50年代から70年代にかけて、多くの傑作を残してきたブルース・ミュージシャンと、同時期にシカゴから多くの名盤を配給していた、音楽レーベルから名前をとったバンド、Howlin’ Wilf & The Veejaysでキャリアをスタート。ロンドンのライブ・スペースで多くのパフォーマンスを経験し、90年代に入るとヴァン・モリソンなどのライブに帯同。2000年代には自身名義がアメリカのブルース・チャートを制覇するなど、多くの足跡を残してきた、コルチェスター出身のシンガー・ソングライター、ジェイムズ・ハンター。
2012年に現在のバンド、ジェイムズ・ハンター・シックスを結成。すると、彼の音楽のファンだったシャロン・ジョーンズの推薦もあり、ダップトーン一派の作品を数多く手掛けている、ボスコー・マンのプロデュースのもと、2013年にユニヴァーサルから『Minute By Minute』を録音、2016年には、ダップトーンに完全移籍して2枚目のアルバム『Hold On!』をリリース。ダップトーン発の作品では珍しい、ブルースを取り入れた作風で音楽ファンの耳目を惹いた。
今回のアルバムは、前作に引き続きダップトーンから発表された作品。プロデューサーは前作に引き続きボスコー・マンで、収録曲のソングライティングはジェイムズ・ハンターが担当。演奏やレコーディングも前作と同じ面々が行うなど、前作同様、リズム&ブルースの泥臭さと軽妙さ、ブルースの荒々しさを、巧みな演奏技術で現代に蘇らせた録音になっている。
アルバムに先駆けて発表されたのは、1曲目に収録された”I Don't Wanna Be Without You”だ。キューバ音楽のエッセンスを取り入れた作風は、妖艶でリズミカルなラテン音楽を取り入れて、アダルティな雰囲気を演出した60年代初頭のリズム&ブルースを彷彿させる。サム・クックやレイ・チャールズなど多くのミュージシャンが採用してきた手法を、現代のポップスに落とし込むアレンジ技術が光っている。
これに対し、前曲のカップリングである”I Got Eyes”は、YMOなどがカヴァーしたことでも知られるアーチー・ベル&ドレルズ“Tighten Up“を彷彿させる、アップテンポのダンス・ナンバー。ブンブンと唸るダイナミックなベース・ラインと、畳み掛けるように音を重ねるホーン・セクションが格好良い。この演奏をバックに、時折雄叫びを上げながらパワフルな歌唱を聴かせるジェイムズの姿が心に残る。
また、パーカッションとオルガンの軽妙な伴奏が印象的な”Show Her”は、サム・クックの”Cupid”やオーティス・レディングの”(Sittin' On) The Dock of the Bay”のような、朴訥とした雰囲気の飾らないメロディが心地よいミディアム。打楽器や鍵盤楽器の明るい音色で、ポップな作品に仕立て上げる手法が心憎い。60年代のサウンドを取り入れた作品は沢山あるが、ここまで当時の音を再現している曲は珍しい。懐かしいけど新しい、不思議な音楽だ。
そして、”How Long”は本作の収録曲で異色の、ギターの弾き語りとコーラスを組み合わせた作品だ。デルズやフラミンゴスのような、60年代初頭のドゥー・ワップを連想させる、息の合ったコーラスと掛け合いが面白い。ギターの弾き語りとコーラスという、昔から使われている手法を組み合わせて、新しい音楽に仕立て上げる技術が魅力の作品だ。
彼らの音楽の面白いところは、60年代から70年代にかけて一世を風靡した、ファンクやソウル・ミュージックから多くの影響を受けたスタイルがウリのダップトーン一派では珍しい、50年代のリズム&ブルースやブルースを土台にしていることだ。ビートルズやローリング・ストーンズのように、イギリスのロック・ミュージシャンにはブルースをルーツにしている人達が少なくないが、当時の音楽を徹底的に研究し、現代のリスナーに合わせた音楽にアレンジして見せる潔さと技術力には、唯々愕然とするしかない。
エイミー・ワインハウスやマーク・ロンソンの音楽にソウル・ミュージックのフレーバーを注ぎ込んだダップ・トーンズや、ジェイZの作品を通してファンクの魅力を世界に伝えたメナハン・ストリート・バンドのように、リズム&ブルースやブルースの面白さを現代に伝えてくれる希少な作品。ヴィンテージ・ミュージックが好きな人にはもちろん、ボウディーズやオカモトズのような、黒人音楽をルーツに持つ日本のロック・バンドをよく聴く人にもおすすめだ。
Producer
Bosco Mann
Track List
1. I Don't Wanna Be Without You
2. Whatever It Takes
3. I Got Eyes
4. MM-Hmm
