「コスパのいいこと」だけやり続けた人の末路【ヤマザキマリが教える】ヤマザキマリさん 撮影/加藤昌人、ヘアメイク/田光一恵(TRUE)
*本稿は、現在発売中の紙媒体(雑誌)「息子・娘を入れたい会社2025」の「Visionary Leader 『多様性の時代』生き方、働き方」を転載し、後半を加筆したものです。

企業でも個人でも多様性がますます尊重される時代に入っていく中で、どのように生き、働いていけばよいか、経験豊かな5人のプロフェッショナルに聞いた。2人目は、『テルマエ・ロマエ』などのヒット作で知られるヤマザキマリ氏。海外暮らしを経た人生観、昨今のコストパフォーマンス・タイムパフォーマンスを優先する時代性への向き合い方、表現者としての信条から未来の作品への意欲など、インタビューの後編をお届けする。(取材・文/木俣 冬)

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歴史や地理を知ることで
価値観が違う人を理解する

 ヤマザキマリさんは現在、東京造形大学客員教授、日本女子大学特別招聘教授を務めている。美術の話を中心に、仕事論や国際交流などについて講義する際、欠かせない話題がある。それは歴史の話だ。

「どんな教科であろうと幹には歴史があると思うんです。人文系のみならず、数学や科学のような学術も古代から存在します。紀元前の人たちがなぜ数学や科学に感心を持つようになったのか、その歴史を知ることで理系の学問も奥行きが増すのではないでしょうか」

 これまで、エジプト、シリア、ポルトガル、米国、そして再びイタリアと、いろいろな国で暮らしてきた(その間に結婚)。そこで、日本とは異なる文化を知った。

「どこの国で暮らしても波乱万丈でしたが(笑)、生きるなんてのはこんなものだろうとやり過ごしてきました」