立ち絵が美しい!5時間以内に終わる同人ファンタジーノベル『fault - milestone one』を紹介するぞ!

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『fault - milestone one』(ディレクターズ・カット版)

 

 

「これは私達の現実と陸続きの物語ではない」

開始早々、そう認識せざるをえない固有語による固有語のオンパレードによって『fault』は幕を開けた。「クラフト」「カラード・マナ」「風言語」……登場人物たちが口にする言葉の数々は文脈で多少わかるものの、しかし明確な意味は把握できないでいた。

そしてそれらは詳細に説明することなく「クラフト」を前提とした「バトルクラフト」、「マナクラフト」を前提とした「通信ライン」という言葉が撒き散らされていくのである。

また、人差し指・中指・薬指を突き立て小指と親指で握手する「ビルセリオ」という風習があること、サンアリズタ語(仮想言語)でビルセリオは「幸運を」なる意味をもつこと、「セキュール」と呼ばれるルゼンハイド国では誰もが知っている欲の化身の名称を皮肉に使ったりと―――明らかにそこは私達が知らない文化であり、別世界のお話であることが一瞬にして理解できるだろう。

このように強度ある世界観が『fault』の魅力であるものの、それが劇中で十全に説明されないことにストレスを覚えるかもしれない。

――しかし安心して欲しい。本作はEncyclopedia……つまり辞書機能を搭載しており、分からない言葉はすぐ調べられる。

↓

 

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―― 『fault - milestone one』(ALICE IN DISSONANCE)

 

 

辞書機能を搭載する作品は多いが、それが単なる小ネタ展示会にしかなっておらず結局1.2度しか使わなかったというものも多い。

例えば某作品では、「朝の挨拶」「アイコンタクト」といった誰でも知っている超・基礎的な単語すらも辞書に陳列されてしまう。その単語説明にユーモアが宿っているかと思えば「一日を始めるに当たって必要なこと。これをきちんとするかしないかで、好感度の上がり方に著しい差がでる(朝の挨拶)」とか「目と目が合う瞬間に通じ合うこと(アイコンタクト)」といった具合に誰にも寄与することのない文章が幅を利かせる始末、またこれらの単語が劇中で何かしらの意味を持つこともないとくれば「この辞書機能は何のために存在しているんだ?」と首を傾げてしまうものだ。

では『fault』はどうなのか? 

本作はハイファンタジーにやや近い独自の世界観で構成されているため、固有語が理解できないと楽しくテキストを読めない。物語にものめり込めない。でもだからといって一から十まで説明すればそんな「falutの世界観」を壊しかねないし、話のテンポも悪くなってしまうだろう。

しかし「Encyclopedia(辞書)」を搭載することでいつでもどこでも好きな時にプレイヤーは丁寧な説明を受けられる、これによって先のストレスやリスクを綺麗に拭い去っているのである。

いわばこれは「説明されない固有語」が引き金となりプレイヤーの「fault世界を知ろうとする(=辞書を開く)」動機作りに成功している、インセンティブが上手く働いている例だと言えるだろう。だから積極的に使いたくなるし、何度も読み返したくなる。

そしてそれはめちゃくちゃ楽しい体験だ(!) 

自分が知らない言語、様式、世界への探究心が劇中から煽られ、そして一つづつ確かめていくことで登場人物たちの不鮮明だった言葉が光りに照らされたように鮮明になっていく感覚。知らないことを知るということ、分からなかったことが分かるということはそれだけで快楽なのだとあなたは理解するに違いない。

 

また本作の特徴として「絵の美しさ」と「3Dカメラ演出」、この2つが挙げられる。

 

①立ち絵

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―― 『fault - milestone one』(ALICE IN DISSONANCE)

 

②スチル(一枚絵)

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―― 『fault - milestone one』(ALICE IN DISSONANCE)

 

 

スクリーンショットで伝わるかは分からないが、立ち絵はずっと見ていたくなるくらいに塗りが綺麗だし、スチルは光源が意識されたコントラスト高めでこれまた美しいイラストに仕上がっている。

(ただ男性陣の立ち絵は女性陣の立ち絵に比べて質が劣り、スチルは質のばらつきが多い。とはいえ許容範囲内か)

そんな美しい立ち絵・スチルを、「3Dカメラ」という独自の演出方法で彩っていくのだが、これがなかなか面白い体験だ。この演出は絵をアップにする際、ロングショットで映す際に「奥行き」のあるアニメーションが施されるものだ、と言っていいだろうか?

カメラのアングルが "実際" に動いているかのような効果が本作には与えられているのである。webサイトでよく見かけるパララックス効果。

実際に見てもらったほうが早い。

↓

 

③3Dカメラ

www.youtube.com

 

↑そこまで「はっ」とするようなものではないが、この「ぬるぬる感」はくせになる人もいるんじゃないだろうか?

こういうCGの美しさ、それを活かそうとする演出の積み重ねが「もっと読みたい」「もっと色々なシーンを見たい」という気持ちを大きく――けれどさりげなく――喚起させていく体験をぜひ味わって欲しいと思う。

またそういった細かさは、ゲーム起動時「この物語はフィクションである」という形式張った定型句にユーモアが与えられている所からも見て取れるだろう。

 

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―― 『fault - milestone one』(ALICE IN DISSONANCE)

 

にやにや

 

     ◆

 

言い忘れていたが『fault』シリーズはラビットリリース……つまり連載型ノベルゲームだ。「一舞台・一作品」がコンセプトであり、そのため一作品5時間以内に終わるボリュームであり、完結の目処は分からずもしかしたら数年後…数十年後に終わることさえあると思う。

そう思うほどに『milestone one』で提示された物語のスケールは大きく、本当に完結するのか不安になってしまう。

一応、以下のように公式HPでスケジュールは記されているが・・・

 

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――http://projectwritten.com/fault-series/

 

 この図の見方は、言わなくてもいいだろうが念のため。

一番左が[2013年・milestone one]つまり一作目で、その隣が[2014年・Directors Cut]つまり本記事で取り扱った一作目の演出強化版であり、[2015年・milestone two 上(Side: Above)]つまり二作目(上)である。そして2016年現在制作してるのは「外伝」であり、その次が「2作目(下)」を制作予定となっている。

つまり「完結した作品を読みたい」という人には不向きな作風だと、理解した上で購入して欲しい。

私としては「女性主人公によるファンタジー物語」が好きで、「世界観がしっかり」していて、「短編」で、「絵の美しさ」が気に入ったならば「買い」だと思う。(実は音楽もいい) *1

 

Amazonは品切れだが、Steamだと簡単に手に入るのでこちらをすすめたい。(もちろんディレクターズ・カット版)

 

 

 

 

 

 

 

おわり

 

さて、今回はあらすじに触れずに作品紹介してみたがどうだっただろうか。未プレイ者の好奇心を削ぐことなく、少しでも本作に興味を持ってもらえたならば幸いである。

ちなみに『fault』はPS4・vita版でのリリースも決まっており、steamイヤーって人はそっちを待ってもいいかもしれない。(同人ノベルでここまで範囲を広げる作品って中々無いような気がする)

 

それでは、Vilseriol―幸運を―!

 

 

 

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*1:ただ私自身も「完結した作品を読みたい人」なので2作目は買わないと思う。全て終わったら一括購入したい。