エフェクターを複数手に入れたときにふと考えるのが繋ぐ順番。マルチエフェクターや歪み系一つなどではあまり考えなくていい要素ですが、2つ、3つと増えていくと、そうもいかなくなってきます。ここでは代表的な接続順について種類ごとに解説しています。参考にしてみてください。
エフェクターはつなぎ方によって音のかかり具合が変化します。例えば
という2通りのつなぎ方ですが、②の場合ワーミーでピッチを変化させた音にディレイがかかるのに対して、①の場合にワーミーを操作すると、ディレイ音に対してもピッチの変化が加わります。①②どちらがいいのかは好みの問題ですが、それぞれのエフェクターの特性を生かすようなセッティングを覚えておきたいところです。
まずはエフェクター同士を接続するためのケーブルがなくては話になりません。3mなどのシールドケーブルは長くなりすぎるので、10cm~20cmほどの短いパッチケーブルを使用します。パッチケーブルにも色々なものがあり、省スペースのためにジャック部分が平たくなっているものや、好きな長さに切って自作出来るものもよく目にします。価格帯もピンからキリまであるので、こだわりたい人はこの辺りもしっかり調べてみると良いでしょう。
パッチケーブルについて
続いて、様々な効果をもたらすペダルそれぞれの特徴を生かした標準的なセッティングを紹介します。
という順番に音を作ると考えるとよいでしょう。
ボリュームペダルは機種によってギターの直後もしくはアンプの直前に、ワウは歪み系の前後に設置するというのが定石です。
ディレイの後ろにチューナーを繋げると、残響音を響かせたまま一気に音量をゼロにできます。
こういった手法はライブなど実践でも使えるので、色々と研究してみるといいでしょう。
エフェクターの花形、歪み系は主にオーバードライブやディストーションを指します。この手のエフェクターは基本的にギターから近い位置に繋ぎます。ディレイの後に繋いだりすると、エフェクト音に歪みが掛かってしまって、まともな効果が得られなくなるからです。
モジュレーションは揺らぎ系などとも呼ばれ、コーラスやフェイザー、フランジャーなどを指します。こちらは歪み系の後に繋ぐのが一般的です。
空間系はディレイ、リバーブなどのこと。綺麗なエフェクト音を得るために、最後尾に配置することが多いです。
アンプで歪みを作る場合、空間系やモジュレーション系の位置には注意が必要です。空間系、モジュレーション系をアンプの前に繋いでしまうと、歪みを作り出す段(アンプ内部)よりも先にエフェクトが掛かってしまうので、良い効果が得られません。この場合、アンプのセンドリターン端子を利用します。
エフェクターをアンプのセンド/リターンに繋いだ様子
センドリターンはエフェクトループとも呼ばれるもので、アンプ内の音を作る段から発音する段の間に挟まっている、エフェクター接続用の端子です。アンプで歪みを作り、かつ空間系などを使いたい場合はここにエフェクターを繋いで本体に戻してやると、良い効果が得られます。
(アンプ内の音を作る段)→ センド端子 → モジュレーション系 → 空間系 → リターン端子 →(発音)
コンプレッサー、リミッターなどが該当します。ギターでは上記の3種に比べると使われる頻度が少なく、やや通好みのエフェクトです。最初に繋いで音を整えた上で後に送る方法と、歪み系の後に繋いで音量を整えたりする方法とが考えられますが、歪みよりもさらに前に繋ぐ方法が一般的です。
ちなみに、ダイナミクス系はベースで非常に多用するエフェクトで、特にスラップ奏法には必須です。繋ぐ位置はギターと同じで、最初に持ってくるのが一般的です。
ファズは通常の歪み系の仲間なので、歪み系と同じ考え方で大丈夫です。ただし、70年代などに製作されているオールドファズについては、ハイインピーダンス専用となっている機種があり、そのようなものはギターの次に繋がなくてはいけません。手前にワウやボリュームを挟むこともおすすめできず、ギターから直接の位置でないと真価が発揮できないので、注意が必要です。
ワウペダルは歪み系の前が一般的ですが、歪み系の後に入れると過激な掛かり方となり、これが好きであえてこう繋ぐギタリストも少なくありません。どのような音が欲しいのかを視野に入れて接続順を決めると良いでしょう。
ボリュームペダルについては、ハイインピーダンス仕様のものとローインピーダンス仕様のものとがあります。前者はギターの直後である必要があり、後者は一つ以上エフェクターを挟んでいればどこでも構いませんが、一般的にはアンプの直前に接続します。特に、ディレイの残響音だけを残して生音だけを調整したい場合、ディレイの前に接続します。
ハイインピーダンス仕様のものを最初に繋いだ場合、その後の歪みの量や質感が変わりますが、音量はさほど変わりません。ローインピーダンス仕様のものを歪み系よりも後に繋いだ場合は、音色の質感は変わらず、音量だけが変化します。通常ボリュームペダルに期待される役割は後者でしょう。
イコライザーは周波数ごとに音色を追い込めるので、音色にこだわりたい人向けのエフェクター。接続順は歪み系の前か後かの二択が考えられます。歪み系の前に繋いだ場合、その後の歪みの質感や量を変えます。後に繋ぐと、歪んだ音そのものを補正できますので、こちらの方が効果としては大きく感じられます。
ブースターはゲインアップや音量アップに使われるエフェクター。イコライザーと同じく、歪みの前か後かの二択が考えられ、前に繋いだ場合は歪み系のドライブの掛かり具合をさらに強くする効果があり、後に繋ぐと音量を劇的に変えられます。音質そのものを変えるために使うのか、ソロ時などの音量アップが目的なのかで接続順も変わってきます。
ここまでは一般的な話をしてきていますが、実際には自由で良いというのがエフェクターで、歪み系を複数繋いだり、ディレイを2個繋いだりするなどもよくある使い方です。ワウペダルを歪みの後に接続するのも、始めはあり得ない使い方でしたが、今ではその強烈な効果を得るために敢えてこうしているギタリストも増えてきました。これも発想の自由さが生んだ賜物です。一般的な使い方にこだわりすぎず、自分の音色を求めて接続順にも工夫してみると、また違った発見があるでしょう。
「A/B BOX」とも呼ばれるラインセレクターですが、単にエフェクターの切り替えだけでなく他にも様々な使い方が考えられます。(画像のラインセレクターはCutom Audio JapanのMLS-2)。
エフェクターのON/OFFを切り替える、いわゆる「エフェクトループ」として使うセッティングです。複数のエフェクターのON/OFFを一元化してコントロールできます。
2台のアンプを切り替える、90年代後期ヘヴィ・ロック全盛期のギタリストに見られることの多いセッティングです。クリーントーンのコンボアンプ/ハイゲインアンプヘッドを瞬時に切り替え、ABどちらのラインにも個別にエフェクトをかけることができるのが大きなメリットです。
2本のエレキギターを繋いだまま、瞬時に切り替えることができるセッティングです。ライブなどで素早くギターを持ち変えたい時に便利なセッティングです。