交換レンズレビュー

お散歩・日帰り旅行向け「50mm単焦点レンズ」(その1)

OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8

焦点距離50mmは写真用レンズの基本ともいえます。そこでこのたび、お散歩・日帰り旅行向けともいえる小型軽量なミラーレスカメラ用の50mmAF単焦点レンズを、一挙に紹介していこう思います。

今回はOM SYSTEMの「M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8」のレビューをお届けします。

発売から10年以上を経た古株のレンズではありますが、確かなうえに親しみやすいという素性の良さはいまだに色褪せていません。マイクロフォーサーズ規格カメラのユーザーでしたら、単焦点標準レンズの事はじめとして、ぜひ確保しておきたい1本だといえると思います。

外観・仕様

「M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8」は2014年2月に登場したマイクロフォーサーズ用のレンズ。オリンパス時代の2014年に発売されたレンズですので、ミラーレスカメラ用とはいえ、いまとなってはやや古めの設計ということになります。しかし、その実力はなかなかのもので、筆者も発売当時から作品撮影のために、あるいはお仕事の撮影のためにと、ながらく愛用してきたレンズでもあります。

ブラックとシルバーの2色が用意されています。今回はブラックをチョイス

同じくOM SYSTEMの「M.ZUIKO PRO」シリーズのような高級感のある金属外装は採用されていませんが、まとまりのある小柄なデザインはボディとのマッチングよろしく、使っていてもチープさを感じさせるようなことがないのが良いところです。

操作系

外形寸法はφ57.8mm×42.0mmで、質量は約137gと、とびっきりの小ささと軽さ。マイクロフォーサーズ規格用レンズのメリットを体現しているかのようです。交換レンズとして持ち運んでいても、まったく苦になることがありません。

そうした親しみのある本レンズではありますが、反面、OM SYSTEMお得意の「スナップショットフォーカス機構」やスイッチ類はいっさい搭載されていません。あるのはフォーカスリングのみという非常にシンプルな操作系です。

多くのユーザーにとって日常的な使いやすさを目指したレンズだと思いますので、スイッチやレバーの切り換えなどはむしろ煩わしいだけなのかも知れません。そうした意味では「これはこれで良し!」と思えてきますので不思議なものです。

作例

基本的には絞り開放のF1.8から実用的な画質を提供してくれる本レンズですが、厳密にみるとF1.8での描写は少しシャープネスが緩むように感じています。しかし、個人的な意見になりますが、これがエッジの強い画作りをするOM SYSTEMのボディと絶妙な調和をもたらしてくれているように思えるのです。露出オーバーにならない限り、スナップ撮影などでは、ほとんど絞り開放に任せてしまって良いのではないかと気に入っています。

OM SYSTEM OM-5/M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8/25mm(50mm相当)/絞り優先AE(1/4,000秒、F1.8、−0.3EV)/ISO 200

最短撮影距離は0.25mで最大撮影倍率は0.12倍。最大撮影倍率0.12倍は最短撮影距離に対してそれほど高く感じないかもしれませんが、35mm判換算にすれば0.24倍相当になります。マクロレンズでない通常の標準レンズとして、これはちょっと驚きの近接撮影性能と言って過言でないと思います。このレンズが登場したとき、ミラーレスカメラの、そしてマイクロフォーサーズ規格の利点を強く感じたものでした。

OM SYSTEM OM-5/M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8/25mm(50mm相当)/絞り優先AE(1/6,400秒、F1.8、±0.0EV)/ISO 200

そうは言っても、被写体によっては画面全体での安定した解像感が欲しくなる時もあります。そんなときは少し絞るだけで、この小さなレンズのどこにそんな力が秘められていたのかと思えるほど、目を見張るような高い解像性能を発揮してくれるようになります。

OM SYSTEM OM-5/M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8/25mm(50mm相当)/絞り優先AE(1/500秒、F4.0、−1.3EV)/ISO 200

まとめ

ミラーレスカメラとマイクロフォーサーズ規格のメリットを最大限に生かし、ユーザーに親しみやすさをもたらすコンセプトで登場した本レンズ。まさにお散歩・日帰り旅行向け50mmAF単焦点レンズの鏡ともいえる製品なのではないでしょうか。発売から10年のときを経ても、その素晴らしさは色褪せていません。

OM SYSTEMからは「M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO」のような上位クラスのレンズが登場していますが、それでもなお、方向性を異にしながら魅力を放ち続けているのが本レンズの良いところ。50mm相当の単焦点レンズとして、ロングセラーとなっている理由にも納得できるというものです。と言うよりは、モデルチェンジをする必要がなかったのかもしれません。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。