FAR-OUT ~日本脱出できるかな?~

旅のこととか、旅に関する本のこととか。

高城剛『モノを捨てよ 世界へ出よう』|読書旅vol.40

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さくら剛さんの作品が2つ続いた流れで、今度は高城剛さんの本に手を出してみました。勝手なイメージだけで書いてしまうと、陰キャ丸出しのさくらさんに比べ、高城さんはハイパー陽キャ。名前以外に両者の目立った共通点はありません。

でもこの機会を逃したら、半年前にブックオフで買ったまま積読していた『モノを捨てよ 世界へ出よう』(2012年/宝島社)が、またしばらく放置されそうだったんですよ。せっかくブックオフに古本を持ち込んでも、査定の待ち時間であれこれ買うハメになり、一向に部屋が片付かない悪循環を何とかしたいです。

 

ハイパーノマド実践者による移住すゝめ

さて、皆さんは高城剛さんについてどんな印象をお持ちですか。〈よくも俺たちのエリカを!〉とか、〈そもそもハイパーメディアクリエイターって何だよ?〉とか、嫉妬と羨望と疑問が入り乱れ、複雑な感情を抱かれている方も少なくない……かもしれません。

Twitterのプロフィール欄には「コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般に渡って活躍」と書かれていました。

イマイチ何をやっている人なのかわかり難い点は、TVに出まくっていた90年代から変わらず。この〈何をやっている人かわかり難い〉せいで、私は高城さんに対して若干の胡散臭さを感じ続けてきました。

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その一方、南の島マニアな高城さんがレコメンドする場所に〈ここ絶対行きたい!〉と興奮していたのも事実。例えばヴェトナムのフーコック島やカンボジアのロン島を、いち早く日本のメディアで紹介したのは、私の記憶する限り高城さんです。

フーコック島もロン島も、私が最初に訪れた時はまだギリギリ秘境感を保っていました。リゾート開発前の光景が見られたのは、他でもない高城さんのおかげ。本当に頭が上がりません。ある一面においては、めちゃくちゃ影響を受けています。

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とはいえ、単著を読むのはこの『モノを捨てよ 世界へ出よう』が初めて。文庫本の裏表紙には、以下の文言が添えられていました。

グローバル化が進んだ現在、いまや海外で生活するのは近所に引っ越しするのと同じくらいカンタンだ!(中略)未来に不安を感じている方や、留学をお考えの方、そして本気で海外移住をお考えの方にぜひともオススメしたい1冊です。さあ、世界へ引っ越そう!

本気で海外移住をお考えの方って、まさに私じゃないですか。かくして、かなり早い段階からノマド生活を実践されてきた高城さんの金言が賜れるのだろうと胸を弾ませ、ページをめくった次第です。

 

沈む国ニッポン?

ところが、東日本大震災から1年足らずで刊行された本書の序盤は、私にとってけっこうしんどいものでした。『沈む国ニッポン』と銘打たれた第1章では、3.11で露呈した日本のお粗末な政治システムと、それを是正するどころか自己保身に徹するマスメディア、そして行き詰まりを見せる経済状況について厳しく言及し、日本の未来をひたすら憂いています。

あれ? 想像していた内容と全然違う。イビザで乱痴気騒ぎしているパリピな高城さんは何処へ? 言わんとすることは理解できます。ただ、〈この国はもうダメだから……〉と不安を煽って日本脱出を勧めるのはあまりにも後ろ向き。

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経済破綻したアルゼンチンやギリシアを引き合いに出し、「こういうことが、どこの国でも起こりかねないのだ。もちろん、日本でも。そのような中で、明るい未来など描けるはずもない」と書かれた箇所に至っては、〈だとしたら、日本以外のどこの国で暮らしても、明るい未来なんて描けないんじゃないの?〉と、私の中にいる全私が一斉に立ち上がって猛ツッコミ。

仮に日本よりマシという意味だとしても、そんな消去法っぽい考え方で引っ越し先を選ぶのは相手国にも失礼かと思いました。

続く2章目では、密航留学経験の多い維新志士の格言を並べ、外の世界を知る者が先導したから明治維新は成し遂げた……といった話題を展開。どうも様子がおかしいです。お気楽な海外移住のすゝめを期待していた私の頭の中は、日本の政治経済と同じくらい大混乱。

