でんこと旅するメタバースの世界
メタバース住人はMetaの衰退なんて気にしてない! ~2022年のメタバース界を振り返ってみる
「メタバース元年」から「メタバース地固めの年」へ。住人は今後をどう考える?
2022年12月22日 06:45
2022年も残すところわずかです。今年1年を思い返すと本当にいろいろなことがありました。メタバースの世界に生きる私にとっても激動の年で、振り返るとあれもあった、これもあったと改めて濃厚な時間を過ごしてきたと感じています。その中にはポジティブなこともあればネガティブなこともあります。
今回はそんな私が印象に残っている出来事の中でも、特に今年のメタバースの動向を考える上で取り上げておくべき話題をピックアップしてみました。かいつまんでにはなりますが、2022年のメタバース界を一緒に振り返ってみましょう。
東京ゲームショウ出展に、ハイエンド機の発売、そしてメタバース部門の大赤字。功労者の退職まで話題に尽きなかったMeta
やはり個人的には昨年「メタバース」という言葉のブームに火をつけたMeta(旧Facebook)の動きには注目したいところです。
特に大々的に「東京ゲームショウ」にブースを展開していたのは印象的でした。東京ゲームショウにVRゲームのブースが出展されていたことはたびたびありましたが、あそこまで大きなブースでVRゲームを前面に押し出したのは初めてでしょう。しかも、それが東京ゲームショウ初出展のMetaなのですから印象に残るというものです。
タイミングによっては150分待ち以上の行列も発生しており、VRヘッドセットというと機材が高価だったり、大きかったり、物理的に広いスペースが必要だったり……と、まだまだハードルは低くはないですが、興味のある方が決して少なくないのではと感じました。
また、あのMetaが日本のゲームショウに巨大なブースを出してアピールしていたことで、日本市場を強く意識していることを悟らせてくれた出来事でもありました。
そして、10月にはハイエンドモデルの「Meta Quest Pro」が発売されたのもインパクトの大きな出来事でしたね。MetaのVR/AR開発者向け年次カンファレンス「Meta Connect 2022」の基調講演で正式発表され、その場で予約がスタートするという販売戦略もまた印象的でした。
「Meta Quest Pro」は、メタバース住人にも愛用者が多い「Meta Quest 2」の後継機ではなく、あくまでも高価格帯のハイエンドデバイスという位置づけ。価格も22万6,800円と「Pro」の名に恥じない価格帯でした。いま私たちが過ごしているメタバース空間に飛び込むためには少々オーバースペックと感じますが、「将来的にはビジネス用途で使用され、ノートパソコンに代わるデバイスになる」とMetaは話しています。そういった進化も楽しみですね。
また、2023年には新型のVRヘッドセットを発売予定とも言われています。こちらは「Meta Quest 2」の後継機になるデバイスなのでしょうか? あれこれ妄想は膨らみますが、これからの情報公開に期待ですね。
一方でネガティブなニュースもありました。1つがMetaのメタバース部門が大赤字ということです。まだ先行投資のフェーズで、今すぐの黒字を目指しているわけではないと思いますが、「赤字」という言葉はメディアや株主向けにはポジティブな印象ではないですよね。Metaの時価総額も大きく減少し、メタバースに懐疑的な声も挙がっています。
またもう1つ、2013年に「Oculus VR」のCTOに就任し、同社が買収された後もMetaでVR技術の開発に携わってきたジョン・カーマック氏が、12月にMetaを退職したこともネガティブな印象があるニュースでした。
ですが、私を含め、正直いまメタバースで生活している住人たちは、Metaの衰退をあまり気にしていないというのが実際のところです。仮にMetaがなくなるようなことがあったとしても、メタバースで生きる人々にとって大きな影響はないでしょう。そもそもMetaが展開しているメタバース「Horizon Worlds」を使っている住人はまだまだ少ないですし、万が一の場合は別のサービスに乗り換えればよいだけだからです。
であれば、メタバース住人の関心はどこにあるのかというと、強いて言えば、無事に「Meta Quest 2」の後継機が出てくれれば……というくらいでしょうか。
東京ゲームショウに初出展したクラスター。メタバース空間上にも同じブースを展開
続いて、またも東京ゲームショウの話題になりますが、同イベントに初出展したのが、日本発のメタバースサービス「cluster」を展開するクラスターです。メタバース関連のサービスが大きなブースを使って東京ゲームショウに出展するのは、それだけでかなりのインパクトがありました。
