はじめに
この記事は CyberAgent Developers Advent Calendar 2024 17日目の記事です。
こんにちは。 AmebaLIFE事業本部 Ameba Privacy&Revenue室の星と申します。
Privacy&Revenue室では、
サービス・事業の利益と、ユーザーにとっての価値向上のバランスを取り続ける
というミッションを掲げておりまして、AmebaのPrivacy保護と収益向上を両立させるというのを目指しております。
収益向上という観点では、広告施策導入あたっての調査・検討・判断といったことを行っておりまして、今回の記事では、Amebaメディア(Publsher)目線での広告施策への取り組みにあたって、どういった情報を元に取り組んでいるか?をいくつか紹介させていただきます。
法規制・プラットフォームのTracking制限など、Web広告への制限が厳しくなってきており、広告施策を打っていく中で読めない部分が多くなってきているかと思いまして、今回の情報が読んでくださる皆様の参考になればと考えております。
Amebaについて
まずはAmebaについて紹介させて下さい。
Amebaでは様々なサービスを展開しているのですが、私が主に担当しているのはアメーバブログになります。
ブログサービスで国内最大規模のサービスとなっておりまして、みなさまのお陰で今年20周年を迎えました。
スマートフォンサイト・PCサイト・iOSアプリ・Androidアプリで展開しておりまして、是非みなさんもアメブロでブログを書いていただけますと!
Chrome 3rdPartyCookie制限
ざっくり前提
- Privacy Sandbox プロジェクトでChromeでの3rdPartyCookie(以降3PCと記載)制限が検討・進行されている。
- 上記プロジェクトでは、3PCの代替となる各種APIが準備されている
- もろもろはこちらが参考になるかと思います。
- プロジェクトはGoogleと英国CMA / ICOがコミットメントを取って進めている。大きなテーマは制限によって競争がGoogle優位にならないようにという点。
- QごとにReportが出ており、上記のリンクから確認できます(2024_2-3Qは後述の方向転換により1つのReportになっています)
- Web広告のターゲティングは3PCに依存する部分が依然として多く、Chromeの3PC制限でWeb広告に大きな影響が予想される
- WebKit(主にSafari)は既に3PC制限済み
Chrome 3PC制限の方向転換
2024/07/22に以下の発表がありました。
A new path for Privacy Sandbox on the web
ざっくり言うと、3PCを廃止するのではなく、ユーザが3PC利用を選択できるようにするといった方向転換のようです。
執筆時点では、まだ詳細は出てきていないのですがデフォルト利用可能なのか( オプトアウト or オプトイン)が大きな分かれ目になるかと考えています。
参考までにApple(iOSアプリなど)のATT(App Tracking Transparency)ではIDFA(広告用デバイスID)デフォルト利用不可(オプトイン方式)であり、許可(オプトイン)ユーザ が2割程となっており、仮にChromeの3PCもオプトイン方式になったとすると、Web広告への影響はより大きいと考えられます。
補足で、あくまで個人的にですが、前述の2024 2-3QのGoogle Privacy Sandbox Progress Reportに、以下の記載があるのも気になっています。(オプトインを想定している?)
新しいエクスペリエンスがどのようなものになるかについての詳細はまだお伝えできませんが、
Chrome において Cookie を使用しないトラフィックが大幅に増加することは予想されます。
Chrome 3PC制限による影響計測
前置きが長くなりましたが、AmebaでのChrome 3PC制限での影響計測について。
GoogleAdManager(以降GAMと記載)を利用しているAmebaの一部の広告枠で、以下のようにCPM推移をモニタリングしています。
- 緑線:3PC有効・Privacy Sandbox API利用可能
- オレンジ線:3PC無効・Privacy Sandbox API利用可能
- 赤線:3PC無効・Privacy Sandbox API利用不可
(具体的な数字などはフィルタさせていただいています)
なので、オレンジ線がChrome 3PC制限後の状態と近しく、以下のことが言えるかと思います。
- オレンジ線が緑線に近くなるほど、3PC制限後の影響は少ない
- オレンジ線が赤線に近くなるほど、3PC制限後の影響は大きい
このようにCPM推移を見ながら、影響試算し施策の検討をしているという状況になります。
また、2024/07/22の方向転換の発表の前後でCPM推移の傾向が変わっているというのが見えます。
(あくまでAmebaの一部広告枠のみのデータであるため、一般的とは言えないかもしれませんが。)
- 〜2024/07/22
- オレンジ線(3PC無効・Privacy Sandbox API利用可能)が徐々に上がっていた
- 2024/07/22〜
- オレンジ線(3PC無効・Privacy Sandbox API利用可能)が徐々に下がっており、赤線(3PC無効・Privacy Sandbox API使用不可)と近しいところまで落ちている
ここからは、個人的で勝手な推測になりますが、
2024/07/22の方向転換の発表前は、各事業社Privacy Sandbox APIへの取り組みに注力していたが、方向転換の発表があり、各事業社で具体的な時期が見えてない制限への対策に、予算を取る・優先度を上げるというのも難しいのだろうなとも思え、Privacy Sandbox APIへの取り組みへの優先度が落ちているのかなと考えます。
モニタリング数字の出し方について
ざっくり前提
- Chromeの3PC廃止に向けてChrome主導のテストが行われている
- Chromeが機能利用で分類されたテストグループに割り振られており、グループ毎にラベル付けがされている。
- 詳細:Chrome 主導のテスト
ラベルの取得
// Feature detect temporary API first
if ('cookieDeprecationLabel' in navigator) {
// Request value and resolve promise
navigator.cookieDeprecationLabel.getValue().then((label) => {
console.log(label);
// Expected output: "example_label_1"
