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カラーE Ink採用の「Kindle Colorsoft」と同じ7型カラー「BOOX GoColor7Gen2」を比較

左が「Kindle Colorsoft」、右が「BOOX GoColor7Gen2」。どちらも7型で、カラーE Inkを採用している

 「Kindle」が日本に上陸してから今年で13年目となるが、その間、専用端末である「Kindle」を定期的に買い替えつつ、現在に至っている人も少なくないだろう。そうした人にとって現在の興味の的は、今春から国内に投入され始めたカラーE Ink採用の「Kindle」ではないだろうか。

 従来のE Inkはモノクロだったため、カラーページの表示に向かないほか、ライブラリやストアにおけるサムネイル表示でも、目的の本を非常に見つけづらかった。現行のカラーE Inkは液晶のような鮮やかな発色は望めないが、それでもこうした見やすさはモノクロとは段違いで、モノクロE Inkの「Kindle」からの買い替えを検討している人も多いはずだ。

 一方で、現在は汎用のAndroid端末でも、カラーE Inkを搭載したモデルが登場している。その中でも、家電量販店でも取り扱われるなど知名度の高い「BOOX」は、早い時期からカラーE Inkモデルを投入しており、現行機種でも複数をラインナップしている。必ずしも純正の「Kindle」にこだわらなくてもいいというわけだ。

 今回は、この「Kindle」のカラーE Inkモデル「Kindle Colorsoft」と、BOOXのカラーE Ink端末の中で画面サイズが近い「BOOX GoColor7Gen2」の2製品をピックアップし、それぞれのメリットとデメリットをチェックしていく。

 なお画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。またテキストは夏目漱石著『坊っちゃん』を、雑誌は『DOS/V POWER REPORT』の最終号を、サンプルとして使用している。

電子書籍専用の7型カラー「Kindle Colorsoft」

 まずはざっと両製品のアウトラインを見ていこう。

 「Kindle Colorsoft」は、外見は従来の「Kindle Paperwhite」とまったく同一だが、画面にカラーE Inkを採用したモデルだ。海外では2024年に発売されたが、日本での発売はややずれ込み、2025年に入ってからとなっている。

 画面サイズは7型、解像度は、モノクロが300ppi、カラーが150ppiと、カラーがやや低い仕様となっている。これは採用しているカラーE Inkパネル「Kaleido 3」の仕様によるものだ。ページめくりボタンなどは搭載せず、操作はタッチもしくはスワイプで行う。

 重量は215gと、7型としては軽量。防水機能を搭載しているほか、フロントライトは寒色と暖色の両方に対応する。もっとも暖色はカラーバランスを崩してしまうので、基本的に使わないほうがよいだろう。ちなみに明るさの自動調節機能は非搭載だ。

 ストレージは16GBだが、これを32GBへと増量し、ワイヤレス充電機能を追加した上位モデル「シグニチャーエディション」もラインナップされており、こちらは明るさの自動調節機能にも対応する。価格は5,000円アップの44,980円となっている。

外見は従来の「Kindle Paperwhite」と変わらないがカラーE Inkを採用。縦向きでの利用を前提としたデザイン
背面。Amazonロゴには反射しやすい塗料が塗られており、一見するとカラーのように見える
ボタンやポート類は底面に集中している。電子書籍専用端末ということでスピーカーや音量ボタンは非搭載
テキストを表示したところ。紙の本に近いアスペクト比4:3で読みやすい
コミック(カラー)を表示したところ。カラーE Inkならではの低い彩度だが、色合いはナチュラルでクセは弱め

ページめくりボタンを備えた7型Android端末「BOOX GoColor7Gen2」

 続いて「BOOX GoColor7Gen2」について見ていこう。こちらもベースモデルである「BOOX Go7」と外観は共通だが、カラーE Inkを採用しており、カラーでの表示が行える。

 画面サイズは7型。前述の「Kindle Colorsoft」と同じくカラーE Inkパネル「Kaleido 3」を採用することから、モノクロ300ppi、カラー150ppiという解像度は共通している。一方で本製品はページめくりボタンを搭載しており、タッチやスワイプ以外に物理ボタンでのページめくりも行える。手袋をしていてタッチが反応しない場合や、指先にケガをしているような場合に便利だ。

