私は今、遅めの夏休みを取り、台湾を歩いている。その見聞記を、3回にわたってお届けする。第1回は、4ヵ月後に迫った台湾総統選挙編――。
台北での移動はタクシーに限る
毎度のことだが、私が飛行機に乗ると、なぜだかよく揺れる。羽田空港から台北の松山空港まで3時間半なのだが、やはり激震した。食事は配膳の途中で、提供をストップしてしまった。
そんな中で、格好の映画を見つけた。『トップガン マーヴェリック』。昨年5月に日本で公開され、「もう10回も観た」なんていうツワモノも周囲にはいたけれど、私は見損ねていた。
何と言っても、わが世代のヒーロー、トム・クルーズ様が、マッハ10の戦闘機に乗って滑空する映画だ。おまけに敵国が核開発する地下基地へ向けて、空対地ミサイルをドギューン! まさに、大揺れの機内で観るためにあるような映画ではないか。
1986年の前作『トップガン』からほとんど変わらないトム様の雄姿を堪能していると、突如、機内放送で遮られた。
「皆様、当機はこれより着陸態勢に入ってまいります。シートベルトをしっかりお締め下さい。なお、台北松山空港内、及び空港の上空を撮影することは、固く禁じられています。撮影しますと、処罰の対象となります……」
Gettyimages
いきなり現実に引き戻された。台湾は、平和ボケした日本とは「似て非なる島国」なのだ。そういえば、来年から男子の徴兵が、4ヵ月から1年に引き延ばされることが決まっている。
松山空港に降り立つと、気温35度の炎天だった。東京の猛暑の夏が、台風15号の襲来とともに、ようやく過ぎ去ったかと思いきや、再び台北で舞い戻って来た。
空港から市内のホテルまで、タクシーに乗った。台北では、いつもタクシーを多用する。それは暑いからでも、贅沢するためでもない。台北のタクシー運転手は高齢の男性が多く、誰もがいっぱしの政治評論家だからだ。その「床屋談義」ならぬ「車内談義」は、一聴に値する。