});
}
こちらで取得した、cookieDeprecationLabelをGAMへの広告リクエストにKey-Valueで乗せています。
ラベルと機能利用分類のグループ対応
アド マネージャーのプライバシー サンドボックス テストに関する最新情報#(2023 年 11 月 22 日公開)Chrome を利用したテストプラン
を元に上記で取得するラベルと機能利用分類のグループを割り出します。
上記のメトリクスで利用しているのは、それぞれ以下になります。
- 緑線:3PC有効・Privacy Sandbox API利用可能
- オレンジ線:3PC無効・Privacy Sandbox API利用可能
- 赤線:3PC無効・Privacy Sandbox API利用不可
で、あとはGAMのレポートで、Key-Valueと必要な項目を設定して出力するといった感じです。
執筆時点ではこちらはChrome 132まで有効な様です。(Chrome 132 Stable 2025/1/8 )
Chrome#3rdPartyCookieの制限に関して、Publisher側でも出来ることがまだあると考えており、各事業社の方達と連携して行きたく、一緒に取り組んでいただける事業社の方達などいらっしゃいましたら、是非ご連絡ください。
GoogleAdManager DataTransfer Reports
次にGoogleAdManager DataTransfer Reportsについて。
AdXでのイベントレベルでの広告配信実績データが取得できるといったもので、こちらも利用しています。
Ad Manager Data Transfer reports
上記の記事にもあるように広告配信においてのさまざまな段階に紐づけられたファイルがあります。
GCS上に作成される各種レポートファイルをBigQuery Data Transfer Serviceを利用して、AmebaのBigQueryに取り込んで利用しています。
Amebaでは特にImpression単位のNetworkBackfillImpressionsを利用しており、
上記リンクの項目の中から、利用したい項目をGoogleAdManager(以降GAMと記載)の管理画面で設定して取り込んでいます。
GAMのレポートで取得可能な項目も多いですが、広告掲載されたURL x 広告Impression単位でデータを取得できるのが大きなメリットと考えます。
NetworkBackfillImpressionsでの広告掲載されたURLは、以下項目をケースごとに利用して振り分けて抽出しています。
RefererURLだけでURLが特定できないケースもあり、その場合はCustomTargetingに設定したURLの識別子を掛け合わせてURLを構築しているといった感じです。
あくまで例ですが、URL単位での広告収益が算出できるため、URLをカテゴリ分類することで、広告の収益性が高いカテゴリとそこに紐づくURLを抽出できるということになり、そちらの分類に紐づくURL(ページ)を正しく充実させ・増やしていけば、広告の収益性が高く、より有用度の高いサイトになっていくはず…といった施策の検討などにも利用できたりするのではと考えます。
URL単位の収益であれば、Key-Valueを利用してレポートに出力出来なくはないのですが、既に多くのKey-Valueを使っていたりもしまして、レポートの取扱いなどを考えるとDataTransferファイルをBigQueryに取り込んでしまって、URLの構築・収益試算を行うというのが非常にやりやすいかと思います。
また、フロア設定の検討材料などにも利用しておりまして、
Impression単位での収益(落札額)が出せるので、各広告枠の落札額のレンジごと(Amebaでは1円単位で算出)のImpression数・推移が分かるということになり、こちらを元にフロア設定の検討をおこなっています。
こちらは、GAM管理画面の統一価格設定ルール#インサイトでも近しい情報を見れなくはないのですが、実数を持って来て分析となると厳しい状況でした。BigQueryにデータを取り込んで実際の数字を元に検討を行うことで、より精度が上げやすいのではないかと考えます。
このように、DataTransferファイルをBigQueryに取り込み、実際の広告配信実績の数字を手元に置いて分析することで、分析の解像度が上がったと感じでおり、広告施策だけでなく、サービス施策の検討・優先度の材料とすることが出来ており、非常に有用と感じております。
※もう少し分析部分のキャプチャなど貼りたかったのですが、どうしても配信実績の数字などが出てしまうことになり、文字文字しくなってしまい申し訳ありません。
Safari 気をそらすものコントロール(Distraction Control)
最後にSafariで導入された気をそらすものコントロール(Distraction Control)について調査した結果を共有させてもらえればと。
上記の様に、Safariで該当の項目を項目を選択して非表示にすることができるといった機能になります。
初回に表示されるダイアログにもあるように、静的な要素ではなく、頻繁に更新される広告やコンテンツなどは非表示状態は永続化されないようです。
あくまでAmeba内で挙動を確認したところになりますが、以下の挙動をすることが多かったです。
- 同一構成のページの遷移であれば、非表示状態が維持される
- 異なる構成のページ遷移を挟むと、非表示状態が維持されない
また、上記のサンプルは、広告を非表示にする -> 画面をReloadという動きをしているのですが、Reload後に一瞬表示され、非表示になるといった動きをしているようでした、こういった動作もするようであり、このケースであると広告Request / Impressionは発生してしまっており、広告Clickが出来ないという状況になるかと思うので、こういった部分でも影響が出てくるのでは?という懸念があります。
また、内部の処理としては、user-style # display : none!importantで制御しているようです。
今のところ、Amebaではこちらが要因と考えられるような広告影響は出てきていないですが、非表示状態が永続化されたり、利用が広まっていくとなると大きな影響になっていくと考えられます。
さいごに
法規制やプラットフォームの制限が厳しくなっていく中で、限られたリソースで広告施策を実行し、できる限り成果を上げていくためには、規制・制限の中身を正確に把握し、広告配信実績の解像度をより上げていくことで、運営するサービスに最適な施策を検討・判断し、効率的に進めていくことが必要と考えています。今後もよりユーザの方達が安全・安心に利用していただいた上で、効果的な広告施策を打っていけるように精進していきます。