「過去数年間で、最もエキサイティングでニュースの多いイベントだった」
ジャーナリスト・西田宗千佳氏が、現地取材したアップルの年次開発者会議「WWDC 2019」。
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「アップルの未来」が見えた!
アップルは6月3日(現地時間)、年次開発者会議「WWDC 2019」を、カリフォルニア州・サンノゼで開催した。
アップルの発表といえば、「どんなハードウエアが出たのだろう」「新しいiPhoneが出たのか」と思う人が多いかもしれない。確かに今回も、新たなハードが発表された。
だが、それは販売価格5999ドル(約64万7700円)から、最大メモリー搭載量1.5TB(念のために申し添えるが、ハードディスク容量ではなく、メインメモリーの数字だ)、電源の最大出力は1400Wという、文字どおりプロ向けの「MacPro」だ。
このMacProが歓声をもって迎えられるのが、世界中のプロフェッショナルが集う場であるWWDCである。そのため、WWDCの発表内容は、iPhoneの発表会ほど「わかりやすい」ものではない。
しかし、WWDCで発表された新OSや新技術からは、今後のアップルが向かおうとしている方向性を見通すことができる。
「iPad専用OS」が登場
「今回のWWDCの最大のトピックは?」
こう聞かれると、筆者も正直、答えに窮する。それは「変化がなかったから」ではない。
それどころか、ここ数年のWWDCでは最もエキサイティングで、ニュースの多い年だといって間違いない。ただし、それらニュースのどれもが、一言では説明しづらいものばかりなのだ。
あえて共通項を挙げるとすれば、アップルがこの数年間、抱えてきた課題や主張してきた課題について、それぞれ解決方法を提示しはじめた……という点にあるだろう。
いずれも基本的には、秋に無料で行われる新OSへのアップデートで実現するものだ。したがってそれらは、ほとんどのユーザーに恩恵がある。そして、その新機能の価値を高めるのは、それらの機能を使ったアプリやサービスをつくる開発者である……、という建て付けなのである。
最もわかりやすい例が、iPad向けのOS「iPadOS」のアップデートだ。
「あれっ!?」と、思った人もいるだろう。
iPhoneとiPadのOSは従来、同じ「iOS」だった。しかし今回から、iPhone用のOSは「iOS」、iPad用のOSは「iPadOS」に分かれる。
分離される理由は、スマートフォンであるiPhoneに最適なユーザーインターフェースと、タブレットであるiPadに最適なユーザーインターフェースがそもそも異なることに加え、今後はその差がこれまでよりも大きくなっていくことにある。
「サイズが違うんだから当然だろう」と思われそうだが、意外なことに、世の中にはこれまで、「タブレット専用のOS」は存在しなかった。iPadはようやく、「スマホでもなくパソコンでもない」という、自らの立ち位置にマッチした進化をしていくことになる。