日本生命は1.2兆円、積水ハウスは7200億円…日本企業が超大型買収に踏み切る“真の狙い”に背筋が伸びるPhoto by Yasuo Katatae

2024年は、いわゆる名門企業が、米国企業の大型買収に踏み切るのが目立った年だった。自動車や製薬などグローバルな競争が当たり前となった業種に加え、今後は保険や住宅、食品、生活用品など内需型の業界でも、海外進出を重視する企業は増えるだろう。2050年に日本の人口は9500万人程度になる。今後、全国の自治体のうち4割が消滅する可能性も指摘されている。内需型企業はどのように生き残るのか――。日本生命や積水ハウスの事例は、“先取り戦略”の表れだと理解できる。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

内需型企業が縮小均衡の罠にはまらないために…

 ついに日本の生命保険会社がグローバル競争に挑むのか――。国内生保最大手である日本生命が、米国系の3社のM&Aに2兆円近くを投じる。特に、米系生保レゾリューションライフの買収は、その額が約1.2兆円と、日本の金融関連企業の海外買収案件としては過去最大規模となるだけに注目される。

 日本生命はわが国を代表する生命保険会社であり、同社の筒井義信会長は経団連の次期会長に就任予定だ。いわゆる国内型の名門企業が、今後の成長戦略として米国企業の大型買収に踏み切った、この意義は大きい。

 わが国では少子高齢化が急速に進んでいる。一方で、デジタル化の進展は遅れ気味だ。生命保険のような超国内型の業種では、これまでのような安定した成長を期待するのは難しくなっている。成長余地の大きい海外に活路を求めるのは至極当然のことといえる。

 今年の大手企業のM&A案件で、同様の意図としては積水ハウスの例も挙げられる。米住宅会社のM.D.C.ホールディングスを約7200億円で買収すると発表している。

 海外で、自社の優位性を生かして成長を目指すのは簡単なことではない。自国とは違ったリスクを負うことになるなど、ビジネス環境は異なる。ただ、そうしたマイナス面に逡巡していると、わが国企業の多くは縮小均衡の罠にはまるだけだ。

 2025年は米国でトランプ政権が誕生することにより、さまざまなビジネスのリスクが浮上することが想定される。一方で、日本企業に圧倒的に欠けているものの一つに、“挑戦の精神”が挙げられる。リスクを恐れず先手を打って海外市場を開拓する日本企業に期待したい。