富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

原武史『象徴天皇の実像「昭和天皇拝謁記」を読む』(岩波新書)

乙巳年二月十八日。未明に通り雨(2mm)のち晴。強風(最大秒速14.1m)。代々木系病院に二か月に一度の定期診察。大相撲九日目。高安が琴桜に勝ち大ノ里と並び一敗守り横綱豊昇龍は一山本に負け四敗。昨晩は蕁麻疹の薬(レボセリジン)を半錠にして服用したら今日は蕁麻疹の痒みもなく眠気にも襲はれず。原武史『象徴天皇の実像「昭和天皇拝謁記」を読む』(岩波新書)読む。2019年にNHKが戦後の初代宮内庁長官となつた田島道治の拝謁記の存在を報道。

 ETV特集(NHK)昭和天皇側近の新史料から戦争の時代を考える

これまでも天皇の周囲の人々の記述はいくつかあつて入江相政日記など日記文学の域で興味深いものだけれど、この田島記録がどこまで「これまで公開されてことなかつた昭和天皇の生の声」なのか。なにせ録音でもなく部類としては昭和天皇のコメントを宮内庁長官が書き綴つた二次資料となる。

拝謁記1 昭和24年2月~25年9月 (昭和天皇拝謁記 初代宮内庁長官田島道治の記録 第一巻)

これが岩波書店から刊行され歴史学者らによる、この拝謁記の分析も上梓された(「昭和天皇拝謁記」を読む - 象徴天皇制への道)。これは今年の一月にインフルエンザ罹患のときに読んでゐた(富柏村日剩)。原武史による「拝謁記を読む」は上述の「読む」よりもより昭和天皇の肉声が生々しく取り上げられてゐる。共産主義に影響された学生の左傾。朝鮮学校学校の存在。新憲法で9条で戦争放棄することと引き換への象徴天皇制。主権回復と再軍備。天皇自身が戦争を止めることができなかったのも、すべては「時勢」「勢」だつたゆゑ。過去の過ちに対する反省のなさ。宮中での皇太后(大正天皇妃節子)と天皇の確執。それまでを米国側が掌握してゐたと考へられること。吉田茂。天皇は再軍備にも消極的で自主憲法制定にもけして前向きではない吉田をけして好まぬが鳩山一郎や岸信介に比べれば老体吉田に任せるしかない。

今日吉田総理が来て、朝鮮(戦争)の問題は第三世界戦争にならぬ限り、またアメリカがまずいことをしない限り、日本にとって面白い、良い影響がありますと言っていた。第一は、全面講話などと言う議論が特に都合良くなくなつたことが一つ。今一つは企業面が良くなり、会社の失業者の減少になるのではとも。

まさにこれは適切な分析であつた。皇太子の大学進学については東京大学は総長南原繁を昭和天皇は好まず学習院は学習院で清水幾太郎のやうな左翼学者(当時)がゐることで皇太子の左傾を心配する。昭和の戦争での敗北の一つの原因として天照大神に戦勝を祈願したこと(アマテラスは平和の神)。それの神罰としての敗戦。この敗戦について祀る側としての祖先には愧じるが、祀られる、奉仕される側の下々の民草に対しての天皇としての責任は感じない。天皇の靖国神社参拝は反米思想に利用されるのではないかといふ危惧。この天皇が危惧する反米思想は左翼ではなく対米戦争で負けた報復をいつか果たしたいとする右翼の反米思想。天皇にとっての〈國體〉は「君民一体」のかたち。二重橋へのお出ましでも国体(国民運動大会)でも良い。民草が天皇を讃へ、それによつて形成されるこの国のかたち。それは神武天皇以来の万世一系の天皇による国の統率(そんなフィクション)ではない。そんな非科学的な虚史など到底最初から信用せぬ。むしろ儒教的な天子。……このような昭和天皇の「実像」は興味深くもあるが田島自身が銀行家上がりで、それまで侍従職などの所謂「オク」の力が強い宮中にあつて新設の宮内庁で長官官房に権限を集中させた人物。その御仁の拝謁記を原武史といふ特異なる天皇の物語のストーリーテラーによる読み下しであることは当然ながら意識して読まないといけない。

