捨てやすいソフトウェアを意識する— 仮説検証型開発で効率的にコードを管理する方法

ソフトウェア開発では、新しい機能を追加してみたけど「やっぱり要らなかった…」という経験はありませんか?不確実性が高い開発では、仮説検証を繰り返しながら進めることが重要です。

今回は、「捨てやすく作る」という考え方に注目し、効率的にコードを管理する方法が紹介されていたので、整理しておきます。これから、AIがコードを作成して、一段とコードの作成と削除のサイクルが早くなると想定しており、AI時代において、本考え方は重要であると考えます。

qiita.com

なぜ「捨てやすく作る」のが重要なのか?

仮説検証を繰り返していると、次のような状況がよく発生します:

  • 必要だと思って作った機能が、実は不要だった。
  • そのまま放置すると、コードが複雑になり保守が大変になる。

コードが増えすぎると、開発チームの認知負荷が高まり、コード品質が下がります。そのため、不要なコードを効率よく削除できる設計が大切です。

チームで「捨てやすく作る」方針を共有する

チーム全体で「捨てやすく作る」方針を共有しましょう。例えば:

  • 「捨てる勇気を持つ」
  • 「10分以内に機能を削除できる設計にする」

こうした方針を言語化することで、日常の開発でも「捨てやすく作る」ことが意識されるようになります。

効率的な設計:ディレクトリ構成を工夫しよう

「Package by Feature」構成を採用すると、不要な機能を簡単に削除できます。

❌ レイヤーごとの構成(Package by Layer)

/app  
├─ Http  
├─ Models  
└─ Services
  

特定の機能を削除するには、複数の場所からコードを探し出す必要があります。

✅ 機能ごとの構成(Package by Feature)

/app  
├─ Feature1  
│  ├─ Http  
│  ├─ Models  
│  └─ Services  
├─ Feature2  
│  ├─ Http  
│  ├─ Models  
│  └─ Services
  

利点:特定の機能を削除する際、ディレクトリごと削除するだけで済みます。

実践のコツ

  • 高凝集・低結合を意識する
    機能間の依存を最小限にし、削除しやすく設計する。
  • 仮説検証単位でディレクトリを細分化する
/app  
├─ Feature1  
│  ├─ Feature1-1  
│  │  ├─ Http  
│  │  ├─ Models  
│  │  └─ Services  
│  └─ Feature1-2  
│     ├─ Http  
│     ├─ Models  
│     └─ Services
  

具体例:ログイン機能の削除

例えば、ログイン機能が不要になったとき:
Package by Feature構成なら、Feature/Loginディレクトリを削除するだけ。

まとめ

  • 仮説検証型開発では、機能を「捨てやすく作る」ことが重要です。
  • Package by Feature構成でディレクトリを機能単位に整理しましょう。
  • チームで方針を共有し、常にコードをシンプルに保つ習慣を。

以上

【プロンプト】AIモデルの推論力向上:「忍耐を持った推論」の有効性とその実践方法

大規模言語モデル(LLM)は、近年の人工知能技術の中でも特に注目される存在です。しかし、こうしたモデルには、複雑な問題に対する推論が浅くなりがちという課題があります。本記事では、LLMの推論能力を効果的に向上させるための手法として、「忍耐を持った推論」を紹介します。

論文で紹介しているプロンプトは、以下のリンクを参照してください。なお、この内容を踏まえ考えたプロンプト例を最後に紹介します。

arxiv.org


1. LLMが抱える課題:簡潔さの弊害

LLMは多くの場合、ユーザーの好みに合わせて簡潔な回答を出力するよう調整されています。このため、詳細な推論を必要とする問題においては、解答が省略されがちです。これにより、特に数学や論理的推論を伴うタスクで、正確な答えにたどり着けないことが少なくありません。


2. 解決策:「忍耐を持った推論」の導入

この問題に対処するために提案されるのが、「忍耐を持った推論」です。具体的には、モデルがより詳細で丁寧な推論プロセスを採用するように訓練します。手法としては以下の通りです。

  1. 簡潔な解答を「負の例」として扱う。
  2. 詳細な解答を「正の例」として扱い、モデルが詳細な推論を好むように調整する。

具体例:簡潔な推論 vs 忍耐を持った推論

問題:「ジェレミーが3文字の単語でトリプルワードスコアを使い、30点を獲得しました。最初と最後の文字はそれぞれ1点です。中央の文字の元の点数はいくつですか?」

推論ステップ 簡潔な推論 忍耐を持った推論
理解 問題文を大まかに把握 問題の条件を一つずつ丁寧に確認
計算の分解 30 ÷ 3 = 10 トリプルスコアで30点なら、元は10点と確認
詳細な確認と結論 10 - 2 = 8 1点 + 1点 = 2点と確認し、中央は10 - 2 = 8点

