カント寺院
かんとじいん
ささやき えいしょう いのり ねんじろ!
名作RPG『Wizardry』において、冒険者が利用できる…実際には(複数の意味で)利用したくはない…宗教施設。
シナリオ#1から#5、外伝シリーズをはじめとする和製wizの複数のタイトルで登場。
主に治癒と蘇生の奇跡をもたらす寺院として知られ、迷宮に挑む冒険者は持続性の不利な状態異常(死亡を含む)を解除するためにこの寺院を訪れる。
冒険者の状態異常のうち、「毒」状態は迷宮の外に出て太陽の光を浴びれば自然に中和されるため、カント寺院の世話になるのは「麻痺」「石化」の治癒、「死亡」からの蘇生、「灰化」からの復活となる。
癒しの儀式の際に表示されるメッセージは " MURMUR-CHANT-PRAY-INVOKE " で、日本語訳は版によって「ささやき - えいしょう - いのり - ねんじろ!」「ささやき - いのり - えいしょう - ねんじろ!」もしくはどちらかの漢字表記である。
儀式を執り行う前に、対象者のレベルに比例した寄付金(お布施)が要求され、所持金がそれを下回っていると
「この背教者め!出て行け!!」
と、問答無用で叩きだされる。
それでも麻痺と石化は寄付金さえ払えば確実に直してもらえるだけマシなのだが、死亡と灰化は結構な割合で失敗する(対象者の生命力に影響される)。
死亡状態からの蘇生に失敗すると灰化状態に進行し、灰化状態からの復活(寄付金は蘇生の儀式より高額)に失敗すると消失状態となって埋葬されます。
ちなみに結果が失敗に終わっても、寄付金は返金されない。
結果の成否はカドルト神の御意思なので、儀式の執行に対する寺院への寄付金とは関係ないのである。…などという坊主の理屈は冒険者には受け入れがたいもので、「ボルタック商店の強気の価格設定もカント寺院よりははるかにマシ」「ワードナやトレボー以上に悪辣」と広く認識されているほどである。
シナリオ#4では主人公が寺院に乗り込み、カドルト神を象った巨人サイズの石像と対峙する展開となる。
ただしその正体はインチキである。
小説版『ワードナの逆襲』ではカント寺院の腐敗ぶりが描かれるとともに、カドルト神の正体が一段と強烈なものになっている。
英単語としての "cant" には、「うわべだけの言葉」「もったいぶった表現」「偽善的な言い回し」「中身のない表面的な指標」などの意味があり、儀式の成功率が低いわりに寄付金の徴収は熱心な寺院には相応しい名称であるといえる。
因みに"Cant"は作者であるロバート・ウッドヘッド氏がD&Dで使用していたクレリックのキャラクターから取られている(同じく"Boltac"や"Gilgamesh"も一緒にプレイしていた友人たちのキャラクター)。
『ウィザードリィエンパイア』の舞台となるカシナート帝国、特に帝都であるミルダール城城下町は数百年後にリルガミンと呼ばれることが示唆されており、この時代に存在していたのはモルログ寺院。
カント寺院と同様の儀式を執り行う神官たちのほか、雪正というサムライが常駐しており、迷宮内で遭難した冒険者の回収を請け負っている。治癒の儀式と同じく、遭難現場の階層と対象者のレベルに応じた料金が先払いとなっており、一定確率で失敗する(遭難状態のままになる)がやはり返金はしてもらえない。
またこの寺院の責任者は、シナリオ開始時点では消息不明となっている主席司教カント。
十年後の『エンパイアⅡ』の時代には旧帝都が自治都市に、寺院は聖カント寺院となっている。