食事摂取基準において、集団の評価で推奨量を用いない主な理由は、個人の栄養ニーズの多様性と、集団全体の栄養状態をより正確に把握するためです。
個人の違い
年齢、性別、身体活動量、健康状態など、個人によって必要な栄養素の量は大きく異なります。
推奨量は、ある程度の集団を対象とした平均的な値であり、個々の状況を反映していません。
集団の分布
集団内の栄養素摂取量は、正規分布のような形ではなく、様々な要因によってばらつきがあります。
推奨量に達している人が多ければ、集団全体として不足の心配は少ないと考えられますが、必ずしも全員が適切な量を摂取しているとは限りません。
特に、不足している人や過剰摂取している人の存在を見逃してしまう可能性があります。
評価の目的
集団の評価では、不足している人や、逆に過剰摂取している人の割合を把握し、栄養改善のための対策を立てることが重要です。
推奨量に達しているかどうかに注目するのではなく、集団全体の摂取量の分布を把握することが求められています。
集団の評価では、推奨量ではなく、以下の指標が用いられます。
摂取量の中央値
集団の半数の人がその値以上の量を摂取していることを示す指標です。
摂取量の分布
ヒストグラムなどを使って、集団全体の摂取量のばらつきを視覚的に捉えます。
不足者の割合
推奨量を下回る人の割合を計算します。
集団の評価においては、個人の栄養ニーズの多様性を考慮し、集団全体の栄養状態をより詳細に把握するために、推奨量ではなく、摂取量の中央値や分布といった指標を用いることが重要です。