このように、細かく分けて推論することで、誤りを減らし、正確性を高めることができます。


3. 効果の検証

この手法を適用し、数学問題データセット「GSM8k」での性能を検証したところ、モデルの正確性が最大2.1%向上することが確認されました。また、同時に「MATH」データセットでもわずかではありますが改善が見られました。

主な利点

  • 低コストで簡単に実践可能。
  • 高価なデータセットや大規模な訓練を必要としない。

留意点

  • 推論時間が増加しますが、正確性向上によりそのデメリットは相殺されます。

4. まとめと実践への提案

結論として、「忍耐を持った推論」を導入することで、大規模言語モデルの推論力を効果的に向上させることが可能です。詳細な推論を促すことで、複雑な問題にも正確に対応できるAIモデルが実現します。

行動指針:

  • AIモデルの運用やトレーニングにおいて、簡潔な解答よりも詳細な解答を重視する。
  • プロンプト設計時には「ステップごとに考える」といった明示的な指示を含める。

プロンプト例

AIモデルに「忍耐を持った推論」を促すためには、適切なプロンプトが欠かせません。ここでは、モデルに詳細な推論を行わせるための効果的なプロンプト例を紹介します。


1. ステップバイステップを明示するプロンプト

AIに複雑な問題を解かせるときは、推論を段階的に進めるよう指示しましょう。

例:
「次の問題を解いてください。
ステップごとに考え、各ステップに番号とタイトルをつけて説明してください。」


2. 詳細さを求めるプロンプト

モデルが簡潔すぎる解答をしないように、「初心者にも分かるように説明して」と指示します。

例:
「以下の問題を解いてください。初心者にも分かるように、すべてのステップを丁寧に説明し、簡単な操作に分解してください。」


3. エラーを防ぐプロンプト

推論のミスを減らすために、「各ステップで確認しながら進めてください」と指示するのも効果的です。

例:
「解答をステップごとに分けて考え、それぞれのステップが正しいか確認しながら進めてください。」


4. 推論の可視化を促すプロンプト

計算や論理的な問題では、途中の計算過程や考え方を「図や表で示す」ように指示すると効果的です。

例:
「解答の過程を図や表を使って分かりやすく示し、最後に結論をまとめてください。」

 

以上

(概要)生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方2024

生成AIの普及に伴い、日本企業がDXを推進するためには、経営層の積極的な関与と専門人材の育成、生成AIの理解・利活用、データ管理体制の整備が不可欠である。

経済産業省のレポートから、DX推進における具体的な職種、人材の役割、求められるスキルセット、そしてその育成方法について、生成AI時代における各人材類型と求められるスキルを整理しておく。

www.meti.go.jp

人材類型 役割 求められるスキル 具体的事例
ビジネスアーキテクト ビジネス戦略とIT戦略を統合し、全体のDXを設計・推進する。 - 戦略設計力
- 業務プロセス設計
- 生成AI理解
- コミュニケーション能力
製造業でのスマート工場導入、業務のAI活用戦略の設計
デザイナー UI/UXデザインを通じて、ユーザー体験を向上させる。 - デザイン思考
- UI/UXデザイン
- プロトタイピング
- 生成AIツール活用
ECサイトでのAIによるパーソナライズ提案、AI活用のデザイン制作
データサイエンティスト データを解析し、ビジネスの意思決定を支援する。 - データ分析・統計解析
- 機械学習・深層学習
- データ前処理
- ビジネス理解
AIを用いた需要予測、マーケティング施策の最適化
ソフトウェアエンジニア 生成AIを活用したシステム・アプリケーションを開発する。 - プログラミング
- AI API統合
- DevOps
- クラウド技術
チャットボットや自動化システムの開発、AI統合システムの構築
サイバーセキュリティ専門家 生成AI導入に伴うセキュリティリスク管理を担当する。 - リスク管理
- データ保護
- ガイドライン整備
- AIセキュリティ
AI活用における個人情報保護対策、セキュリティリスク監視

