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国歌「君が代」は、「異常」なほどかどうかは分かりませんが、 譜面上は易しく、しかし他人に聴かせられるようにきちんと歌うのは難しい歌曲だと思います。 この曲は、元々は保育唱歌の一つとして(雅楽師の奥好義によって)作曲されました。保育唱歌は幼児向けの唱歌ということですから、幼児でも歌えるメロディということで、この曲も例外ではありません。 実際、君が代(のメロディ)で使われている音名は「ド・レ・ミ・ソ・ラ・シ」の6音のみです。 音域は「ド」から1オクターブ上の「レ」までの9度ですから、狭いとは言えませんが、そんなに広くはありません。(ちなみに童謡「ぞうさん」も同じ音域です。) リズム(というか音価=音を伸ばす長さ)も、四分音符を中心に、二分音符が6箇所、八分音符が5箇所、付点四分音符が1箇所なので、かなり単純な方です。 ですから、確かに「君が代」は幼児でも歌える簡単な曲なのです。 これ↓は、子供たち(+成人女子)による斉唱です。 http://www.youtube.com/watch?v=WmgpXRJVrXQ 上手ではないですが、純朴としていいと思います。 さて、でも「君が代」をきちんと歌うのは、難しいのです。 特に、無伴奏の独唱は難しいです。 ポイントが何点かあります。 1点目は、音程を保つ難しさです。 全体的に音の動きが少ないので、誤魔化しがきかず、ブレが目立ってしまうのです。 また、旋律上1箇所だけ歌いづらい所もあります。 それは「八千代に」の「千」です。音名は「シ」になります。 この曲の旋律は「律音階」という雅楽の旋法が使われています。 基本形は「レ・ミ・ソ・ラ・シ」という5音音階です。しかし、これが発展して 「レ」に1音上行する時は「シ」でなく「ド」に変更されました。 (その方がスムーズだからだと思います。) つまり「上行:レ・ミ・ソ・ラ・ド・レ|下行:レ・シ・ラ・ソ・ミ・レ」という旋法になります。 そしてこの上行形は、順番を変えて「ド」から始めると文部省唱歌でお馴染みの「ヨナ抜き長音階」と同じになります。(ちなみに前述の「ぞうさん」もこの音階です。) そして「君が代」の旋律もほとんどがこの音階で、「やちよに」の「ち」が、唯一出てくる「シ」の音(律音階の特性音)なので、この「シ」の音程をきちんと出すのが難しい(前後の流れから「ド」に行きたくなる)のです。 2点目は、「君が代」は歌詞よりも旋律の方が音が多い事です。 レドレミソミレ/ミソラソラレシラソ/ミソラレドレ きみがーよーは/ちよにーーやちよに/さざれいしの ミソラソミソレ/ラドレドレラソラソミレ いわおとなりて/こけのむーすーまーーで ↑に記した「ー」の部分を「メリスマ」と言いますが、このメリスマ唱法がちょっと難しいんです。大抵↓こう聞こえてしまいますから。 きみがあよおは/ちよにいいやちよに (中略) こけのむうすうまああで 3点目は、息継ぎする場所です。 歌詞は和歌なのですから、その意味が通じるよう、息継ぎは句ごとに入れるべきなのですが、テンポの問題や旋律の特徴から、特に「さざれ石」という一つの単語も「さざれ」と「石の」に分断されがちです。酷いのになると「君が代は」も「君があ」と「代おは」と歌って分断してしまう歌手もいました。 分断していいのは「苔のむすまで」ぐらいだと思います。 最後は、また1箇所だけですが、発音上の問題で、「君が代は」の「が」は鼻濁音にすることです。これを疎かにすると、歌い出しに出てくるので、この曲の持つ荘厳さをぶち壊してしまうことになります。 ちなみに、もう一つ。 大会場で国歌を無伴奏で独唱する場合、緊張して一層難しくなるそうですね。 以上を踏まえて、うまく独唱できた歌い手は、少ないですね。 野々村さんhttp://www.youtube.com/watch?v=xJJSjQzhZR4&feature=relatedは、評判いいですが、確かに神々しくて上手だと思いますが、キーが高いのが残念です。 深瀬くんhttp://www.youtube.com/watch?v=LRFoFnMRVDgもかなりいいのですが、男声でこのキーは重々しくなってしまいますね。 (だからと言って、キーは変えるべきではありません。) リリコさんhttp://www.youtube.com/watch?v=pyB6lYPaEJ8は、キーも合っているのでかなりいいと思います。 また以上から、本来は「君が代」に変声後の男達の斉唱は似合わない、と言えると思います。
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質問者からのお礼コメント
詳細な回答ありがとうございました<m(__)m> 地の歌唱力が試されるということですね。
お礼日時:2012/1/13 0:50