モデル生物

 モデル生物の代表例は動物ではショウジョウバエ、大腸菌、植物ではシロイヌナズナ。モデル生物は生物学、特に分子生物学で生命現象の研究で使われる生物種。シロイヌナズナは2000年に植物としては初めて全ゲノム解読が完了した。私はファーブルやダーウィンのように生き物すべてに強い関心をもつ少年ではなかったが、小学生の頃は夏休みに動植物の採集に明け暮れた。そのためか、今でも周りの植物に関心をもっている。かつてヨーロッパでは自然哲学(natural philosophy、物理学)と自然史(Natural history、博物学、生物学)が自然研究の二大分野で、その自然史に惹かれたのがファーブルやダーウィンだった。

 マッピングはある遺伝子がゲノムあるいは染色体上のどの場所にあるかを特定する作業のこと。シロイヌナズナはゲノムの解読が終了していて、染色体の数も少なく、たくさんの人が研究し、手法が確立されている点からもマッピングが簡単にできる。また、シロイヌナズナは、世代時間(個体が成長して種を収穫するまで)が6週間と短く、塩基の数が種子植物の中で最も少なく、染色体の数も5対で、研究材料として扱いやすい。多数の突然変異株、DNAクローン、形質転換系統などが世界中で共有されていて、研究に利用できるようになっている。

 真核生物のモデル生物はショウジョウバエで、長い歴史をもっている。染色体上の遺伝子の相対的位置を示したものが「染色体地図」で,トーマス・ハント・モーガン(1866-1945、1933年彼は遺伝の染色体理論を確立したことでノーベル生理学・医学賞を受賞)らが初めてキイロショウジョウバエで作成した。コロンビア大学のキャンパス付近に捨てられるバナナの皮などで簡単に飼育できるミバエが選ばれ、最初のモデル動物になった。モデル生物によって、野外での採集と観察から実験室での実験へと研究方法が変わった。ハエの産卵数は1日に約50個、10日ほどで成虫になる。体長2~3mmで、試験管でも飼育が可能。モーガンが白い眼の突然変異を発見して以来、体の色などの突然変異が見つかった。それらを用いて、染色体地図が初めて明らかにされた。

*ところで、物理学や化学にはモデル物体、モデル物質なるものはあるだろうか。

シロイヌナズナ

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