バラバラに、ともに。遠藤まめたのブログ

LGBTの子ども・若者支援に取り組む30代トランスの雑記帳です

トランスジェンダーと健康診断

年に1回の健康診断に行ってきた。バリウムが不味かった。なんとか飲みやすいようカルピスっぽい爽やかな味わいにしてあったが、バリウムを爽やかにするのにもやはり限界がある。それはともあれ、自分のようなトランスの人たちの多くは健康診断に抵抗感がある。受診していない人も多いと言われるので、記事をきっかけに健康を顧みる当事者が増えたらいいなと思い、話題にしてみる。

こんなふうに調整している

自分の場合には一人で着替えたいなどのニーズがあり、施設との調整を行なっている。以前の職場では職場に健診カーが来て午前は男性、午後は女性のように集団で受診する仕様だったが、後日個別で健診センターを受診した方が抵抗感が薄かったので、そのように調整した。

健診センターは事前に連絡をすると大変親切で、当日のフローを示した紙を用意してくれた。検査着の色(性別で異なる)、フロア(性別で異なる)、着替える場所や荷物の保管方法、結果の報告の仕方(一人だけ職場に通知が来ると目立つのであれば福利厚生の部署に自分で取りに行っても良い)、確認事項の連絡方法(同様に職場の代表電話ではなく個人へのメールで連絡する)などを確認した。

最近受けているところは地域の病院で、検査着もフロアも男女共用である。ちなみに尿検査のトイレも男女共用だ。番号ではなく名前の呼び出しなのが、改名をしていない当事者にとっては残念ポイントかもしれない(見た目と名前にギャップがある場合、周囲から変な目で見られたり、カミングアウトしているのと変わらない状況になってしまうこともあるから)。

調整することの気兼ねなどはあるが、概ねスムーズに対応してもらっている。バリウムはまずいが。

既存のデータより

NPO法人虹色ダイバーシティと国際基督教大学による2018年調査では、健康診断を受けていないトランスジェンダーは23.9%に及ぶ。本調査ではシス・ヘテロの受診率は11.5%となっており、比較すると2倍ぐらい高い。

背景には、上記のような調整の大変さや、心理的ハードルもあるのだろう。誰もが電話口でカミングアウトできるわけではない。職場の福利厚生課とのやりとりも、それほどエキサイティングってわけじゃないし。

さらに、次のような背景も考えられる。

・企業に勤めていれば雇用者の義務として健康診断を受けさせなくてはいけないが、雇用されていない人の場合にはそうではない。トランスジェンダーのうち就業していない人の割合は高い。前述の調査を行った認定NPO法⼈虹⾊ダイバーシティらによる「LGBTと職場環境に関するアンケート調査 niji VOICE 2020」では、560名のトランスジェンダーのうち17.3%が就業していなかった。

・お金がかかること。同上の調査によれば、トランス男性の34.3%、トランス女性の34.8%が年収200万円以下になった。またコロナ下の調査であったことを考慮しても、預金残高が1万円以下になったトランスジェンダーが31.3%にのぼったという回答もあり、貧困による影響もありそう。

受診しやすいところはどこか

健康診断に限らず、トランスの人は病院受診に億劫になりがちである。身分証の性別が現在の外見と違っているので、窓口でカミングアウトする羽目になる。あるいは近所の人たちで混み合った待合室で、フルネームで呼び出されることで強制カミングアウト状態に陥る。受診のタイミングを見計らって、重症化してから受診したら「なんで早く来なかったの」と言われることもある(私も婦人科受診がいやで、筋腫を10センチまで育てたことがある。叱られた)。

ホルモン療法や手術をしている人は追加でコミュニケーションが必要だ。たとえば血液検査の結果の見方は、ホルモン療法をしている方の数値で見る。男性ホルモン優位な場合と、女性ホルモン優位の場合では、指標が異なるので。

障壁を少しでも減らして、トランスの人たちの健康やいのちを守っていくことが大切だ。近年医療の専門家たちの間で、受診しやすい環境整備のための取り組みは始まりつつある。

 

とはいえ、フレンドリーな医者のリストを誰かがつくて増やしていくとして、近所にそのようなお医者さんを見つけらる当事者ばかりでもないだろう。フレンドリーかわからなくても問い合わせて工夫することはできるよ、ということは言いたくて、このエントリーを書いてみた。

ちなみに、今回の検診で二番目に気になったのは自分の腹まわりである。

 

 

 

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