コウジカビとは、不完全菌の一種である。本記事では、コウジカビが持つ共通の特徴に加えて、コウジカビ属に含まれる主な種について簡単に解説する。
【分類】ユーロチウム目マユハキタケ科コウジカビ属
【学名】Aspergillus spp.
(学名の由来)Aspergillus→聖水刷毛(宗教儀式に用いられる水を振り掛ける器具)
いわゆるカビであり、菌糸を伸ばしてコロニーを形成する。カビの仲間は主に、分生子(胞子の一種)とそれをつくる器官の形状で見分けるのだが、コウジカビの仲間では菌糸から長い柄(分生子柄)が伸び、その先端(頂嚢)が球形や楕円形に膨らむ。そこにたくさんの分生子形成細胞(フィアライド)がつき、そこで作られた分生子が押し出されるように鎖状につながるのが特徴である。
漫画「もやしもん」のキャラクターとして登場するA・オリゼーを見ると、顔にあたる部分が頂嚢で、そこから5つ伸びているのが分生子の鎖である。フィアライドは表現されていない。実在の菌では分生子鎖は「顔面」を埋め尽くすくらい多数、全方向に伸びている。
熱帯~亜熱帯を中心に分布する。酵素をつくる種類が多く、中には人間にとって非常に有用な酵素もある。植物や動物に病気を起こす種類もあり、特に免疫力の低下したヒトに対しては致命的な病気(アスペルギルス症)を起こすものもある。昆虫に病原性のある菌も多いが、病状が全身に及ぶことは少なく、脱皮などによって治癒することも多い。
「コウジカビ」の名の通り、麹をつくるための微生物として最も重要である。麹とは、米や麦や大豆にこのカビを植えつけて繁殖させたものであり、日本を含む東アジア地域の多くの発酵食品において、その原料をかもすために欠かせない材料である。
クロカビ・黒麹ともよばれる。分生子もコロニーも真っ黒。特に熱帯で植物に黒カビ病の被害を与えるが、それを差し引いても人類に多大な貢献をしているカビだといえる。
雑菌の繁殖を抑えるクエン酸という物質を作り出し、自身も酸に強いため、有害な雑菌が混入する危険性が高い、暑い地域での醸造を可能にしている。また、クエン酸は食品・飲料の酸味料・pH調整剤として重要で、世界的に1,000万t/年生産されている、工業的に非常に重要な酸である。かつてはレモンの仲間からこれを得ていたが、1928年から現在までA・ニガーが世界のクエン酸のほとんどを生産している。醤油や味噌を食べるときにカビを意識することはあっても、ジュースやサプリメントにもカビが関わっていることは意外ではないだろうか。このような産業上の重要性から、ゲノム全塩基配列解析が進められ、2005年に完了した。
余談ではあるが、ニゲロースという二糖があり、その別名がサケビオースである。「逃げろ」「叫び」を連想させる名前が面白い。このニゲロースという名前は、A・ニガーの種小名に由来し、本種がつくる多糖類「ニゲラン」はニゲロースのポリマーである。ちなみにサケビオースは「酒」に由来する。
ショウユコウジカビという和名を持つ。A・オリゼーがデンプンの分解を得意とするのに対して、本種はタンパク質をアミノ酸に分解する性質が特に強く、それを利用して味噌・醤油の製造に使われる。
A・フラブスの陰に隠れて目立たないが、実はこの菌も猛毒のアフラトキシンをつくる。A・オリゼーとA・フラブスが非常に近縁であるように、A・パラシティクスはA・ソーエと非常に近縁で区別が難しい。しかし、A・ソーエはある遺伝子に変異があり、アフラトキシンを産生しないことが証明された。
アワモリコウジカビという和名を持つ。胞子は黒く、この菌で作られた麹はA・ニガーのものと同様、黒麹という。A・ニガーと同様、酸を産生するので暑い土地での醸造に適し、沖縄県の特産品である泡盛をつくるのに用いられる。2008年、日本の研究機関によって全ゲノムのドラフト塩基配列が解読された。
(学名の由来)kawachii→本種を発見し実用化に成功した、近代焼酎の父・河内源一郎にちなむ
※本種はA・アワモリの白色変異であり、この学名は正式には認められていないので注意!
白麹菌ともいい、焼酎の製造に広く用いられている。焼酎製造では、それに関わる人の肌や衣服が胞子で黒く汚れることが嫌われていたので、河内源一郎が発見したこの白い麹は九州全域で広く使われるようになった。
タマリコウジカビともいい、たまり醤油・たまり味噌・八丁味噌などの発酵に関わる。A・オリゼーに近縁。
クサイロカビやカツオブシカビという和名もある。タンパク質をもりもり分解でき、高塩分条件と乾燥に強いので、カツオブシの製造段階の仕上げにあたる「カビ付け」の工程で用いられている。この菌のはたらきによってカツオブシの余分な脂肪が分解され、風味が増すほか、独特の芳香および光沢が出る。
かなりの高温(52℃)まで生育可能というすごい性質を持つ。すなわち、恒温動物の体温程度なら余裕で生育できるということである。ペンギンなどの鳥類の肺を侵すほか、衰弱したヒトの肺に結核に似た症状の肺アスペルギルス症を起こすこともある病原菌である。
ヒトに感染するコウジカビ属の中ではもっとも多く報告される(67%)種類である。多くの場合日和見感染であるが、これは治療が困難な恐ろしい病気である。一方、この菌からは抗腫瘍剤としての利用が期待されるスピロトリプロスタチンという物質が発見されている。病原菌としての重要性からゲノム全塩基配列解析が進められ、2005年に完了した。
アカパンカビと並び、遺伝学および細胞周期や代謝の研究において最も重要なカビである。実は、抗生物質のペニシリンおよびキサントシリンXをつくることができる。特にペニシリンの生合成経路・生産の研究には本家本元のP・クリソゲヌムよりも多く用いられてきた。モデル生物としての重要性から、ゲノム全塩基配列解析が進められ、2005年に完了した。
(学名の由来)terreus→地面の
pH2.0以下の強酸性でも生育可能というすごい性質を持つ。イタコン酸を産生するが、この酸は樹脂・プラスチック・合成繊維の原料になるので工業的に重要である。産業上の重要性から、ゲノム全塩基配列解析が進められ、既に完了した。
かなりヤバい毒であるオクラトキシンAを生産する。コーヒー豆を侵すが、焙煎の過程を経ると毒は失われるといわれている。オクラトキシンAは腎臓に強い毒性があり、肝毒性も持っている。これはヒトの風土病・バルカン腎症やブタ腎症の原因物質である。
掲示板
16 ななしのよっしん
2024/03/27(水) 17:28:25 ID: QezxvpjOH3
発酵食品で大事なのは微生物の産生物であって微生物はあくまで道具だろ?
なんでカビを濃縮したものをサプリとか称して有り難がって食わねばならんのか
体に悪そうだけどな
サプリ自体が食品でも医薬品でもない詐欺商品だから食品や医薬品に迷惑かけるなら根絶されればいい
17 ななしのよっしん
2024/03/27(水) 17:36:29 ID: ufZXhTIQtx
小林製薬の製品開発者を起訴できないんだろうか
人命が失われてるのに
18 ななしのよっしん
2024/08/24(土) 15:46:11 ID: 59HGT1mQZV
共生の為に菌の立場の観察も必要みたいね
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最終更新:2025/01/11(土) 08:00
最終更新:2025/01/11(土) 08:00
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