象徴天皇の実像 「昭和天皇拝謁記」を読む (岩波新書)

大相撲大阪場所九日目。高安は琴櫻を本日もまるで合気道のやうに相手の力を利用しての下手出し投げで破り勝ち越し。勝ち越しは大ノ里と高安で明日十日目はこの一敗同士の取り組み楽しみ。横綱(豊昇龍)は今日は一山本(前頭4枚目で初の横綱戦)に敗れ四敗目。大関のときよりも取り口がひどい。相撲協会も横綱審議も横綱昇進といふ決定が間違つてゐたのではないか。照ノ富士引退は致し方ないことで横綱に本当に値する力士がゐないのであれば敢へて「横綱不在」でも良かつたはず。あくまで大関が筆頭で横綱は名誉職のやうなもの。

枝元なほみ「蒸し塩豚」

大学生で仙台のやうだが街並みは至つて香港の密集した市街。ずつとサボってばかりで新年度なのか?夏休み明けで九月のやうだが心機一転きちんと受講して単位を取らうとするのだが多質の市街で両脚の筋肉が思ふやうに動かず痙攣したりでなか/\大学に辿り着けず混沌とした市街で経路を失ひ街市に迷ひ込み大学に辿りつく寸前で今度は受講しなければいけない講義の教室がわからない。そこで目が覚めた。何だか二日も続けて焦燥感たつぷりの夢。

乙巳年二月十七日。摂氏4.8/8.5度。雨(18mm)。昨晩は蕁麻疹の処方薬(レボセチリジン)を半錠(2.5mg)にして服用したら今日は蕁麻疹の痒みもなく起きてから睡魔に襲はれることもなく一日を過ごせた。

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家人が枝元なほみレシピの応用でかなりあっさりとした「蒸し塩豚」を拵へてくれた。

大相撲大阪場所中日八日目。横綱豊昇龍が高安に敗れ三敗。高安は一敗を守る。高安にカチ上げられて体が起こされた横綱はすぐに振り解くも往なされ高安に乗じて出られて次は手操るも呼び込まれて土俵下まで吹っ飛ばされる醜態。高安の冷静沈着な攻めといふか「守りは最大の攻撃」を絵に描いたやうな取り口まことに見事。

常磐線上野駅発着特急の終焉

芝居で、古典を題材にしたのか、それでも舞台にあがる役者はみんな装ひもカジュアルで、その舞台の4人だかの主要な役の一人がアタシ。浅草の劇場、脚本は高名な大先生なのだけれど遅筆でなか/\本が出来上がらず本番直前の中入りでもまだ。そこで同じ舞台に立つ中村京蔵さんに「もう待つてゝも仕様がないから一寸お茶でも」誘われ劇場の茶屋へ。焼き団子が有名な店だが団子でなか/\焼き上がらない。もう脚本も間に合はないのか、京蔵さんは台詞がもう入つてゐるからよいけれどアタシは台詞を覚えられるまゝ舞台に上がるのか、と茶屋で焦つてゐるところで目が覚めた。夢といへば『週刊読書人』で横尾忠則日記で夢の話がいつも興味深い。

明け方目が覚めて、ウトウトした頃、〈最晩年は海岸の近くに住んで、キリコ、ピカソ、デュシャン、ピカビア、マンレイの絵の模写でも描いて暮らすか〉といふ夢を見た。(三月十四日号)

乙巳年二月十六日。1.9/11.5度。曇。

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JR東日本の春のダイヤ改正で上野発着の常磐線特急がなくなつた。水戸から始発の特急(ときわ54号)が上野終着で1月20日に両国に初場所を見に行くときに乗つたのが最後になったか。

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ところでAIの特急ひたちに関する説明が意味不明だつた。

 本日午後はZoomでこれを拝聴。茨城大学の掛貝先生ご参加倉地先生の「外国人住民支援のための財源保障」についてはとても勉強になつた。

▼落語で五月に東京で三三と一之輔の二人会あり「ぴあ」と「イープラス」で先行予約あり。両方申し込んで一つ当たれば良き、二つ当たれば誰か誘へば良いかと思つたらイープラスだけ当選。この一つの公演を複数の所謂プレイガイドが扱ふ仕組みがどうなつてゐるのかわからないのだけれど。


