩みのタネがある。それは、ネット上でまことしやかに囁かれている、自分に関するある「噂」だ。
「Yahoo!」や「Google」の検索エンジンに、「折原みと」という検索ワードを入力してみてほしい。「折原みと 作品」「折原みと 現在」などの関連検索ワードと並んで、「折原みと 自己破産」というワードが出てくるはずだ。
は? 何ですか、それ⁉
私、自己破産してませんけど~~~~~~!!
「折原さん、ネット上に自己破産したって書いてあるけど、大丈夫ですか?」
思い起こせば、初めて知人からそんな遠慮がちな問いかけをされたのは、5年ほど前のことだ。私は普段からエゴサーチをしないので、何のことかサッパリわからず、「えー? 自己破産なんてしてませんよー」「そうですよねえ」という呑気な会話をしただけで、深く気にもとめずにそのことはすっかり忘れてしまった。
が、昨年春に、小説家デビュー30周年記念の新作小説を出版した頃のこと。別の知人からまたしても同じような問いかけをされたのだ。2度目とあって、さすがに気になってネットで自分の名前を検索してみると……。
ある!! あるじゃないですか!! 関連検索ワードのトップに、「折原みと 自己破産」の文字が。なんじゃこりゃ~~〜?
「自己破産したと聞きました」
そのワードをクリックしてみると、身に覚えのない自己破産デマの出どころはすぐわかった。少女小説を書いていた頃、私の大先輩だった小説家の花井愛子先生が2001年に自己破産されている。
私はデビュー間もない頃に、花井先生の『山田ババアに花束を』(講談社ティーンズハート)という小説のイラストを描かせていただいたことがあり、花井先生の記事の中に私の名前があった。それにより、「自己破産」と「折原みと」というワードが合体して関連ワードに上がるようになってしまったらしい。
花井先生は、ご自身の壮絶な体験を、2冊のエッセイ本にまとめて出版されている。記事をちゃんと読めば、自己破産したのは私ではないことは明らかだ。が、関連ワードだけを見て早とちりしたオッチョコチョイな読者の方が、「Yahoo! 知恵袋」にこんな質問をしたことから、事態は面倒なことになった。
「折原みとさんが自己破産したと聞きました。大好きな作家さんなので心配です(以下略)」
その質問に対する「ベストアンサー」がこれだ。
「自己破産は知りませんでした。最近でも『天使のいる場所~Dr.ぴよこの研修ノート』『乙女の花束』など新刊を出し、6月にはサイン会も発表されているので、普通にご活躍されているものと思いますよ(以下略)」
これが唯一の解答であり、「ベストアンサー」だ。そりゃそうだ。自己破産したかどうかなんて、本人かせいぜい身内くらいしか知りえない情報なのだから、他人には解答のしようがない。この解答をした方も、「自己破産は知りませんでした」と書いているのだが、否定もしていないため、このQ&Aを読んだ人たちは「自己破産は事実である」と受け取ってしまったのだろう。
日付を見ると、この書き込みは2010年。昨年春の時点で、7年も前のことだ。なんと私は7年もの間、ネット上で「自己破産した」と誤解されたまま、知らずに過ごしていたのだ。その間、直接私に確かめてくれた人はふたりだが、デリケートな問題だけに、訊くに訊けずにモヤモヤしていた方たちも多いのではないだろうか……?