勝ち組の比率

I社のFXグランプリが終わってしばらく、あちこちでいろいろ書かれていましたが、あれはFX業者のイベントとしては大成功だったのではと思っています。以下、私の妄想。笑。


どんな企業もお客さんがお金を落としてくれないと儲からず、企業活動が成り立たちません。だから必死に広告を打って客を集めます。広告には、少なくとも2つの要素を満たさないと効果が得られず、特に重視されるのが広告認知率と広告訴求力です。
(一般には、見込み客に行動を起こさせる力という要素を加えた3つかな..

広告認知率 どれだけ多くの人に知ってもらえたか。
広告訴求力 商品やサービスがどれだけ魅力的に見えるか。

I社がグランプリを開催する際に、著名人サポーターを募ったのは広告認知率を高めるためでしょう。テレビCMに有名人を起用するのと同じです。誰も知らない個人投資家が競い合ったところで、それに注目する人は少ないし、個人の入賞者に美味しい餃子や極上のカレーを配ったところで、先行している某2社には認知度で太刀打ちできなかったと思います。



認知率を上げるだけなら、著名人サポーターのみでグランプリを開催しても良かったのですが、彼らが運悪く惨敗した場合の広告訴求力は最悪です。だって「著名人ですら勝てない難度の高い弊社に口座開設しませんか?」というメッセージを送って、わざわざ口座開設したいと思う人は居ませんよね?
FX業者にとって訴求力のあるメッセージは、低スプレッド、高約定率、ちらっとテクニカルのような便利ツールの完備…などなどいろいろあっても、一番効果が高いのは、やはり「勝ち組の存在」です。
「ほらほら、みなさん、こんなに儲かっている人がいますよ〜。今すぐ口座解説して、FXやりましょうよ!」
これがもっとも単純で誰にでも分かりやすく、顧客の欲望を喚起するメッセージになるのです。
海外の業者でトレードコンテストが盛んなのも、シグナル配信業者がランキング好きなのも、雑誌に勝ち組トレーダーのインタビューが載るのも、EA販社のページがアレなのも、すべて「勝ち組の存在」を印象付けようと必死なんですね..。




そんな訳で、I社はこのグランプリにも確実に勝ち組を作る必要がありました。その為に既存の口座保有者全員を自動で参加者に組み入れ、グランプリ期間を3ヶ月に区切ったのだと思います。3ヶ月であれば、確実に運だけで勝ち残る人がいてもおかしくありません。さらに、累計取引数量でクラス分けすることで、勝ち組の存在をより身近に感じられるようにしました。実際、3ヶ月で2億通貨トレードする人ばかり入賞していたら、小ロットでトレードする人には遠い雲の上の存在に見えたはずです。むしろ、わずか75万通貨の取引で150万円稼いだ人が目立つ所に居るからこそ、目標にもなりやすいのです。



こうして、一般人を参加させることで、

著名人が勝てた場合。→ さぁ皆さん、弊社に口座を開いて著名人のセミナーを受けましょう。
著名人が負けた場合。→ 個人投資家の皆様がこんなに勝ってますよ。弊社に口座を開きましょう。

というストーリー展開が可能になり、著名人が負けた場合のリスクをヘッジできました。実際には、(おそらく、想定外に)著名人が派手に惨敗してくれたおかげで、

・さらに多くの人に知ってもらえることができた。(認知率の向上)
・I社のグランプリは公正に行われている。(ブランドイメージの獲得)
という効果もあったと思います。
あとは、ランキング上位者から、新たなセミナー講師、客寄せパンダが生まれれば本当に大成功なわけですが、この辺りは継続して観察してゆかないとどうなるか分かりません。(決して否定的な意味ではないですよ。勝てなかった人の話より、実際勝った人の話の方が面白いと思いますし..




…で、まぁ、そんな妄想話はどうでもよく、本題の勝ち組比率なのですが、実はアメリカでは去年から、ドット・フランク法に基づき、米国内のFX登録業者に3ヶ月ごとの勝ち組比率(保有口座の中で利益をだしている口座の割合)の公表を義務付けています。計算方法が統一されていないようで、業者間の単純比較はできませんが、だいたい、3ヶ月間で3割ぐらいが勝てているようです。

↑2010年10〜12月の各社の数値です。口座開設時の規約文書の最後の方にちらっと書かれているようです。


今年の傾向はどうなのかな?とFXDD様のサイトを見ると
http://www.fxdd.com/fileadmin/template/main/downloads/pdfs/en_US-customer_agreement-fxdd.pdf

やはり利益のでている口座(Profitable Accounts)が3割前後で推移していますね。
単純に3ヶ月毎に33%の確率で勝ち組が決まるとすると、1年間どの四半期も常に勝つトレーダーはわずか1%、年間トータルでプラスなのは約1割になります。(4連勝する確率と、3勝1敗する確率です。


本当はもっといびつで複雑な確率分布になると思いますが..厳しい現実がそこにはあります。。