日本国債格下げは鳩山政権崩壊の「サイン」
財務省VS経産省の暗闘で「成長戦略」を描けず小沢問題に気をとられている間に、鳩山政権は内部崩壊しているようだ。
昨年12月30日に発表した成長戦略と今年1月26日の日本国債の格下げ、一見関係のないこの二つの出来事が、政権内部の異常を表すサインだ。
まず、昨年末の成長戦略から読み解いていこう。民主党に成長戦略がないということは、昨年8月の総選挙の前から、自民党や経済界から批判されていた。それに対し、菅直人副総理・国家戦略相(当時)は、国民生活が第一で足下の経済政策に集中すると、11月までは言い続けてきた。
それが、12月半ば、急に年内に成長戦略を作れと指示を出した。菅副総理の下で、松井孝治官房副長官が支援しながら、近藤洋介経産政務官らが成長戦略の作成にあたった。問題は、そのチームに、財務省出身の古川元久国家戦略室長の名がなかったことだ。
表向きは、予算編成で忙しいという理由だが、この本音は松井官房副長官ら経産省派による財務省外しであった。
というのは、昨年末のラジオ番組で鳩山総理がおもわず漏らしたように、それまであまりに財務省主導が目立っていたからだ。国民から喝采を浴びた事業仕分けも財務省なしではできなかった。政権発足直後の昨年9月26日の予算編成方針でも、一番目に「平成22年度予算については、年内に編成する」という財務省お得意のスケジュール戦術の術中にはまっている。
「ロジ」で「サブ」を操る官僚の手口
官僚が政治家をコントロールしようとするときには、政策内容という「サブ」(サブスタンス=法律や政策の中身)ではなく、スケジュールや手順という「ロジ」(サブに対する日程、段取りなどの詳細)を使う。政治家にしてみれば、サブではなくロジだから、まあ言うとおりにしておいても問題ないだろうと油断する。ところが、ロジをコントロールすることによって、実際にはサブまで変えてしまうのが、官僚のテクニックの凄いところだ。
22年度予算についても、昨年10月15日に各省庁に概算要求を出し直させているのだから、年内編成でなくてもいい。通常翌年の1月下旬に招集される通常国会までに、予算書の印刷を含めて間に合えばいい。あえて年内編成を明記することもない。だが、あえて年内編成を明記させることで、鳩山政権をスケジュールでしばり、タガにはめようとしたのが財務省の戦略であった。
しかし、こうした財務省主導で面白くない役所も多い。その代表格が経産省だ。そこで、OBの松井官房副長官らが菅副総理を焚きつけ、成長戦略を仕掛けてきたわけだ。そして、名目3%という財務省からみれば「高め」の成長率を持ち出してきたのである。