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Nesselsucht

乙巳年二月十五日。摂氏6.6/19.1度。晴。高田先生のラヂオ(LFのビバリー)で毎回軽妙な先生のトークで神田川を大川と言ひ間違へたやうな。蕁麻疹Nesselsuchtに処方薬(レボセチリジン、ザイザル錠の後発薬)を服用するが眠気がひどく今週は月曜に1錠(5mg)服用で翌朝から蕁麻疹の痒みはないが眠気がひどい。それから4日目、眠気が失せるに従ひ反比例に蕁麻疹の痒みが現れ気になつて本もろくに読めず。なのでぼんやりと音楽を聴いてゐる時間が多いかしら。Stingの“Fields of Gold”が流れてきたら聴いてゐて涙腺が緩んでしまつた。

本のボウズとドワンゴ知事

乙巳年二月十四日。摂氏9.0/20.0度。晴。四月末から五月の陽気。

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西野春雄『世阿弥』(ミネルヴァ書房)購入したら書籍の間に挟んであるスリップのデザインが気になつた。このスリップは書店で通称「ボウズ」と呼ばれるのはスリップの、2ッ折になつたところの切り込みが半円形で坊主の頭🧑‍🦲のやうだから。

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本が売れるとレヂでこのスリップをまとめて集計して書店印を押して、それが補充の注文や出版社からの奨励金になつたりする。

通称「スリップ」またの名を「ボウズ」その実態は「補充注文カード」

書籍の販売流通にとつてとても大切なスリップなのだけれどアタシの場合は香港で書籍をまとめて当初は日販だつたか東販の香港事務所、それからあとは紀伊國屋とかに注文すると、このボウズが抜き取られまいまゝ届けられる。そのあとAmazonとかでも同様。バーコードとかも普及して大手の通販などでは、もうこのボウズはなくとも流通管理ができる時代に。

遺産になった道具達 その5 ボウズをあけます|渡邉製本株式会社

これは一瞬「坊主上げます」だと思つたら「坊主開けます」でスリップにボウズの半円形の切り込みをカットする刃物部分だつた。さういふわけで世の中ではだん/\必要価値の減つたボウズなのだけれどアタシは自分の読書記録としてノートに貼つたりしてゐる。さうさうアタシが書きたかつたことは今日入手したミネルヴァ書房の『世阿弥』のボウズのデザインだつた。本来のボウズはこんな感じ。

書店の売上カードと取次への補充注文カード部分にわかれてゐて情報量が多い。必要なデータがとてもよくまとまつてゐる。美しいほど。それがミネルヴァ書房のボウズはシンプル。

もはや書店の売上カードだけの意味合ひなのかしら。しかも横書きである。

「茨城県知事・大井川和彦の下で職員13人が自殺した」115人が心を病み休職…“これは第2の兵庫・斎藤知事問題だ” | 週刊文春

今日発売の『週刊文春』茨城県庁のコンビニや地元大手書店(川又書店県庁店)では週刊文春は平積みかしら。水戸一高から東大法学部で通産省、マイクロソフト→ドワンゴで茨城県知事に就任で渾名はドワンゴ。千葉の幕張に自宅があつて公用車で水戸から幕張に移動してゐることが発覚して叱られた。かなり効率的な取り組みだとか改革が続くが、それについてこれない、ついてこない職員に対する冷たさも強烈なのでせう。ワンマン知事のパワハラが続けばもはや県庁に殉職県職員墓地でも必要な時代か。