また、ブースの場所も会場の入口のそばだった上、ブース全体が目立つ赤で彩られていたので、東京ゲームショウを訪れたゲームファンやメディアに大きなインパクトを与えたのは間違いないでしょう。東京ゲームショウのリアル会場だけでなく、「cluster」のメタバース空間上にもブースをそのまま再現していたのもインパクトがありましたね。
リアル会場では、タカラトミーとコラボレーションした「メタバース 黒ひげ危機一発」の記者発表会なども行なわれ、発表会にはブースに入りきれないほどのメディアが取材に訪れていました。東京ゲームショウの取材をしていた私も「いよいよメタバースに関する注目度がここまで高まっているんだなー」と思ったのを覚えています。
弊誌で行なったクラスターの代表取締役CEO・加藤直人氏へのインタビューでは、東京ゲームショウに出展した目的について「ゲーム業界の人たちにメタバースの現状や、ゲームとはレイヤーが違うものだと知ってもらいたい。『メタバースってこういうことをやってるんだ!』っというのを知ってもらおう」と語っていました。その目的は達成されたのではないでしょうか。
メタバース企業が東京ゲームショウのような華々しい場所に出展するというのは、記憶にも記録にも残る出来事だったと思います。しかもただ出展するだけでなく、メディアやゲーマーから注目を集めたのは、時代の変化のようなものを感じましたね。
VRChatでは総来場者数100万人を超えたあのVRイベントが! NeosVRではクリエイターによる大きなお祭りも開催
メタバース空間「VRChat」では、HIKKYが主催するVRイベント「バーチャルマーケット」が今年も夏・冬の2回にわたって開催されました。
「バーチャルマーケット」は、2018年から不定期に開催されているVRイベントで、直近に開催された「バーチャルマーケット2022 Winter」で9回目。総来場者数は100万人を超えています。日本を代表する有名企業も出展しており、「バーチャルマーケット2022 Winter」ではJR東海、ヤマハ、三菱UFJモルガン・スタンレー、大丸松坂屋百貨店、BEAMSなどが出展していました。
私も遊びに行ってきましたが、企業ブースはそれぞれ趣向を凝らした展示ブースばかりでとても楽しかったです。
一方的に展示を見るのではなく「体験」できるブースが多く、友達と一緒にワイワイ遊ぶことができました。メタバースにブースを出展して自社をアピールするというのは、まだまだメジャーな宣伝方法ではありませんが、新しい宣伝手法としての可能性を改めて感じました。また、一般から応募された各サークルの出展物もハイクオリティかつユニークなモノが多く、買い物やお試しだけでなくシンプルに楽しめる空間でした。
ちなみに2023年の夏は、メタバース空間で行なわれる「バーチャルマーケット」と、リアル空間で行なわれる「リアルバーチャルマーケット」が同時に開催されることが発表されています。こちらの展開も気になるところですね。
展示イベントといえば、同じくメタバース空間である「NeosVR」でも7月29日から8月31日の会期で、クリエイターによる巨大なお祭り「NeosFesta4」が開催されました。
「NeosFesta4」は「未来のクリエイターフェスティバル」をテーマに開催されたVRイベントです。「創作」から「展示」までをすべてVRメタバース上で完結させられる最先端のクリエイターフェスティバルで、今回で4回目の開催になります。出展期間中、多くのユーザーがメタバース空間上でさまざまな制作物をクリエイトしてその場で入稿できる、というまさに未来のお祭りを楽しむ人たちで非常に賑わっていました。
また、こちらにも企業ブースが用意されており、VRヘッドセット「VIVE」でお馴染みのHTCや、ハッピーハッキングキーボードのPFUといった企業が出展。Twitterキャンペーンなども開催され、メタバース空間の中だけにとどまらない盛り上がりを見せました。
まだまだエンタメ的な使われ方が多いメタバースですが、これらの例を見るとさまざまなな可能性を秘めているなと改めて感じました。
ほかにも書き切れないほど多くのトピックスがありました。昨年がMetaの社名変更から始まったメタバース元年ならば、今年は本当にメタバースが普及するための地固めの一歩となった年ではないでしょうか。皆さんは2022年が「メタバース」にとってどんな1年になったと思いますか。
それでは今年の連載記事はここまでになります。来年も本連載をどうぞよろしくお願いいたします。みなさまよいお年を!
著者プロフィール:でんこ
バーチャルに活動の場を移したゲームライター。得意分野はビデオゲーム全般だが、最近はメタバースへの関心が強い。
ライターとして様々なメディアで執筆する一方、NPO法人バーチャルライツ公認の第0期VR文化アンバサダーでもあり、メタバース上の活動やメディアでの情報発信を通じてVR文化の魅力を普及させるべく活動中。
・著者Webサイト:https://note.com/denpa_is_crazy/