ガ島通信

メディアとジャーナリズムの未来を追いかける

Googleという帝国。「ザ・サーチ」ジョン・バッテルを読んで

インターネット業界で働く人だけでなく、あらゆるメディア産業で働く人に読んでもらいたい本です。

ザ・サーチ グーグルが世界を変えた

ザ・サーチ グーグルが世界を変えた

前半は検索の歴史とグーグルの創業者であるサーゲイ・ブリンとラリー・ペイジのスタンフォードでの出会いなどです。個人的に興味を持ったのは、第7章「サーチエコノミー」と第8章「検索とプライバシー」。「サーチエコノミー」には、グーグルが検索エンジンのアルゴリズムを微調整したときに大打撃を受けたネットショップの経営者の例などが書かれています。また、グーグルの検索結果の公平さ、純然たるオーガニック検索と課金型リスティングの区分への疑問が語られています。そして、前例のない株式公開も結局は「金」が物を言ったことなど…
ちなみにグーグルのコンテンツや知的財産に対する意識をあらわすエピソードして、「I AM GOOGLEBOT I CONTROL ERTH」(おれさまはグーグルボットだぞ。地球を制圧した)というイラストの使われ方が紹介されています。

(イラストは)グーグル社内で大量にコピーされましたが、それは許可もなく、報酬を支払うこともしませんでした。邪悪になるなという社是は著作権法の尊重には適用されないようですね

と皮肉られています。そのほか、印象に残ったフレーズをいくつか列挙しておきます。

・グーグルは与え、そしてグーグルは奪い取る

・ヤフーもグーグルも同じビジネスを展開している。そのビジネスを一言で表せば、それはメディアビジネスと言える

・世界中の大小さまざまな企業を網羅して、グーグルが呼び込めるマーケットが、まさに世界の国内総生産になる。それこそがマーケットプレイスだ(グーグルが「課金決済、財布」を持ったときに、新しい経済領域が生まれるでしょう)。

グーグルのモットーは『邪悪にならない』だということです。本当にグーグルは「邪悪」なのでしょうか? この本を読むだけでははっきりしませんが、疑問はぬぐえません。検索結果は「グーグルの手の中」であり、結果についてグーグルが意図的に組み替えていたとしてもユーザーはほとんど気付くことができないでしょう。データベースを作っているだけ、中立な立場でコンテンツを仲介しているだけだとしても、それは新たな「情報」帝国であり、ビッグブラザーへの不安は消えません。ネット上でビジネスをしている人にとっては、検索によってすでにグーグル帝国の奴隷となっているのです(ネットからオフラインになるしないのか?)。

追記 絵文録ことのはに「SEOに必須 Googleはいかにしてスパムサイトを弾いているか」とのエントリーがあり、Googleの特許文書のまとめがありました。要するに、スパムをやらずに新鮮なよいページを更新するべきだという結論のようですが、よいページって…(ホントにリンクとかアクセス数とか、そういのだけ?と疑い深い)