新たな緊張が日本に広がっている。ターゲットとなるのは政府、企業、大学そして全国民―あの手この手で行われる、「秘密工作」のすべてとは。
前編『驚愕の全リスト「お人好しすぎる日本人」はこうして中国に情報を抜かれている《中華店、ホテル、企業、大学》』より続く。
前編では、日本の機密情報が企業などを通して盗まれてきた経緯について見てきた。具体的に情報はどのように奪われているのだろうか。
大規模サイバー攻撃の恐怖
そこで情報安全保障研究所首席研究員の山崎文明氏が指摘する。
「日立製作所やJAXAなど200にのぼる日本の組織が'16年から'17年にかけて、中国人民解放軍の指示による大規模なサイバー攻撃を受けました。狙いとなったのは各社が導入していたセキュリティ・ソフトウェアの脆弱性です」
企業のパソコンを一元管理するような社内管理ソフトは、中国のサイバー攻撃の標的になりやすいという。
独自の技術を育むのに不可欠な大学や研究機関も中国のターゲットだ。研究員となった中国人留学生が「学術スパイ」となって、AIなど先端技術の情報を盗み出す事件が次々と起きている。
ただ、彼らはあくまで末端の実務部隊に過ぎない。裏で指揮を執り、本国に情報を流すのが、中国人留学生の支援団体だ。そう指摘するのは、元海上自衛隊情報業務群司令の末次富美雄氏だ。
「中国人留学生の支援団体は、事あるごとに学生を呼び出し、最初は世間話から始め、徐々に在籍する組織の機密情報を持ち出すように指示します。そうして集めた情報は本国の『分析官』と呼ばれるデータ分析のプロに届けられ、あたかも中国独自に開発した技術として活用されるわけです」
もちろん中国人留学生は情報提供を拒むことはできない。「本国に残された家族がどうなってもいいのか」「お前は当局の反乱分子リストに載っている」と脅されるからだ。