「ひとよひよとにひとみごろ」
「ふじさんろくおうむなく」
この語呂合わせを覚えている人も多いでしょう。ルート2やルート5の値はそれぞれ、
1.41421356…
2.2360679…
という値で、これを2乗すると「2」と「5」になります。今回の記事は、このルートにまつわる雑学数学をご紹介します。
ルートの値を求めるとあるテクニック
まず1つ目の話題はルート10を有理数で表記する(つまり分数や小数で表すと)とだいたいいくつになるか? そしてその計算方法はどういうやり方があるか? といったものです。
本題に入る前に言葉の定義をはっきりさせておきましょう。「ルート」と似た意味の言葉に「平方根」というものがあります。ある数 a の平方をとった(つまり、2乗した)値を x とすると、
x = a×a
という関係式で表すことができます。このとき、「aはxの平方根」であるといいます。ここで注意してほしいのが a の値は x が 0 のときを除いて、正の数と負の数の2つあるということです。
たとえば x=4 ならば、-2 と 2 の 2つが x の平方根 a となります。2を正の平方根、-2を負の平方根といいます。そして、2が「ルート4」、-2が「マイナスルート4」となります。
つまり、「ルート4」といったときには1つの値のことを指しますが、「4の平方根」という場合はマイナスの値とプラスの値を含みます。
本記事では正の平方根つまり「ルート~」に特化して書いていきます。
あてずっぽうで探してみる
さて、それでは本題です。「ルート10」の値を求める方法を紹介していきましょう。ぱっと思いつくのは、とりあえず適当に数を当てはめていって、それらしい値を求めていくという方法です。
「ルート10」は、「ルート9」より大きく「ルート16」よりも小さい数なので、3から4の間の数ということがわかります。ここでたとえば3.1くらいでは、と考えて3.1を2乗すると9.61となり、10にかなり近い値になります。続いて3.2で考えると10.24となり、先ほどよりも近い値になることがわかります。
10.24は10を超えているので次は3.15で考えると……といったやりかたで求めていくと、地道ではありますが小数表記でおよそいくつになるかを求めることができます。
この方法は確実さはありますがあまり賢い方法とは言えません。なにかほかのアプローチはないのでしょうか。
2000年前から使われる由緒ある方法
実は今から紹介するルートの近似値を求める方法は、約2000年ほど前に制作された中国の数学書『九章算術』にすでにその考え方のベースが掲載されていたようです。
この『九章算術』、はじめて聞く方も多いかもしれませんが、かなり幅広い内容を扱った数学書です。余談ですがこの本の注釈本として西暦263年に出された本には円周率が、
「3.14+64/62500」より大きく「3.14+169/62500」より小さい
ことが記され、近似値として3.14を使うとよいと言及されています(さらなる余談ですがこの数の小数部分にある「64」「169」「62500」はそれぞれ「8」「13」「250」の平方の値であり、なにかここにもルートの話が関係している可能性はあるかもしれません)。
そんな『九章算術』では、以下のような考え方でルートの値を近似する方法が記してあります。
(a+b)(a+b) = aa+2ab+bb = aa+b(2a+b)
求めたい値をa+bに分け、右辺のような式変形をもとに値を求めていく方法です。
実際に値を入れてみるとイメージが湧くかと思いますので、やってみましょう。