DX推進に共通して求められるスキル

スキルカテゴリ 内容
デジタルリテラシー - 生成AIの基本理解
- データ解析基礎
- 倫理・ガバナンスの知識
プロンプトエンジニアリング - 効果的なAI指示の設計
- クリティカルシンキング
課題設定・仮説検証 - 問題解決のための仮説構築・検証
- 業務改善のためのAI活用法
コミュニケーション力 - チームや経営層との円滑な意思疎通
- 部門間連携を進める能力

人材育成・リスキリング方法

育成方法 内容
オンライン学習プラットフォーム - Coursera、Udacity:AIやデータ解析の基礎から応用まで学習可能
企業内リスキリングプログラム - 生成AIワークショップ、DXブートキャンプの実施
OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング) - 実際のプロジェクトに参加し、生成AIの実践的なスキルを習得
官民連携プログラム - 経済産業省の「デジタルスキル標準」に基づいたリスキリング支援

 

以下、レポート内容の要約。

背景と現状

  • 生成AIの急速な普及: ChatGPTã‚„GPT-4、Copilot、Gemini、Claudeなどが登場し、産業界や教育分野での活用が進んでいる。動画生成や画像生成など多様な技術が発展中。
  • 日本の状況: 日本でも生成AIの市場規模は急拡大しており、2030年までに年平均47.2%成長が見込まれている。しかし、企業の導入は進んでいるものの、経営層の意識や業務への本格導入が遅れている。

利活用の3つの段階

  1. フェーズ1: 個人タスクの効率化(例:議事録作成、メールドラフト)。
  2. フェーズ2: 業務プロセス全体の効率化・高度化(例:保守オペレーションの自動化)。
  3. フェーズ3: ビジネスモデル変革・価値創造(例:顧客体験の改革、新サービス開発)。

課題と解決策

  1. 生成AIの理解不足:

    • 課題: 企業がAIの利活用計画でつまずく。AI導入が自己目的化することも。
    • 解決策: 目的志向でAIを業務に組み込む。リスクを許容し、間違っても良いタスクに適用する。
  2. 経営層の姿勢:

    • 課題: 経営層がリスクに消極的で、現場の導入が進まない。
    • 解決策: 経営層がビジョンを示し、変革推進人材を配置する。
  3. 人材育成とスキル:

    • 課題: AIによる業務代替で経験機会が失われる懸念。
    • 解決策: AIを活用した新しい育成方法を導入し、探求学習やリスキリングを強化。
  4. データの整備:

    • 課題: データ管理の不足がAI利活用の障害。
    • 解決策: 全社的なデータマネジメントの導入と「データの目利き人材」の育成。

DX推進に必要な人材とスキル

  1. 専門人材の役割:
    • ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティが、生成AIを活用するため高度なスキルが必要。
  2. 共通のスキル要件:
    • 問いを立てる力や仮説検証力、批判的思考、リーダーシップが重要。

まとめ

生成AIの普及に伴い、DX推進にはAIを効果的に活用するための経営層の関与、専門人材の育成、データ整備が不可欠です。業務効率化だけでなく、ビジネスモデルの変革と新しい価値創出を目指す必要があります。

以上

SBIホールディングスの事業戦略

SBIホールディングスの講演会で今後の事業戦略の説明あったので、テクノロジー×金融の観点から講演内容を整理しておく。

「SBIホールディングスは単なる日本企業ではなく、金融革命の担い手」であること。株式手数料ゼロ化はスタート地点にすぎず、老後資金形成・地方創生・海外連携・暗号資産インフラ構築といった多方面で革新的試みを推進中との説明。当社の事業戦略はすべては「顧客第一」「長期的価値創造」「グローバルスタンダードへの適応」「社会的使命達成」の4本柱でつながっている。

今後、SBIがさらに制度改革を主導し、地方銀行の地盤沈下を防ぎ、海外市場で新たな稼ぎ頭を育て、暗号資産・ブロックチェーン技術で世界的金融ハブを築けば、結果的に日本経済・投資家利益・国際競争力向上に大きく貢献するだろう。これはまさに「既存概念を壊し、新金融時代のインフラとなる」挑戦を本講演で示したと考えられる。

youtu.be

【SBIホールディングスとは】

SBIホールディングスは、日本発の総合金融グループです。1999年頃から、インターネット証券(SBI証券)で株式取引手数料の大幅値下げを進め、日本の個人投資家がネットで安く株を売買できる土壌を作り出しました。その後、銀行(SBI新生銀行やSBIネット銀行)、保険、資産運用、ベンチャー投資、暗号資産取引、地方銀行との資本・業務提携、海外事業展開など、金融・投資に関するほぼあらゆる分野に進出。伝統的な「対面型で高コスト」の日本の金融業界を「ネット×低コスト、顧客本位」で刷新しようとする姿勢で業界をリードしてきました。

