そもそも「大麻」とは何か?日本がいま考えるべき「マジメな使い方」

世界における乱用の実態と規制の現状
今年に入り、大麻事件が続いている。そもそも大麻とは何か? その歴史や規制の現状、乱用の実態などについて、依存症にくわしい筑波大学教授・原田隆之氏が考察する。

大麻とは何か、正確に知ろう

今に始まったことではないが、このところまた大麻で芸能人やその家族が逮捕され、ニュースやワイドショーを賑わせている。

1月15日にヒップホップミュージシャンのUZIが大麻所持で逮捕されたのに続き、30日には大竹まことの長女が同容疑で逮捕された。

これまでも、多くの有名人が大麻事件に関わっているが、例えば今は暴力問題で揺れている相撲協会も、10年前には大麻問題で大揺れしたことがあった。

ところで、大麻とはどのような薬物なのだろうか。

よく耳にはするものの、どんな薬物でどんな作用あるのか、実際よくわからないという人も多いのではないだろうか。

 

そもそも大麻とは、アサ科の植物、大麻草のことであり、この葉や花穂などを乾燥させたり、樹脂化したりしたものを吸引する。

マリファナは葉を乾燥させたもので、これをタバコのようにして吸煙する。樹脂化されたものはハシシと呼ばれる。

大麻に含まれる「有効成分」は、テトラヒドロカンナビノール(THC)と呼ばれる物質で、これが脳にあるカンナビノイド受容体に結合することで、幻覚作用や多幸感をもたらす。

一時期問題になった「危険ドラッグ」の多くは、合成カンナビノイドを主成分としたものであった。

神道とは切り離せない関係

大麻は広くわが国にも自生する植物である。

10年前、網走刑務所の構内に大麻が自生しているのが見つかって大騒ぎになるという「事件」があった。その植物を毎日目にしていた刑務官は、それが大麻だとは気づかず、気づいたのは受刑者だったという笑い話のような顛末だった。

大麻は日本の神道とは切り離せない関係にあり、古くから神事に用いられてきた。その薬理作用ゆえか、古来、大麻は神の宿る神聖な植物であるとして注連縄に用いられたり、その繊維を用いて「あらたえ」と呼ばれる布を織り、神々に献上されたりしていた。

大麻を司っていた豪族は忌部(いんべ)氏であり、忌部氏が権勢を誇った徳島県吉野川流域には、大麻に関連する地名が多く残る。

たとえば、鳴門市には大麻(おおあさ)山という山の麓に「大麻比古(おおあさひこ)神社」という由緒正しい神社がある。その神社のすぐそばには、四国八十八か所の一番札所である霊山寺(りょうぜんじ)がある。まさに、四国で一番スピリチュアルな場所だと言えるだろう。

また、そこから吉野川を上流に遡った所には、平成の市町村大合併まで、「麻植(おえ)郡」という地名もあった(現吉野川市)。ここも忌部一族が権勢を振るった地域であったという。

現在アメリカで盛んに大麻製剤を開発・販売している大塚製薬は、鳴門市を発祥の地としており、忌部氏との繋がりを彷彿とさせるものがある。

もしも、その繋がりが本当だとすると、古墳時代にまで遡ることのできる大麻の物語に歴史的ロマンを感じるのは私だけではないだろう。

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