『ラヴクラフト全集(1)』H・P・ラヴクラフト

ラヴクラフト全集 (1) (創元推理文庫 (523‐1))
いあ! いあ!
というわけでラヴクラフトさんの短編集。どうやらクトゥルー神話の基本らしい『インスマウスの影』『闇に囁くもの』と、神話と関係があるのかどうか一見よくは分からない『壁の中の鼠』『死体安置所にて』の四作です。『死体安置所にて』は百物語に出てくる怪談話みたいで毛色が違いますけど、よく分からない圧倒的な何かが次第に全貌を現しておっかなびっくり助けてぎゃあ、という展開が基本のようです。
クトゥルー神話には「人知を越えた神話的存在たちの不条理で歪んだ圧倒的な異形さ」に焦点が当てられたものというイメージを持ってたんですけど、「異形の存在の宇宙的恐怖を目の当たりにして畏れおののく人間」が次第に自制をなくして狂っていく過程の描写にも同じくらい力を入れているんですね。そういえばこの神話関係で「SAN値(正気度)」という言葉をよく耳にしますけど、たしかにこれって「そういう話」なのかもしれません。神話としてはまだ断片を目にしたという程度なので、全体像を掴むにはまだまだ色々と読む必要がありそうです。