またNHKで…
かんぽ生命保険の不適切販売を指摘した「クローズアップ現代+」をめぐり、NHKが日本郵政グループの抗議を受けて続編の放送を延期していたことを毎日新聞がスクープした。
記事を読んで、「またか」と思わざるを得ない。NHKが外部の圧力に屈するのは、これまでにもたびたび繰り返されてきたからだ。
まず、毎日新聞やその他各紙の報道をもとに問題の経緯をたどる。
昨年4月に放送されたNHKの「クローズアップ現代+」では、かんぽ生命保険の不適切な営業実態を取り上げた。のちに金融庁の立ち入り検査を受けるなど、日本郵政グループを揺るがす事態となったこの問題を最初に報じたのがこの番組である。
NHKは番組終了後にさらなる続編の放送を目指し、情報提供を呼びかける動画をツイッターに投稿した。この動画に対し日本郵政が「犯罪的営業を組織ぐるみでやっている印象を与える」などと抗議して上田良一会長宛で削除を求めたため、番組の幹部が日本郵政に事情を説明したが、その際に「番組制作と経営は分離し、会長は番組制作に関与していない」などと発言したという。
これを突破口とみたのだろう。日本郵政は、「放送法では番組の最終責任者は会長だ」「NHKで全くガバナンスが利いていない」と反論し、釈明を求める文書を昨年8月にNHKの上田良一会長宛に送付。すると、NHKは動画を削除し、続編の放送もいったん延期した。
それだけではない。昨年10月に日本郵政がNHKの経営委員会に、NHKのガバナンス体制の検証を求める書面を送ると、石原進NHK経営委員長(JR九州相談役)が、番組幹部の発言に誤りがあったとして上田会長を注意。翌月には上田会長が、番組幹部の発言は「明らかに説明が不十分で、誠に遺憾です」と事実上の謝罪文書を日本郵政側に送ったという。
毎日新聞の報道後に石原経営委員長が発表したコメントでは、「郵政グループからの申し入れについて、会長に対し、視聴者目線に立った対応が行われるよう必要な措置を講ずることを伝えました。放送法第32条の規定のとおり、経営委員会が番組の編集に関与できないことは十分認識しており、自主自律や番組の編集の自由を損なう事実はございません」とする。
あくまでも放送法が禁じる個別の番組編集への介入ではないと強調するが、「クローズアップ現代+」での個別の放送を受けての会長への働きかけであろうと言わざるを得ない。