概要
世界において、ある時点から分岐し、分岐前の世界と並行に連なる別の世界のこと。『平行世界』『可能世界』とも呼ばれている。
異世界や別次元という概念とは違い、『この世界』と同じ次元に位置している。
解説
例えばこの世界にて、花瓶が落ちて割れたとする。
そうなったらそれは当然、この世界の住人にとっては『ただ花瓶が落ちて割れただけ』に過ぎない。
が、この時同時に『花瓶が落ちなかった、または割れなかった未来もあったかも知れない』という想像をすることもまた可能である。
この『花瓶が落ちなかった、または割れなかった』という架空の未来が、この世界とは違う固有の世界として存在している、という考え方がパラレルワールドなのである。
前述の例の場合、この世界にて『花瓶が落ちた』場合、この世界という存在そのものから『花瓶が落ちなかった世界』『花瓶は落ちたが割れなかった世界』が分裂して出現し、それぞれの世界同士、互いに干渉し合わない形(すなわち『平行』)で別々の時間を続行していく、ということになる。
この考えに倣うならば、『今日遅刻しなかった世界』『パソコンが壊れなかった世界』『テストで高得点をとった世界』など、人間ら生物が何らかの分岐点にさしかかるたび、パラレルワールドは常に出現、進行していると考えられる。
これをさらに突き詰めれば、パラレルワールドが発生する事象の有無(上記の例だと『花瓶が落ちた』世界と『落ちなかった』世界、さらに花瓶が落ちる原因となった事象が『起きた』世界と『起きなかった』世界とが分岐する)や、各パラレルワールドごとでさらに分岐するなどの、多重分岐も理論上可能であり、多次元的にパラレルワールドが存在するとも考えられる。
サブカルチャー作品における『パラレルワールド』
パラレルワールドはその性質上、『この世界に似た別の世界』という概念である。
これは、「もしも◯◯だったらどうなっていたのか」という空想を形にする上で都合が良い。
元々は物理学に属する考え方だが、幻想的な響きを持つ要素があることから、漫画・アニメ・ゲーム・ライトノベルなど様々なエンターテインメント作品にこの要素が適用されることもある。
また、その性質上、パラレルワールドはタイムトラベルモノとの融和性が非常に高く、近年はタイムトラベルに付き物のタイムパラドックス(歴史改変による矛盾)の解消のためにパラレルワールドが利用されるケースが非常に多い。
同様に、異世界転移やクロスオーバーも、パラレルワールドの設定が効くために多用される。たとえそれでタイムパラドックスが発生しても、転移やクロスオーバーが『起きた世界』と『起きなかった世界』に分岐させてしまえばいいのである。『敵が異次元から来た』、などの場合は、上記の通りの『多次元的な分岐』で解決させることもできる。
ただしこれにより、以前の作品との整合性を取る事に失敗した、またはロクに取る気のない場合の便利ワードとして使われるケースもちらほら見うけられ、安易な使用は設定の杜撰さが浮き彫りになる為、ファンからの批判も大きくなりやすい。
転じて、共通の設定や登場人物を元に筋が異なる複数の物語を展開する場合、その物語相互を『パラレルワールドの関係』と慣用句的に表現する場合がある。
例えば恋愛ゲームをはじめとするマルチエンディング方式のゲームでは、存在する複数の結末全てがパラレルワールドの関係にあると言える。
ストーリーのクライマックスで『夢オチ』になる場合、それまでの話がある意味のパラレルになると言える。
ドラマやアニメの映画化も、ある意味パラレルと言える本筋とは違うストーリーが多い。無論、『東のエデン』や『SP』など本放送の続編としてつながったり、『相棒』のように本放送の途中に映画の設定を差し挟んだりする例もある。
パラレルワールドの描かれ方
一口に『パラレルワールド』と言っても、作品によって描き方はさまざまに異なる。
これを扱った作品のバリエーションには、主に以下のようなものがある。
- 現実世界に対するパラレルワールドという設定。例 :『リアル鬼ごっこ』など
- 作中でパラレルワールドそのものを題材にしている(パラレルワールドが原因で起きた異変を主人公が解決する等)。例:『仮面ライダーディケイド』『ぼくらの』『Fate/Grandorder』『仮面ライダー3号』『ドラえもん のび太の魔界大冒険』『クロノクロス』など
- 登場人物が時間を逆行した結果パラレルワールドが発生する。例:『ドラえもん のび太のパラレル西遊記』『魔法少女まどか☆マギカ』『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』『ペルソナ2』『ドラゴンボール(人造人間編以降)』『ウルトラギャラクシーファイト大いなる陰謀』など
- アニメ版、漫画版、ドラマCD版などで少しずつ設定やストーリーが違っており、本編に対するパラレルワールドの関係という位置付け(逆に言えば、作中で起こった出来事はほぼ本編と同じ)。例 :『機動戦士ガンダム』『コードギアス』『ラピスリライツ』など
- 『原典にて本来とは違う展開が起きた』という前提で派生したパラレルワールドでの物語という位置付け(上との違いは、本編が原典の物語とは全くの別物であり、その理由付けとしてパラレルワールドを使っているところ)。例 :『Fate/Apocrypha』『劇場版仮面ライダー剣』『劇場版仮面ライダーガッチャード』『ソードアート・オンライン インフィニティ・モーメント』など