つまり、SBIは「デジタル時代における新しい金融インフラ」を自ら作り、旧来型の金融慣習を打ち破り、投資家・顧客主導の金融革命を志す存在です。


【2024年上半期業績好調の背景】

2024年度上半期(4~9月)において、SBIホールディングスは過去最高の売上高・税引前利益などを達成しました。これは以下のような複合的要因によります。

  1. 事業ポートフォリオの多様化:
    証券・銀行・保険・資産運用・暗号資産・FX・地域金融再生支援など、多岐にわたる収益源を持っているため、一部が不調でも他が好調なら総合的な業績が伸びやすく、リスク分散が可能。

  2. 顧客基盤拡大:
    ネット証券やネット銀行の利便性向上、手数料ゼロ化戦略などで顧客を獲得し、顧客数が増えれば、そこから生まれる金融収益(利息や運用手数料、投資信託報酬など)も増加。

  3. 市場環境を巧みに活用:
    金融市場は金利変動、為替レート変動、株式市場の上昇・下落に左右されるが、SBIはトレーディングや仲介、資産運用などを通じ、市場のボラティリティ(変動幅)を収益化するノウハウを蓄積。特に超低金利環境からの正常化が進む中、銀行部門やFX部門に追い風が吹いている。

  4. 経営改革・M&A効果:
    SBI新生銀行の買収や、地方銀行との資本提携、海外企業への投資・合弁も徐々に成果を上げ、グループ全体の収益力底上げに貢献。


【SBI証券の「ゼロ手数料革命」:歴史的意義と影響】

株式取引手数料をゼロにする、つまり「無料化」は、日本の証券業界では大きな衝撃でした。

  • 背景:
    かつて日本株式取引手数料は高く、投資家に負担が大きかった。ネット証券登場後は値下げ競争が進み、SBIも安価な手数料で多くの個人投資家を取り込んできた。しかし、2023年9月についにオンライン株式売買手数料を0円に。
    これは、「買うとき・売るときに余計なコストがかからない」という、投資家にとって極めて有利な条件。

  • なぜできたのか?:
    手数料という「分かりやすい収益源」を捨てることは企業にとって勇気がいるが、SBIは代わりに以下の収益柱を確立:

    1. 金融収益(顧客資金をもとに融資・運用で生む利鞘)
    2. トレーディング収益(市場変動を利用した収益確保)
    3. 投資信託報酬・M&Aアドバイザリーフィーなど様々なフィービジネス

    ゼロ手数料によって顧客が増えれば、他の収益も自然に拡大するため、結果的に損するどころか増収増益を維持できる仕組みを作った。

  • 意義:
    投資家は「とりあえず取引してみよう」とハードルが下がり、投資人口拡大、資産形成意欲増大。SBIは長期的な顧客ロイヤリティ獲得が期待でき、業界内で存在感を高める。


【SBI新生銀行がグループ参加で復活:公的資金問題と評価向上】

SBIは2021年末に新生銀行を傘下に入れました。新生銀行はかつて公的資金3500億円を受けながら、長期間返済を先送りしていました。

  • SBIの手腕:
    新生銀行をグループに迎え、ネット証券・ネット銀行の顧客基盤や法人営業力をフル活用して預金・貸出を伸ばし、利益を急増。目標利益700億円が前倒しで達成可能なほど成長。

  • 公的資金返済計画:
    既に一部返済を果たし、残余も早期返済を表明。これにより「国民の税金で救済された」レッテルから脱却し、市場評価が一気に改善する可能性大。
    たとえば、公的資金完済後、銀行の自己資本がクリアになれば上場などで高い株式評価を得られ、SBIホールディングス全体の企業価値も増大する。

  • なぜ重要か:
    日本では公的資金注入銀行の処理は長引きがちだったが、SBIは迅速な経営改革で返済に道筋をつけ、透明性と健全性を高めた。これは「民間主導で公的資金銀行を立て直す」好例であり、国内金融改革の象徴的成功例になる。


【社会・政治環境変化とSBIの柔軟な戦略】

世界的に政治・経済が流動化し、米国政権や国際通商政策、日本国内の政治改革要求、少子高齢化問題など変化は激しい。投資家や顧客は不透明な時代にリスクを管理しなければなりません。

