働く人のための「DaVinci Resolve」
第5回
音声をベースに映像を編集する ~複数の動画を組み合わせたシーンの作り方
2023年5月23日 11:30
本連載では、無料で使える高機能な動画編集ツール「DaVinci Resolve」の使い方をお伝えしています。
前回は映像と同時に集音された音声を合わせ込んで、まず「シーン2」を編集してみました。ここで素材のおさらいをしておきます。
- シーン1:映像のみ、音声のみ
- シーン2:メイン動画(編集済)
- シーン3-1:サブ1〜サブ5動画、音声のみ
- シーン3-2:メイン動画、サブ動画
- シーン3-3:メイン動画、サブ1〜2動画
- シーン3-4:メイン動画、サブ動画
- シーン3-5:メイン動画、サブ動画
- シーン4:メイン動画
今回はシーン2に続く、シーン3-1を編集していきます。シーン3-1はメイン動画がなく、音声と、それにはめ込むためのサブシーンが撮影されています。つまり音声を下敷きにしておいて、その上に映像を被せていくというスタイルの編集になります。
今回の解説で使用した素材をサンプルとしてご用意しました。ご利用ください。
※Webブラウザーによってダウンロードがブロックされる場合がありますが、右クリックメニューからファイルの保存を行い、警告が表示されても[継続]などの項目を選択して保存してください。
まずはシーン3-1の音声ファイルを切り出してみましょう。セリフは以下のようになっています。
これがパック式のコーヒーマシンです。左にフレッシュパックが置いてあります。各種のコーヒーだけでなく、お茶やココアも用意されています。まずは飲みたいドリンクを選んでください。今日はこれにしてみましょう。
しゃべり始めの少し前にIN点、しゃべり終わりにOUT点を設定します。タイムラインに乗せてからタイミングの微調整はできますので、ここではざっくり指定すれば構いません。
メディアプール上の「シーン3-1.WAV」を、タイムラインの「1」の下に配置します。最初ここには何もありませんが、音声を配置することで「A1」トラックが自動的に作られます。
すでにタイムラインには、前回編集した「シーン2」が入っているはずです。「シーン3-1」の音声はこの後に続くシーンですから、「シーン2」の最後の辺りから再生してみて、「シーン3-1」音声の始まりタイミングがちょうどいいか、確認します。タイミングが詰まりすぎていたり、間(ま)が空きすぎている場合は、タイムライン上の音声の先頭をつまんで左右に動かし、タイミングを調整します。
今後、こうした編集を沢山積み上げていくわけですが、タイムラインに映像や音声を配置したら、毎回必ず再生してみて、タイミングが妥当かどうかをチェックし、修正してください。あとでまとめてやろうと思っていると、1箇所のタイミング調整で後ろ全部がズレたりして、つじつまが合わなくなります。
音声のベース上に映像を配置する
ではこのセリフに合わせて、映像を上塗りしていきます。映像は、「シーン3-1:サブ1〜サブ5」の動画の中から選んでいきます。
まずは「シーン3-1:サブ1」の動画を合わせてみます。この動画の中でもほぼ同じことをしゃべっていますので、音声を切り出した時と同じ感じでIN点とOUT点を設定し、タイムラインに配置していきます。
ここで注目すべきは、音声波形です。「A1」トラックの音声波形と、「1」トラックの動画波形では、タイミングがズレているのが確認できます。波形がわかりにくいので、いったん「シーン3-1:サブ1」の音声レベルを上げてみましょう。
- タイムライン上の「シーン3-1:サブ1」動画をクリックして選択します。選択されると赤い枠で囲われます。
- ビューワーエリアにある[ツール]ボタン(スライドバーが3本並んだアイコン)をクリックします。ビューワーの下にツールが表示されます。
- 一番右の[♫]ボタンをクリックします。オーディオツールに切り替わります。
- 下のスライドバーを右に移動させて、タイムラインの音声波形を大きくします。
- [ツール]ボタンをクリックして、音声編集モードから抜けます。
波形が大きくなるということは、実際の音量も大きくなっています。この状態で音声波形を使って、だいたい同じタイミングになるよう、「A1」に配置した音声トラックを右にずらして調整します。
「シーン3-1:サブ1」動画の先頭が少し余ってしまいましたので、この部分をカットしてしまいます。
- タイムラインを動かして、赤い再生バーが「A1」音声の先頭になるように調整します。