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しかし、90ページまで読み進めて納得しました。ここへきて初めて「(本書は)あくまでも海を渡ったあとに日本に戻ってくることを想定」って明記してあるじゃないですか。外国に住んで視野を広げ、祖国にフィードバックしようという壮大なメッセージが込められていたんですね。

〈それならそうと先に言ってよ~〉と照れ笑いを浮かべながら、やっとこの本と和解。普通の読者さんは維新志士たちの名前が出てきた時点で早々に気付くのでしょうけど、理解力の乏しい私はうっかり揚げ足取り機能をネチネチと発動させてしまいました。

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本の趣旨を理解するや、気持ちは一変。自分の浅はかさを反省し、高城さんはもとより、この本のメインターゲットである意識高い系の方々にさえも、感謝の念を持たずにはいられませんでした。

〈日本、ひいては社会全体をより良くしたい!〉との志のもと、ワールドワイドに活動してくださる人たちのおかげで、我が国のパスポートは世界最強と評価され、私みたいにフニャフニャかつ自分本位な人間もその恩恵にあずかれているわけです。

己の欲求を満たすためだけに巡遊を繰り返し、その延長線上で海外移住を心に決めた私とは次元が違います……って、話が飛躍しすぎ?

何にせよ、勝手に早合点し、読了を待たずにふたたびブックオフ流しの刑を執行しなくて良かったです。著者やそのファンの方にも全力でお詫びします。

 

海外のオススメ移住スポット

コロナ禍で『モノを捨てよ 世界へ出よう』を読むにあたって、3.11直後の日本に貼りついていた圧倒的な閉塞感や原発事故対応を発端とする国民の政治不信と、現在の状況を照らし合わせてみるのも一興かとは思いつつ、私が一番グッときたのは第3章『高城剛的オススメ海外スポット』です。

維新志士の遺訓も大変ありがたいのですが、やはりここで読みたいのは著者の実体験に基づいたエピソード(※旅ブログを中断し、読書感想文しか投稿していないのに、どの口が言ってるんだ!?的なご意見は一旦忘れてください)。約15年間どこにも定住せず、世界各国を転々としてきた高城さんのオススメであるからして、説得力が違います。

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一言で世界都市と括っても、ニューヨーク、ロンドン、ベルリン、バルセロナ、上海、シンガポール、台北など、それぞれに特徴が異なり、各都市の違いをそこに住むデメリット(不安材料)も交えてわかりやすく解説。

とりわけ、著者が初めて長期滞在した1980年代後半のニューヨークと2010年代のニューヨークの比較は興味深かったです。最初は1週間の滞在予定が、「革命的な衝撃」を受けてすぐさま長期滞在の計画を練り直し、日本に一時帰国後、間髪入れずに再渡米したフットワークの軽さも、流石としか言いようがありません。

加えて、ビッグな経済都市のみならず、バイロンベイやサンセバスチャン、チェンマイ他、グロバリゼーションの潮流とは一定の距離を置いてローカルなカラーを大事にし、独自の発展を遂げたエリアガイドも楽しく拝読させていただきました。

 

1度世界へ出てみよう

この本を通じて、最低1~2か月でもいいから1度ガッツリ日本を飛び出すことを推奨されている高城さん。幕末の頃よりはだいぶ気軽に洋行できるものの、それでも「近所に引っ越しするのと同じくらいカンタンだ」とまでは到底思えません。

日本を離れている間もこっちの家賃は払う必要があるし……とか考えると、やっぱりそれなりにハードルは高い気がします。実際、コロナ前に私とツレが2~3か月日本を空ける時も、家賃問題が負担になっていました。

片や、コロナ感染拡大によってリモートワークが信じられない速度で定着し、職種によっては仕事に穴を空けるリスクが格段に低減。海外移住への障壁がまた1つ取っ払われたのも確かです。

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意識低い系の私が読んでも、海外移住欲がいっそう高まった本書。自己啓発を目的に海を渡ろうと計画されている方であれば、なおさら刺さるポイントが多いかと思います。

ついでに言うと、日本でずっと暮らしたいと願っている人にも、きっと〈いまの時代を生き抜くヒント〉や〈思考の転換を促すきっかけ〉を与えてくれるはずです。

不思議なもので、私は世界へ出たい気持ちと同時に、愛国心もアップ。導入部分の『沈む国ニッポン』はわかりやすいフックにすぎず、最終的には日本って良い国だな~としみじみ思わされる一冊でした。

※記事内の画像はフリー素材を使用しています。本著とは直接関係ありません。

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