SBIは以下を重視:

  1. 積極的M&Aとリスク分散:多様な子会社・事業領域を持つことで、一地域・一商品の不調を別分野でカバー。
  2. 早期ROE改善・公的資金返済:市場信頼を確保、格付け上昇、調達コスト低減が期待でき、どんな環境変化にも柔軟対応。
  3. 金融制度改革への発信力:iDeCo(個人型確定拠出年金)拡充やPFOF(注文執行報酬)導入で市場を活性化し、日本の個人投資家支援を強化。制度面から顧客メリットを拡大することで、自社にも長期的恩恵あり。

【証券制度改革:iDeCo・PFOF・PTS拡大の意味】

  • iDeCo拡充:
    米国では401kなど年金制度が充実し、投資を通じた長期資産形成が当たり前になっている。日本は拠出額が低く、老後不安が強い。iDeCo限度額拡大や制度簡素化は、個人の将来資産形成に寄与。SBIはこの分野で手数料無料化やサービス向上を先行、顧客基盤トップを誇り、老後資金問題解消に一役買うことで社会的支持も得る。

  • PFOF(Payment for Order Flow):
    米国では証券会社が顧客注文をマーケットメーカーへ回し、その代わり報酬をもらう。これで投資家の取引手数料をゼロに維持できるビジネスモデルが定着。日本未導入だが、これが可能になれば、さらに投資コストは下がり、投資家メリット拡大。
    SBIは「手数料ゼロはゴールではなく、PFOFなど新制度導入で収益モデルを多角化し、日本の証券市場活性化を」狙う。

  • PTS拡大(取引所競争の促進):
    日本は東証一極集中で手数料構造が硬直的。欧米ではECN(電子取引ネットワーク)や複数の取引所が競合することでコスト低減・利便性向上。SBIは「ジャパンネクスト」や「大阪デジタル取引所」など独自の市場基盤を整え、投資家がより安く・公平に取引できる場を作りたい。
    これが実現すれば、日本市場の国際競争力が高まり、海外投資家呼び込み、日本経済にもプラス。


【暗号資産戦略とブロックチェーン革命の布石】

暗号資産(仮想通貨)市場は日々成長。ビットコインが”銀”の時価総額を超え、米国でビットコイン現物ETFが承認されるなど、制度面でも前進。ブロックチェーン基盤は、国境を超えたリアルタイム決済、金融包摂(金融サービスを受けにくい地域に届ける)を可能にします。

  • SBIの強み:

    1. 世界最大級の暗号資産マーケットメイカーを保有→流動性供給で市場安定化。
    2. SBI VCトレード、ビットポイントを通じ、個人から法人まで暗号資産ニーズに対応。
    3. リップル社(XRP)、R3、サークル(USDC)といった海外有力企業に早期出資→ドル連動ステーブルコイン、クロスボーダー決済、貿易金融効率化のトレンドを先取り。
    4. 不動産や債券のトークン化(デジタル証券化)で、非上場資産を24時間365日グローバルに売買可能な新市場を開拓。
  • 意義:
    暗号資産は単なる新興資産クラスでなく、将来的には国際金融インフラの基本要素になりうる。SBIはこの動きを初期段階からフォローし、インフラ・エコシステム構築側に回ることで、巨大な先行者利益を得る可能性がある。


【FX(外国為替証拠金取引)事業とボラティリティの活用】

FXは通貨間の交換レート変動で利益を狙う取引。金利差や地政学リスク、経済指標発表などで為替が上下すると取引活発化→手数料収入増やスプレッド収益増が期待できる。

  • なぜ今有望?:
    日本の超低金利政策正常化や、米国・欧州の金利動向による為替変動が増えれば、顧客はチャンスを求めてFX取引増加。また、SBIは長年の経験からアルゴリズム取引やカバーヘッジを高水準で運用可能。
    ボラティリティがあるほどディーリングや顧客流動性提供で儲けやすく、他の競合より優位性を保てる。

【地方創生・地銀連携:金融革新による地域活性化】

日本の地方は、人口減少や産業空洞化で厳しい状況。地銀はローンや預金主体の旧来モデルで金利が超低水準だったため苦戦続き。SBIは資本参加やノウハウ提供で地域金融機関を蘇らせています。

