山彦とは (ヤマビコとは) [単語記事]

山彦とは、

音や声が山、壁などに反射してかえってくる現象。
日本の山の神、山の精、妖怪。1.を引き起こすと考えられた。幽谷響、空谷響とも表記する。当記事で解説。

このほかの「やまびこ」と呼称される列車、バス、会社、イネの品種などについては「やまびこ」を参照。

概要

山びこ
（佐脇嵩之『百怪図巻』）

山の斜面などに向かって声を発したときに、その声が反響して遅れて聞こえてくる現象は、かつて山の精あるいは山に棲む妖怪がその声を真似しているのだと考えられ、これを山彦と呼んだ。

地方によって呼子・呼子鳥（鳥取県）、山の小僧（静岡県）などとも呼ばれる。木魂・木霊・木魅（こだま）ともいわれ、これは山の精でなく樹木の霊によるものと考えられたものである。

通常は声を返してくるだけで特に害のないものとされるが、福岡県の八女などに伝わる類似の怪異「山おらび」は、山に入ってヤイヤイと叫ぶとどこからかヤイヤイ声が返ってきて、それを続けるうちにその返り声が近付いてきて、遂には叫んでいた人間を死に至らしめるという。なお、この時割れ鐘を叩くと死を避けられるという。佐賀県の東松浦郡では「オラビソウケ」と呼ばれる。ただしこれは山彦とは別物ともいう。なお「おらぶ」とは九州の方言で叫ぶ意味。

形の見えない怪異であるために、姿が描かれる場合まちまち。鳥取県の呼子鳥はその名の通り鳥の姿をしている。佐脇嵩之『百怪図巻』、鳥山石燕『画図百鬼夜行』などの妖怪画集では犬のような獣の姿で描かれているが、これは中国の木の精霊・彭侯（ほうこう）の影響がみられる。前述の通り山彦は木の霊が起こすともされ、このことから彭侯は山彦と同一視されることもあった。

創作作品における山彦

ゲゲゲの鬼太郎
山や谷にこだましながら飛び歩く、蓑笠と出っ歯が特徴のいたずらな妖怪として登場。その声の大きさから、鬼太郎軍団の伝令役をつとめる。名前は呼子、山彦、山小僧などとさまざまに呼ばれ、また一つ目だったり二つ目だったり一本足だったり二本足だったりする。
悪魔くん
風の精の力によって妖怪化した老木・山彦妖怪として登場。人間を樹木に変えたり取り込んだりといった力を持っていた。
仮面ライダー響鬼
「ヤマビコ」「ヨブコ」「コダマ」というそれぞれ別の魔化魍が登場している。
東方神霊廟
登場キャラクターのひとり「幽谷響子」は山彦をモデルとしている。『画図百鬼夜行』などを参考にしてか、犬耳のようなものが生えた少女の姿をしている。