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君主を擁したアナーキズム

乙巳年二月十三日。摂氏8.2/16.2度。曇のち雨(11.5mm)。二週間程前から蕁麻疹に悩まされる。先週月曜にかゝりつけの医者からの処方薬は5mgほどの錠剤(エボセリジジン)で5mgほどなのだけれど寝る前に1錠でも呑めば(クスリにはかなりあれこれ免疫のあるアタシでも)翌日の昼間も眠いほどで逆に飲まないと身体が痒くて/\。そんな症状なので何が困るつて「本が読めない」。眠ければ眠くて本が読めないが処方薬服用せねば/\で全身のあちこちが痒くて本が読めない。困つたもの。そんななかで少しだけ読んだのがこちら。『新潮』2025年2月号 は特集が三島由紀夫で「生誕百年よみがえる三島由紀夫」。そのなかで井上隆史「『金閣寺』担当編集者の葛藤」が面白かつた。三島由紀夫担当で何人かの編集者が名前を残すなか新潮社で『金閣寺』など担当した三島よりも1つ年下の編集者、菅原國隆は三島にかなり親しくされた関係なのにあまり着目もされてをらず。三島から菅原に送られた書状など丹念に読み解き、また偶然に新潮社だからで出会つただけではない二人の因縁を解き解ぐしてみせる。

新潮2025年2月号

この特集でもう一つとても興味深かつたのが島田雅彦の「文化の不満をどう解消するのか?」。国のかたちの変革を期した三島由紀夫にとつて、どんな政体が理想だと考へるか?と雅彦の問ひ。

アナーキズムを徹底すれば、君主は不要になるはずですが、いざという時の保険としての君主を擁したアナーキズムを想定しているのであれば、私はあなたの立場に与します。

雅彦は、こんな政体実現の可能性が一番高い国が日本だとする。三島こそ天皇を宗主国たる米国や、その我が国でのフロントマンである政官財門閥から解放し「日本の自主独立の象徴」として、また「文化の不満」を解消する超自我として位置づけたかつたのではないか?と。それは過度の期待といふ気もするが世界の大方の予想とりも早い変転があつて、あと20年もすれば三島が理想とする天皇像や政体が実現するのかもしれないとする。勿論そんな想像を実現するには米国の日本に対する間接統治の解消が必要なのだけれど……といふ雅彦の指摘を読みながら日米地位協定のそれの見直しなんて絶対に無理と思つてゐたがトランプの出現でかなりその「戦後」の状況にも変化はあるのかもしれない。

(大相撲)大賀君が引退

東日本大震災から14年。乙巳年二月十二日。摂氏2.3/14.4度。曇。早晩に小雨。昨日、アラヂンのストーブをヴェランダで掃除してゐたらこの春初めてホトトギスの幼鳥のケキョ、ケキョとまだ下手な鳴き声も聞こえたがストーブはもう少しだけ必要かなと思ひストーブの芯の繰り出しをしたところ上手くいかない。リセットして芯を外してギアと改めて噛み合わせてみてもダメ。2022年冬に使ひ始めたストーブなので、もう4度目の冬になつてゐた。ネット上の情報提供を見ると平均的な使用で3シーズンが芯交換の目安だとあり。早速アマゾンでアラジンのブルーフレームストーブの芯を注文。それが今日届いたので芯を交換。現用品と新品を比べると芯の減りは1cmほどで、まだ芯の残りがあるやうに見えるが芯の繰り出しは2、3回が目安だといふのにも4回くらゐはしてゐるし交換の丁度良いタイミングのやう。


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芯は正常の高さよりも少し高いくらいの余裕あり調整。また美しいブルーフレームの炎になつてくれた。


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それにしてもアラヂンの箱に描かれたアラヂンのランプから現れる魔神がベトナムの傘をかぶつてゐるのでした。

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これはアタシにとつては悲報。かなり応援してきた福島出身の力士。アタシの日記で最初に丹治(当時)の名前が出てくるのは2021年の九月場所のとき。丹治君は西三段目51枚目でアタシは当時の贔屓として丹治君と大辻君(今場所は東十両14枚目)を挙げてゐる(こちら)。丹治君は4つ下の弟も同じ荒汐部屋に入門して丹治の名前を譲り、自らは大賀を名乗り(本名が丹治大賀)幕下32枚目まで上がつたのだが。母親はロシアの新体操の選手で彼も幼い頃には新体操をしてゐて、彼が小学生のときの新体操の映像もあり。

今場所は三段目51枚目で初日から休場での引退決定(奇しくも2021年9月と三段目で同じ番付)。この番付で悶々とした日々が続くのもきびしい。まだ22歳。土俵をかへての人生の再スタートと割り切るのも一つの選択だらう。祝福。

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