- 中央部にあるツールのうち、はさみのアイコンの[クリップを分割]をクリックします。再生バーの位置で、「シーン3-1:サブ1」動画に切れ目が入ります。
- 切り取られた先頭部分を選択します。
- [Shift]+[Delete]キーを押して、選択した部分を削除します。
動画の一部分を削除すると、それより後ろのクリップが自動的に前に詰まります。自動的に前に詰まって隙間が空かないというのが、[カット]ページの大きな特徴です。
再生してみて、音声と動画のアクションが合っているかを確認します。後半は別の映像を入れていきますので、最初のほうだけ合っていれば大丈夫です。なお動画のほうの音声は使いませんので、ミュート(消音)してしまいます。
- 「シーン3-1:サブ1」動画の上で右クリックします。メニューが表示されます。
- 表示されたメニューの中から、[ミュート]を選択します。
クリップのところに、スピーカーに×マークが付けられました。これでこの動画の音声は、消音されたことになります。
映像の上に映像を「ぬりえ」する
では続いて別のシーンも入れていきましょう。次は「シーン3-1:サブ2」を入れていきます。こちらにも音声が収録されていますが、次は音声に頼らず、映像のタイミングで合わせて行くという編集をしてみます。2つの映像のタイミングを合わせる編集ができるようになっておくと、今後なにかと重宝するはずです。
「シーン3-1:サブ2」は、コーヒーのパックを取り出すシーンのアップです。同様のアクションは、すでにタイムライン上に配置した「シーン3-1:サブ1」にもあります。このアクションを合わせて行きます。
- タイムライン上で、引き出しを引っぱる直前を探し、そこで止めておきます。
- メディアプールから「シーン3-1:サブ2」をクリックし、ビューワー内で同様に引き出しを引っぱる直前で止めます。そこにIN点を設定します。OUT点は特に設定しなくても、クリップの一番最後が指定されています。
- 「シーン3-1:サブ2」をドラッグして、「2」トラックの再生バーの位置に配置します。
- 「2」に配置した「シーン3-1:サブ2」の先頭を掴んで、15フレームほど左側(前方)へ伸ばします。
このように、映像の上に映像を乗せていく編集手法を、「インサート編集」と言います。上に載っている映像のことを、「インサートカット」と言います。
「シーン3-1:サブ2」の音声は使いませんので、今度は先ほどと違った方法でミュートしてみます。
- 「2」トラック先頭にあるスピーカーアイコンをクリックして、「2」トラック全体をミュートします。
- タイムラインを再生して、音声がミュートされているかチェックします。
「2」トラックをミュートしましたので、今後このトラックに配置する映像は、すべて音声がミュートされます。音声をミュートする方法には、いくつか方法があります。どれが正解というわけではなく、効率を考えて機能を使い分ける必要があります。
また今回はOUT点を特に指定せずに編集しています。この続きを編集する際に、次のカットとの繋がりを見て決めればいい、逆に言えば次に続くカットを見てみないと決められないので、今は「なりゆき」で後ろを伸ばしています。このような編集手法を、「オープンエンド編集」と言います。
もう1カット、インサートカットを入れていきましょう。「シーン3:サブ4」を、今挿入したインサートカットの前に入れていきます。「シーン3:サブ4」は、コーヒーパックの棚を下から上に振り上げて撮影したカットです。
- タイムラインを選択し、『お茶やココアも用意されています。』というセリフの少し前で止めておきます。
- メディアプールで「シーン3:サブ4」を選択し、先頭から3秒ぐらいのところにIN点を設定します。
- 先頭から6秒ぐらいのところにOUT点を設定します。
- 「シーン3:サブ4」を「2」トラックの再生バーの位置に配置します。
このカットは、あえて短く入れています。なぜならば、長いままで挿入すると、先ほど追加したインサートカットの先頭を上書きしてしまうからです。このため、次のインサート映像までに隙間が空いています。この間を、「シーン3:サブ4」の後ろを伸ばして埋めていきます。
編集は、先頭から順に繋いでいくだけならテクニックや計算は不要ですが、見た目でタイミングを合わせたり、前に戻って挿入したりする際には、作ってきたタイムラインを壊さないように考えていく必要があります。また一度タイムラインに配置して、再生してみないと細かいタイミングがわかりません。タイムラインに置いただけでなく、そのあと微調整していくという作業が重要です。