ジグソーパズルにはまった。たいへんだ。

俺はジグソーパズルなんか、やらない子だと思っていた。まちがいだ。人はいつからでも、どんなふうにでも、変われる。

時は2020年の春。世は、コロナ禍にあえいだ。日本も世界も、異様な雰囲気だった。特異だったのは、外出自粛ムードだ。日本国においては、あくまでムードだ。

俺はというと、もとからインドアだ。休日の朝から、デスクトップパソコンを点火する。自サイトの更新はしなくなったものの、ツイッターやインスタは、つらつら書いてやろう。そして、読みかけの海外推理小説を完結させようか。アマプラのお気に入りにたまっている、サスペンス映画の、どれかを見ようか。

飽きた。いくらなんでも、飽きた。

コロナ禍でなければ、こうした休日のバリエーションの中には、薄化粧で車を出し、ドラッグストアで、新作日焼け止めを手の甲にぬり、神社にお参りして、お財布の小銭を全額、お賽銭箱に入れてくるイベントが挿入されていた。できなくなった。

ボーイフレンドのチュルル君（仮名）とのデートは、もちろん定期的にあるが。2020年春は、「ガラコちゃん（仮名・俺のこと）の誕生月に、こんなことになって（史上初の緊急事態宣言）。」2人で話し合い、俺の誕生日旅行も、デートも、キャンセル。それぞれの家に籠城することになった。

さあ、どうしよう。

困ったのは、俺だけではなく、実母のままこちゃんは、もっとだった。俺はまだ、仕事で週5日は外出せざるをえないが、ままこちゃんは、たまの旅行や遠足がぜんぶ中止になってしまい、家から一歩も出られなくなった。

母の日に、ジグソーパズルをプレゼントしようと思った。

つづく