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ホワイトカラーの生産性、それが組織として集合体となったときの生産性については、古今東西頭の痛い問題であり、いまだに多くの無駄が放置されている。とりわけ、時間に対する感覚は、個人以上に組織のほうがルーズであり、それが莫大な損失につながっているという。弊誌2013年5月号論文「ドリーム・チームは機能するか」執筆者のひとり、ジェームズ・ルート氏に聞いた。
戦略が実行段階でつまずく4つの理由
――日本企業の生産性は、他国に比べて低いのでしょうか。
その議論はかれこれ15年以上続いていますね。問題は、製造セクターの生産性の高さに比べて、サービス・セクターの生産性が低いことです。世界でサービス化が進むなか、この懸念がさらに重大なものとなってきたように思います。
背景には、日本経済が縮小し、グローバル化せざるを得なくなっていくなかで、組織をどのように成長させるかという大きな課題があります。もちろん、労働基準法の問題や女性活用の遅れ、いまだ強固な階層構造、日本語という言語の問題などが、ネックとなっていることはあります。ソフィア・コッポラ監督の『ロスト・イン・トランスレーション』という映画がありましたが、日本語でのコミュニケーションはビジネスにおいては曖昧で不都合が多いのは事実です。
生産性にせよ、イノベーションにせよ、成長にせよ、目標をもっと明確にしなければなりません。日本に創造性はあるのですから。イッセイミヤケ、安藤忠雄、宮崎駿、村上春樹などの芸術方面はもとより、ビジネスにおいてもユニクロや楽天、ソフトバンクなど独創性のある企業があります。CEOとリーダーシップ・チームが何を目指すか、それを組織で共有できるかが重要なのです。
――リーダーシップ・チームの描く成長戦略が実行段階でつまずくことは往々にしてありますね。これも生産性を左右する大きな問題の一つかと思います。
ええ。それは成長戦略と組織デザインの間にギャップがあるということです。4つの要素で考えてみるとよいでしょう。
第一に、組織構造。人間は箱の中、枠の中で動くものです。リポートラインがどうなっているかなど、つまりは組織構造が機能するものとなっているかを確認する必要があります。
第二に、アカウンタビリティ(説明責任)。会議1つとっても、目的は情報共有なのか、意思決定なのか、アイデア創出なのかによってまるで運営が異なってきます。とりわけ投資をはじめとするマネジメントの意思決定は、テーマと人数を絞り込んで行わなければ機能しません。目的のない会議は、日本企業に限らず案外多く、これは会社の文化が色濃く出る部分です。
第三に、ガバナンス。新たな戦略を導入するには、業務上の運営を変える必要が生じます。イノベーションを3倍に増やすという目標があるにもかかわらず、製造チームとマーケティングチームが従来通り年1回しかビジネスレビューを行わず、サプライチェーンが対応できないようでは、元も子もありません。あるいは、片やコスト削減、片や新製品拡充と、異なる目的と責任を持っていた部門が、それを見直さないまま協力するのも無理というものです。
第四に、行動規範。仕事のやり方や経営の基本思想といったものです。とりわけ日本企業の場合、海外市場に出ていく際に、社内の慣習について、何をどのように変えていくのかが明確になっているでしょうか。英語を公用語とするのか、日本人以外のシニアマネジャーを設置するのか、セールスやマーケティングを変えるのか。流通/デリバリーもまったく異なってくるでしょう。それらを欧米企業のように行うのか、独自路線で考えるのか。いずれにせよ、何をどのように測るか、それがどのように報酬にリンクするかなどを明確にしなければなりなせん。測定基準とその結果をはっきりさせなければ、人間の行動は変わらないのです。
トップダウンとボトムアップ、世界中の会社がそれぞれ固有の文化を抱えながら、その二者のバランスの中でベストな解を探しているわけです。