5. Blisters
6. I Should've Spoke Up
7. Show Her
8. Don't let Pride Take You For A Ride
9. How Long
10. It Was Gonna Be You
2012年に現在のバンド、ジェイムズ・ハンター・シックスを結成。すると、彼の音楽のファンだったシャロン・ジョーンズの推薦もあり、ダップトーン一派の作品を数多く手掛けている、ボスコー・マンのプロデュースのもと、2013年にユニヴァーサルから『Minute By Minute』を録音、2016年には、ダップトーンに完全移籍して2枚目のアルバム『Hold On!』をリリース。ダップトーン発の作品では珍しい、ブルースを取り入れた作風で音楽ファンの耳目を惹いた。
今回のアルバムは、前作に引き続きダップトーンから発表された作品。プロデューサーは前作に引き続きボスコー・マンで、収録曲のソングライティングはジェイムズ・ハンターが担当。演奏やレコーディングも前作と同じ面々が行うなど、前作同様、リズム&ブルースの泥臭さと軽妙さ、ブルースの荒々しさを、巧みな演奏技術で現代に蘇らせた録音になっている。
アルバムに先駆けて発表されたのは、1曲目に収録された”I Don't Wanna Be Without You”だ。キューバ音楽のエッセンスを取り入れた作風は、妖艶でリズミカルなラテン音楽を取り入れて、アダルティな雰囲気を演出した60年代初頭のリズム&ブルースを彷彿させる。サム・クックやレイ・チャールズなど多くのミュージシャンが採用してきた手法を、現代のポップスに落とし込むアレンジ技術が光っている。
これに対し、前曲のカップリングである”I Got Eyes”は、YMOなどがカヴァーしたことでも知られるアーチー・ベル&ドレルズ“Tighten Up“を彷彿させる、アップテンポのダンス・ナンバー。ブンブンと唸るダイナミックなベース・ラインと、畳み掛けるように音を重ねるホーン・セクションが格好良い。この演奏をバックに、時折雄叫びを上げながらパワフルな歌唱を聴かせるジェイムズの姿が心に残る。
また、パーカッションとオルガンの軽妙な伴奏が印象的な”Show Her”は、サム・クックの”Cupid”やオーティス・レディングの”(Sittin' On) The Dock of the Bay”のような、朴訥とした雰囲気の飾らないメロディが心地よいミディアム。打楽器や鍵盤楽器の明るい音色で、ポップな作品に仕立て上げる手法が心憎い。60年代のサウンドを取り入れた作品は沢山あるが、ここまで当時の音を再現している曲は珍しい。懐かしいけど新しい、不思議な音楽だ。
そして、”How Long”は本作の収録曲で異色の、ギターの弾き語りとコーラスを組み合わせた作品だ。デルズやフラミンゴスのような、60年代初頭のドゥー・ワップを連想させる、息の合ったコーラスと掛け合いが面白い。ギターの弾き語りとコーラスという、昔から使われている手法を組み合わせて、新しい音楽に仕立て上げる技術が魅力の作品だ。
彼らの音楽の面白いところは、60年代から70年代にかけて一世を風靡した、ファンクやソウル・ミュージックから多くの影響を受けたスタイルがウリのダップトーン一派では珍しい、50年代のリズム&ブルースやブルースを土台にしていることだ。ビートルズやローリング・ストーンズのように、イギリスのロック・ミュージシャンにはブルースをルーツにしている人達が少なくないが、当時の音楽を徹底的に研究し、現代のリスナーに合わせた音楽にアレンジして見せる潔さと技術力には、唯々愕然とするしかない。
エイミー・ワインハウスやマーク・ロンソンの音楽にソウル・ミュージックのフレーバーを注ぎ込んだダップ・トーンズや、ジェイZの作品を通してファンクの魅力を世界に伝えたメナハン・ストリート・バンドのように、リズム&ブルースやブルースの面白さを現代に伝えてくれる希少な作品。ヴィンテージ・ミュージックが好きな人にはもちろん、ボウディーズやオカモトズのような、黒人音楽をルーツに持つ日本のロック・バンドをよく聴く人にもおすすめだ。
Producer
Bosco Mann
Track List
1. I Don't Wanna Be Without You
2. Whatever It Takes
3. I Got Eyes
4. MM-Hmm
5. Blisters
6. I Should've Spoke Up
7. Show Her
8. Don't let Pride Take You For A Ride
9. How Long
10. It Was Gonna Be You