 OSにAndroidを採用することから、Google Playストアから任意の電子書籍アプリをインストールして利用できる。そのため「Kindle」に限らずさまざまな電子書籍を楽しめるのが大きな利点だ。ただし楽天Koboなど、相性が悪いアプリが一部あることには留意したい。

 重量は195gと大台を割っており、軽さはお墨付き。フロントライトは寒色と暖色の両方に対応するのは「Kindle」と同様だが、こちらは防水機能は非対応。一方で別売のスタイラスに対応したり、マイクやスピーカーを搭載しているなど、電子書籍ユースにとどまらない、汎用的なAndroid端末としての機能も豊富だ。

外見は「BOOX Go7」と共通で、画面横にページめくりボタンを搭載。ボタンが右側に来る状態での利用も可能
背面は凹凸のある加工が施されており滑りにくく、また手の脂も目立ちにくい
ページめくりボタンのある隣の面にはスピーカーやメモリカードスロット、ポートなどが配置されている。このほか側面には電源ボタンがある
テキストを表示したところ。こちらも紙の本に近いアスペクト比4:3だ
コミック(カラー)を表示したところ。「Kindle Colorsoft」と同じパネルだが、こちらはデフォルトではやや派手めな色合い
Amazonで購入

カラーE Inkの表現性能に違いはある?

 続いて電子書籍ユースにおける表示性能について、両者を比較しながら見ていこう。両者ともに、現在市場で出回っている中でもっともポピュラーなカラーE Inkパネル「Kaleido 3」を採用しており、画面サイズは同じ7型、解像度も同様なので、スペックだけを比べるならば同様ということになる。

 ただしBOOXは利用にあたってアプリごとの最適化設定が必須で、使い始めるにあたって手間がかかるほか、調整可能なパラメーターが多すぎることが災いして、色合いやリフレッシュの設定など、どれがベターな設定なのかわかりづらい面はある。よく言えば自由度が高いのだが、必ずしもカユいところに手が届くわけではないのが難しい。

 一方の「Kindle」は、あらかじめKindleストア向けに最適化が施されているので手間はかからない。設定はデフォルトのまま変更できず、色のスタイルも[標準]、[ビビッド]の2択のみだが、かといって不自由さは感じない。最大公約数的な設定だが、その最大公約数が感覚的にズレているわけではない点は評価できる。

デフォルト状態での比較。左が「Kindle Colorsoft」、右が「BOOX GoColor7Gen2」(以下同じ)。BOOXはこの写真ではやや緑がかっているが、実物で見るとそれほど違いはない
BOOXはアプリごとにリフレッシュモードやカラーなどの最適化設定が必要となるため、どうしても手間がかかる
色補正のオプション。このように項目は豊富なのだが、必ずしもベストな解を見つけられるわけではないのが難しい
左がBOOXでの画質優先、右がBOOXでのページめくり時のスムーズさ優先。画質ありきで調整すると、挙動面が実用的でなくなる場合があり、どこで折り合いをつけるかが悩ましい
一方のKindleは、色関連の設定は実質的に[標準]、[ビビッド]の2択のみ
もうひとつ[明るさ]、[色の暖かさ]も調整可能だが、これはフロントライトを調整するだけで、カラーE Inkそのものを調整するわけではない

 ただしカラーE Ink固有の、液晶などに比べて彩度が低く、またページめくり時に残像が残りやすいという特性は両者ともにあるので、それが合わない人には根本的にニーズに合致しないだろう。このあたり、モノクロE Inkの利用経験があれば感覚的に理解できるだろうが、カラー液晶からいきなりこのカラーE Inkに乗り換えると、違和感は大きいはずだ。

 またモノクロとの比較という点では、解像度は同じ300ppiながら、カラーのレイヤーが1層乗っているためか、若干ピンぼけしたかのような画質で、全体的にざらつきがあるほか、ページめくり時のレスポンスもワンテンポ遅い。BOOXについては画面がやや暗めなのも気になるところだ。

