鉄道業界は不動産事業の強化によって、資産効率向上を図る戦略に舵を切りつつある。東日本旅客鉄道(JR東日本)や南海電気鉄道(南海電鉄)、名古屋鉄道(名鉄)など、日本各地の鉄道会社が大規模再開発による沿線価値向上を目指す一方で、建設費高騰がリスクに。特集『総予測2025』の本稿では、2025年の鉄道業界の成長戦略を解説する。(ダイヤモンド編集部 田中唯翔)
西武HDに南海電鉄、名鉄も
鉄道各社が不動産事業を強化中!
鉄道業界では、不動産戦略が一層加速する1年になる。主力の運輸事業が新型コロナウイルス感染拡大で収益減に陥った経験から、多角的な収益構造への転換を各社が進めているからだ。
例えば西武ホールディングス(HD)は2024年春に公表した中期経営計画で、不動産を流動化して得た資金を別の不動産に再投資する「不動産回転型ビジネス」の拡大を掲げた。24年12月12日には、都心旗艦ビルの「東京ガーデンテラス紀尾井町」を米投資ファンドのブラックストーンに約4000億円で売却することを発表。同ビルの売却を皮切りに西武HDは不動産事業の強化を図る。
不動産事業の拡大には、全国で鉄道各社が乗り出している。直近では、南海電気鉄道(南海電鉄)が24年10月に鉄道事業の分社化を発表した。12月には「通天閣」を運営する通天閣観光の子会社化を表明し、沿線価値向上に動きだした。
中京圏では名古屋鉄道(名鉄)が24年春発表の中期経営計画で、不動産事業の収益力強化を宣言。11月には、不動産事業の核となる名鉄名古屋駅前再開発計画の概要を明らかにした。これをグループ成長の起爆剤とする狙いだ。
実は、これらの不動産事業を本格化させる鉄道会社には共通点がある。ROA(総資産利益率)が低く、資産効率が悪いという問題を抱えているのだ。次ページでは、上場鉄道会社を対象にROAワースト10社を算出した。この順位が高いと、アクティビストに照準を当てられやすい。