  • 具体例:島根銀行
    以前は苦境だったが、SBI傘下や提携で預金・貸出金が大幅増、収益改善。地方行員を全国規模で活用するためのネット戦略(例:共同店舗、オンライン商品展開)を導入。
    コアバンキングシステム(銀行基幹システム)も刷新し、メンテコスト削減・柔軟なサービス開発を容易にする。

  • なぜ重要?:
    地方が元気になるには、地元企業が成長し雇用拡大、住民が豊かになり消費が活性化する好循環が必要。その鍵は金融インフラ。SBIは「地方創生は金融から」を実践、事業承継ファンドで老舗企業の後継問題解決、ベンチャーファンドで新産業発掘。地域金融を超えた「地域総合経済支援プレイヤー」となりうる。


【三井住友FGとのアライアンス成功例】

SBIはメガバンクの一角、SMFG(住友グループ)と戦略提携し、証券口座獲得や積立投信増加に成功。金融業界大手同士が補完関係を築くことで、より多くの顧客が金融サービスを利用しやすくなり、両社が成長。

  • 意義:
    従来、メガバンクとネット証券は必ずしも利害一致しなかったが、今や顧客本位で考えれば、協業は顧客メリットを最大化し、結果的に両社収益増。こうした戦略的提携は他業界・他企業にも波及可能。

【海外事業拡大:新市場での成長機会】

日本の人口減少・経済成長鈍化を踏まえ、SBIは海外市場進出を強化。アジア新興国や中東で金融ニーズは拡大中。世界的な富裕層の増加、新興企業の台頭により、様々なファイナンス機会が生まれている。

  • 中東(サウジアラビア等)の魅力:
    若年人口多く、石油に依存しない経済構造転換(ビジョン2030)進行中。医療、バイオテク、ゲーム、ICTなど成長産業に資金が注がれる。SBIは現地大手財閥・政府系機関とファンド設立、ハイテク企業への投資を通じて存在感拡大。
    アラブ圏は大量資金を有しつつ技術や人材育成中で、そこに日本発の金融ノウハウを持ち込めば大きなシナジーが生まれる。

  • アジア・アフリカ展開:
    ASEAN諸国やインドは既に成長著しく、スタートアップや中小企業向けファイナンス需要大。SBIがベンチャーキャピタル的活動や金融ライセンス取得で市場進出すれば、新たな収益源確保。ロシア等政治的難局下の国でも撤退せず耐え続け、独自の関係性を築くことで長期的リターンを狙う。

  • 海外拠点の戦略的人材配置:
    国際事業を成功させるには現地事情に精通した人材、政策対話ができるトップ人材の確保が必須。SBIは日本人ゼロの現法をつくるなど、現地に溶け込む戦略を重視。長期的観点で人脈・信頼形成を行うことで、海外展開を加速。


【資産運用事業:オルタナティブ投資で20兆円目標】

SBIは既に10兆円超の運用資産を抱え、2027年を目処に20兆円を目標とする。これは単に規模を増やすだけでなく、オルタナティブ投資(未上場株、プライベートクレジット、不動産、インフラ、ヘッジファンド等)や世界最大手の運用会社(KKR、ピムコ、フランクリン・テンプルトン)との合弁で高度な運用ノウハウを取り込み、顧客へ幅広い商品を提供する計画。

  • なぜオルタナティブが重要?:
    債券・株式伝統的資産だけでは低金利・低成長下で十分なリターン確保が難しい。オルタナティブ投資は、市場と非連動の収益源、分散効果が得られ、機関投資家や富裕層が注目。SBIはこうしたニーズ対応により顧客基盤拡大、手数料収入増加。

【最終的なビジョン:総括】

SBIは、以下の壮大な目標を持っていると整理できます。

  1. 金融の民主化:
    手数料ゼロ化、iDeCo拡充、PFOF導入提言、PTS拡大などで「誰もが安く、フェアに、世界標準で投資・金融サービスを享受できる環境」を整え、日本国民が豊かになる土台づくりに貢献。

  2. 日本発のグローバル金融ハブ構築:
    暗号資産、トークン経済、国際連携ファンド、中東・アジアへの進出により、世界的に影響力ある金融企業へ。海外事業の増強で収益源を多地域化すれば、日本国内低成長にも対処可能。

  3. 公的資金返済や地銀支援で社会的使命を実現:
    市場から信頼を取り戻し、地方経済活性化を牽引することで、「儲けるだけでなく社会に貢献する金融」を体現。

  4. 長期的成長エンジンとしてのテクノロジー活用:
    ブロックチェーン、AI、デジタル証券、ステーブルコインなど先進テクノロジーを積極導入し、新たな金融エコシステムを創出。10年、20年先を見据え、持続的成長のレールを敷く。

 

以上

プロセスマイニングで業務を効率化

現代のビジネス環境では、業務プロセスの効率化が成功の鍵を握っています。その効率化を実現する強力なツールが**「プロセスマイニング」**です。


プロセスマイニングとは?