コミックでの比較。BOOXはかなり原色に寄っていることがよくわかる
左から、Kindle、BOOX(画質優先)、BOOX(ページめくり時のスムーズさ優先)。BOOXも画質優先であれば表現力は高いのだが、スムーズさを優先すると階調が減り違和感が増す
左から、Kindle、BOOX(画質優先)、BOOX(ページめくり時のスムーズさ優先)。BOOXは色を分解して表示する傾向があり、色味が繊細なページではKindleとの差が顕著に出やすい。一方のKindleは彩度の低さが気になることも
左から、Kindle、BOOX(画質優先)、BOOX(ページめくり時のスムーズさ優先)。BOOXは黒ベタが潰れやすい傾向があり、スムーズさ優先ではそれが顕著になる。明るくすることは可能だが、暗くない部分を含む全体が明るくなるので実用的ではない
こちらは白黒ページの比較。左から、Kindle、BOOX(画質優先)、BOOX(ページめくり時のスムーズさ優先)。カラーよりも高いクオリティで表示できるが、モノクロE Inkでの表示と比べると画面のざらつきが目立つ
白黒のテキストの比較。左から、Kindle、BOOX(画質優先)、BOOX(ページめくり時のスムーズさ優先)。スムーズさ優先では細い線が出づらくなっている。またコミックほどではないがやはり一定のざらつきがある

使い勝手や機能についてはどう違う?

 その他の使い勝手についても見ていこう。前述のように画面サイズはどちらも7型と共通なのだが、BOOXはページめくりボタンが画面横に搭載されているためボディの幅が広く、わしづかみにするのは難しい。

 とはいえボディの端を親指と人差し指で挟むような持ち方をする分にはそれほど影響はない。むしろBOOXは約195gと、Kindleの215gよりも軽量なことから、長時間手に持っても負担はない。寝転がって使うなど姿勢が不安定な場合は、BOOXのほうが有利だ。

背面の比較。Kindle(左)は縦長、BOOX(右)はページめくりボタンを画面横に備える関係で正方形に近いサイズだ
厚みの比較。Kindle(左)は7.8mm、BOOX(右)は6.4mmということでBOOXのほうがスリムだ。部位による厚みの違いもほとんどない

 利用できる電子書籍ストアは、Kindleは完全なKindleストア専用であるのに対して、BOOXは相性問題のある一部アプリを除き、実質どのような電子書籍ストアでも利用できる。ただしアプリごとの最適化設定が必要なのは先に述べたとおり。また動作は可能なもののページめくりボタンが使えないアプリが一部ある。

 容量はKindleが16GBなのに対してBOOXは64GBと多く、さらにメモリカードで容量を追加できる。BOOXはAndroidのシステムで一定の容量を使うので差し引く必要はあるが、とはいえトータルではBOOXのほうが余裕を持って使える。

 実売価格は、Kindleの39,980円(大容量かつワイヤレス充電対応のシグニチャーエディションは44,980円)に対して、BOOXは44,800円と、ほぼ同等。ただし前述のように、汎用性という観点でまったく異なる製品なので、単純に高いか安いかという観点での比較は難しい。

Kindleはセール情報もチェックすべし

 以上さまざまな観点で比較したが、この両製品のどちらを選ぶかとなった場合、まずチェックすべきなのは表現力や性能ではなく、利用したいストアがKindleストアだけなのか、それ以外のストアも使うことがあるのかどうかだ。Kindleストアだけであれば、最適化済みで価格も安いKindle一択だし、Kindle以外の電子書籍ストアを利用したい場合はBOOX一択ということになる。

 ある意味で身も蓋もない選び方だが、そもそも利用したいストアが使えないようであれば意味がないので、選ぶ順序はこうならざるを得ない。まずはこれで製品を決めたあと、表現力や性能に納得がいくかをチェックするとよい。幸い両製品とも致命的な問題点はないので、この手順に則って判断すれば、根本的に使えない、動作しないといった類のミスはないだろう。

 なお、発売直後はなかなか値引きの機会がなかった「Kindle Colorsoft」は、ここに来てセールによる値引きがちょくちょく行われるようになっている。BOOXに比べるともともと価格面ではメリットのある「Kindle Colorsoft」だが、セールを併用するとなお入手しやすくなるので、セール情報をこまめにチェックすることをお勧めする。