―アトキンソンさんは、アナリストとして'90年代、日本の銀行が抱える不良債権額が20兆円にも上ると指摘して論争を巻き起こしました。その後、文化財を修復する会社の社長に転身。近年は観光を中心に、日本の現状に対する意見を発信し再び注目を集めています。
私が日本経済の分析をはじめたのは32年前ですが、当時から疑問に感じることがありました。海外と比べて日本企業の生産性は必ずしも高いわけではないのに、なぜ世界第2位の経済大国なのか、ということです。
日本では、「高い技術力と勤勉さ」によるというのが一般的ですが、必ずしもそれだけが理由とは言えません。GDPは経済の総額。最近になってわかったのは、一人あたりのGDPは決してよくない日本が2位だったのは、先進国のなかで「人口が多い」から。日本の技術には素晴らしいものがたくさんありますが、それだけでは実力を見誤る危険があります。
―世界の奇跡と言われる高度成長が主に人口のおかげとは、日本人には違和感がある話ですね。
日本人は忘れていますが、戦前から日本は経済大国で、GDPは世界第6位でした。江戸時代末期にはすでに世界5位だったという研究もあるほどです。世界の国々が日本を脅威に感じたのもそのためです。
敗戦で大きな打撃を受けたのは確かですが、戦前からの基盤があった上に終戦後はインフラの復興だけで経済は拡大したし、そこに先進国には異例の人口の急増が加わって、高度経済成長が続いた。むしろ必然と言えるでしょう。