プロセスマイニングとは、業務システム(例: SAPやSalesforce)から収集したデータを基に、実際の業務フローを可視化し、ボトルネックや非効率部分を特定する技術です。

この技術を使えば、業務プロセスを正確に把握でき、次のようなメリットが得られます。

  • 業務の最適化: 無駄を削減し、生産性を向上。
  • コスト削減: 非効率なステップを特定して除去。
  • 法令遵守の強化: 規定外の業務を発見し、是正。

プロセスマイニングで得られるメリット

以下のような課題を抱えている企業に特に効果的です。

1. 業務の可視化で問題点を明確化

「どこにボトルネックがあるかわからない」といった悩みはありませんか?プロセスマイニングを導入することで、業務フローがフローチャート形式で明確に表示され、問題点が一目瞭然になります。


2. 無駄を削減して効率化を実現

プロセスマイニングは、業務の中で時間やコストが無駄にかかっている部分を発見します。例えば、承認ステップが多すぎる場合はその数を減らし、業務をシンプルにすることが可能です。


3. 改善施策の効果を数値で測定

施策を実行した後も、その効果を**KPI(重要業績評価指標)**でモニタリング可能。データに基づいて次の改善策を考える「PDCAサイクル」を回せるのが大きな強みです。


成功事例:プロセスマイニングで成果を上げた企業たち

1. 自動車メーカーA社

  • 課題: 工程が多く、品質管理に非効率が生じていた。
  • 成果: プロセスマイニングにより非効率な工程を削減し、品質向上とコスト削減を実現。

2. ルフトハンザシティライン

  • 課題: フライト遅延による顧客満足度の低下。
  • 成果: 遅延の原因を分析し、定時運行率を改善。顧客からの信頼を回復。

3. ドイツIT企業

  • 課題: 膨大な注文項目と請求書の処理。
  • 成果: プロセスマイニングで年間1,000万ユーロ以上のコスト削減に成功。

プロセスマイニングの始め方

ステップ1: データを収集する

まずは、業務システムからイベントログを収集します。SAPやSalesforceのようなシステムから抽出したデータが基盤となります。


ステップ2: プロセスを可視化する

次に、プロセスマイニングツールを使用して業務フローを視覚化。どの部分に無駄があるのかが明確になります。


ステップ3: 改善施策を実行する

可視化の結果をもとに、具体的な改善策を立案して実行。無駄な手順の削減や自動化がポイントです。


ステップ4: 効果をモニタリングする

改善施策が実際にどれだけ効果を上げているかを継続的に測定。定期的な分析を行い、さらに効率的な業務運営を目指します。


どのツールを選べばいい?代表的なプロセスマイニングツール

  • Celonis: ERPã‚„CRMデータの活用に特化。業務改善のスピードが速い。
  • UiPath Process Mining: RPAとの連携が強み。自動化を推進する企業に最適。
  • Apromore: オープンソースで低コスト。中小企業にもおすすめ。

結論: 今すぐ始めるべき理由

プロセスマイニングは、企業が競争力を高めるために欠かせない技術です。業務の現状を「見える化」し、具体的な改善施策を進めることで、効率化とコスト削減を同時に実現できます。

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RAGの最適化:検索精度と速度のバランスをとる秘訣

Retrieval-Augmented Generation(RAG)は、AI技術が進化する中で注目されている革新的なアプローチです。この技術は、膨大なデータの中から適切な情報を抽出し、それを基に高品質な回答を生成する仕組みです。しかし、性能を最大限引き出すには、「検索精度」と「速度」のバランスをとることが鍵となります。


RAGの基本とは?