- 現実世界がベースであるぐらいしか共通点がなく基本的には別物である作品同士を、パラレルワールドであるということにして結びつけ、いろんな世界のヒーローたちを共演させる。この際パラレルワールド間を移動できる手段があるとやりやすい。例:ウルトラシリーズの『マルチバース』、『仮面ライダーシリーズ』の映画、『超昂大戦』など
- 変則的なケースとして、原典とよく似た出来事が過去に起こったが、その後の展開や前提条件が原典とその派生作品の流れとは相容れないものもある。例(シティーハンターに対してのエンジェル・ハート、プリキュアシリーズの初期三部作に対するキボウノチカラ〜オトナプリキュア‘23〜が挙げられる(エンジェル・ハートは槇村香が作中で既に死亡済み、キボウノチカラ〜オトナプリキュア‘23〜ではキュアドリームらの変身能力は失われていた)。この場合は過去作品の人気を再利用しつつも、新しい物語を構築できる事、原典から分岐した一つの可能性と提示することで、過去作品のファンの反発を抑えられることから、近年、多用されている作劇方法である。だが、シリーズ初見の者や久しく見ていない者からは過去シリーズの正統続編と捉えられやすいことによる、ファンの反発も起きる。過去の例では、エンジェル・ハートは連載開始前、シティーハンターの続編と盛んに宣伝されていたが、蓋を開けてみれば、前作ヒロイン枠の筈の槇村香が物語開始時点で既に死去している事が判明。混乱が生じた。その結果、同作はシティーハンターほどのヒット作にはならずじまい(アニメ、ドラマは制作されたが)。シティーハンターはシティーハンターで、エンジェル・ハートとは独立した物語として続き、現在へ至る。しかしながら、過去作品の人気を再利用しつつも、派生作品から独立した新しい物語を新規に構築できる利点は制作側に高く評価されたか、近年に人気はあるが、続編を出しにくい作品の新規展開で多用されるようになった。2023年のキボウノチカラ〜オトナプリキュア‘23〜はその視点で制作され、プリキュア5の後に平和となり、以後のプリキュア戦士の誕生がなかった場合の世界を描いている。
- 会社が版権を持ち同一タイトルを複数の作者で描いているアメコミでは古くから使われていた手法で、極端な例だと『スパイダーバース』では原作アメコミ版『スパイダーマン』の下にこれまでアメコミ版で描かれたパラレルワールドのみならず、東映版やマンガ版までもが一堂に会すと言う一大クロスオーバーを果たしている。つまり東映版も公式にアメコミ版とつながっている扱いなのである。『X-MEN』で『反ミュータント派』が「ミュータントの皆殺しに成功した世界から援軍を呼ぼう」なんて言い出した事も。
- 史実に対するパラレルワールド。例 :「もしもあの人が生きていれば……」などがある『真・三國無双と武田信玄の戦いがある『戦国無双』など。三国志の登場人物が女体化した『恋姫†無双シリーズ』もあるが、そもそも『三国志演義』自体が『三国志正史』に対するパラレルワールドとも言える。
現実世界に対するパラレル、史実に対するパラレル等においては読者・視聴者がパラレルワールドの出来事と認識しているだけで、作中ではパラレルワールドのパの字も出てこず、登場人物たちも他の世界の存在を認知しないこともしばしばある。
カードゲームアニメ(及びホビアニ)ではゲームのルール改訂や後年にリリースされたはずのカードやホビー等が旧作の時代ではなかったはずなのに、別作品ではしれっと存在する場合(カードファイト!!ヴァンガードでは顕著)もあるが、これらはパラレルと言うよりはリビルドやリメイク等と呼ばれるかもしれない。
パラレルワールドが登場する作品
別名・表記揺れ
パラレル:主に脚色の意味で使われる。また、パラレルの直訳は『平行』である。
平行世界 / 並行世界:『平行世界』は相似関係にあるが交わらない世界、『並行世界』は同一世界のある時点から分岐した複数の世界、または並び立つ(二つの)世界を指す。どちらかが誤字という訳ではない。
マルチバース:一つの宇宙を意味するユニバースに対し、マルチ(複数)の宇宙の意味で作られた造語。『多元宇宙』と訳される。
同一宇宙の中の多世界解釈であるパラレルワールドとは根本的には異なるが、同義語だと捉えられる事が多い。
公式企画への利用
『執筆応援プロジェクト~もしもあの日に戻れたら~』の参加に必要なタグの一つ。詳細は執筆応援PJ24Julを参照。
関連タグ
タイムマシン タイムトラベル タイムパラドックス 逆行 ループ(ループもの)
世界線 もしもボックス 並行同位体 リ・イマジネーションライダー なにかあった未来 / なにかなかった未来 もう一人の自分
コラボ/クロスオーバー:「お互いにパラレルワールドである」という前提の事が大半。これは単なる二次創作にも言えるが、(どちらかの)原作と異なる展開になった場合は「原作に対するパラレルワールド」と見る事も出来る。
ギャルゲー/アダルトゲーム:ヒロイン選択型の場合は、必然的に各々のルートがパラレルワールドとなり、作品次第だがNTRなどの危険性を減らしている。
メディアミックス(漫画版/コミカライズ版、アニメ版、実写版):『原作付きの作品だが、登場キャラの特徴や末路、存在等が原作と大きく異なったり真逆になっている』というパラレルワールドパターンも存在する。