RAGは2つの主要コンポーネントで構成されています。

  1. 検索器(Retriever)
    データベースや文書から質問に関連する情報を抽出します。

  2. 読取器(Reader)
    抽出された情報を基に回答を生成する大規模言語モデル(LLM)。

RAGは特に次のような課題解決に役立ちます。

  • 幻覚現象の軽減(AIが事実でない内容を生成するリスクを低減)
  • 最新情報の提供(事前に学習されていないデータにも対応可能)

研究が示す最適化ポイント

最近の研究によると、RAGの性能向上には次のようなポイントが重要です。

  1. ゴールド文書(正確な情報源)の活用
    検索結果にゴールド文書が多く含まれるほど、AIの回答精度が向上します。

  2. 検索精度と速度のバランス
    検索精度を若干下げることで検索速度を上げても、全体のパフォーマンスには大きな影響がない場合があります。

  3. ノイズの管理
    関連性の低い文書(ノイズ)が含まれると、回答の質が低下します。適切なフィルタリングが必要です。


実際の応用例

1. 商品レビュー分析

  • 課題: 大量の顧客レビューの中から製品の正確な評価を得たい。
  • RAGの役割: ゴールド文書(信頼できるレビュー)を中心に検索し、正確な製品評価をAIが生成。

2. 医療QAシステム

  • 課題: 患者の病歴や症状に基づき信頼性の高い診断支援を行う。
  • RAGの役割: 医療文書を検索してゴールド文書を選択し、AIが適切な診断を提案。

視覚的に理解する:検索精度と速度のバランス

以下の表は、検索精度と速度、回答の正確性の関係を示しています。

検索精度 ゴールド文書割合 回答の正確性 検索速度
高精度 高 高 遅い
中精度 中 中 中
低精度 低 低 速い

具体的なアクションプラン

  1. 現状のRAGパイプラインを評価
    ゴールド文書がどれだけカバーされているかを確認してください。

  2. 検索精度と速度を調整
    実際のアプリケーションで最適なバランスを見つけるため、試行錯誤を行いましょう。

  3. ノイズ管理を強化
    検索結果から不要な文書を除外する仕組みを導入してください。

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AIが人間の専門家を超えるとき:AIの予測が人間を上回る

科学研究のスピードを加速するLLMsとは?

現代の科学研究では、膨大な文献を読んで理解し、そこから新しい実験結果を予測することが求められます。この膨大なタスクを、人間だけで処理するのは限界があります。そんな中、**LLMs(大規模言語モデル)**が研究者の頼れるパートナーになりつつあります。

特に注目されているのが、LLMsが人間の専門家を上回る予測力を発揮している点です。たとえば、Neuroscience(神経科学)分野では、LLMsが研究結果を予測するベンチマーク「BrainBench」で、人間専門家を大きく上回る精度を記録しました。


LLMsの力を示す「BrainBench」の実績

「BrainBench」とは、ある研究の要約(Abstract)を元に、正しい結果と改変された結果を選ぶタスクを実施するベンチマークです。

  • LLMsの正答率:81.4%
  • 人間専門家の正答率:63.4%

この結果は、人間の専門家が苦労する膨大なデータの統合と予測を、LLMsが効率的に処理できることを示しています。特に、Neuroscience特化型モデル「BrainGPT」は、一般的なLLMsをさらに上回る精度を実現しました。


科学研究への具体的な応用例

1. 仮説生成の効率化
過去の膨大な文献を分析し、新しい実験の成功確率が高い仮説をLLMsが提案できます。たとえば、ある病気に関する研究を計画する際、どの遺伝子や脳領域を重点的に研究するべきか、具体的な方向性を示してくれます。

2. 複雑なデータの解析
複数の方法が存在する研究課題において、最適な分析手法を予測し、意思決定を支援します。これにより、研究者は効率的にリソースを配分し、時間とコストを節約できます。


これからの研究者が取るべき3つのアクション

  1. AIを研究に取り入れる第一歩を踏み出す
    現在の研究にLLMsを統合し、文献分析や仮説生成に活用しましょう。例えば、ChatGPTやBrainGPTのようなモデルを試し、小規模な実験から始めるのがおすすめです。

  2. LLMsの専門分野での適用を模索
    自身の研究分野に特化したLLMを開発するために、AI開発者との共同研究を検討しましょう。たとえば、特定の分野の論文データセットを活用してモデルを微調整することが可能です。

  3. チーム全体のAIリテラシーを高める
    LLMsを効果的に活用するため、チームメンバーにトレーニングを行いましょう。専門家とAIの協力が、新しい科学的発見を生むカギです。


結論:人間とAIが共に未来を創る

LLMsは、科学研究の進め方を根本から変える可能性を秘めています。人間がAIと協力し、それぞれの強みを活かすことで、これまで不可能だったスピードと精度で科学を前進させることができるでしょう。

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