1974年生まれ。映画作家。
(最終更新:2010年8月12日)
[Cinemascape 5]
映画を見るとき、ストーリーを順に追っていたはずなのに、ふと気づけば、そのことを完全に忘れ、美しい映像に身を委ねてしまうことがある。映画館を出ていま見た映画のことを振り返ると、そんな映像のほうが、物語よりも印象深く憶えている。ある人物の顔が忘れられなかったり、ひとつの風景が脳裏にこびりついて離れなかったり、人間の脳へと映...
『10+1』 No.30 (都市プロジェクト・スタディ) | pp.29-31
[Cinemascape 2]
拙作『エコーズ echoes』の撮影前、私の英語力の問題から、演出上のコミュニケーションを助ける方策が何かないものだろうか、と考えた。プロダクション前のリハーサル時、俳優たちには、私の言語能力の限界を補い助けるよう求め、彼ら自身の言葉で台詞を言い換えることを注文した。この方法論により、台詞を厳密な意味で脚本通りに再現す...
『10+1』 No.27 (建築的/アート的) | pp.29-31
[Cinemascape 4]
私はいま某テレビ局のドキュメンタリー番組のため、同時多発テロ事件についての特別番組を制作している。その取材・撮影を通し、ドキュメンタリー制作のある倫理的な問題に突き当たった。 九・一一の被害者を撮影するとき、彼らの悲劇を番組(つまり、資本主義社会で、利潤を上げる企業の活動)のための「食い物」にしているのではないか?とい...
『10+1』 No.29 (新・東京の地誌学 都市を発見するために) | pp.28-29
[Cinemascape 1]
私の長編第一作『エコーズ echoes』は、概ねアメリカ国内より、ヨーロッパの映画祭や東京国際映画祭での反応のほうが好意的であった。それは、映画を製作していた当時は思いもしなかった地域差であったのだが、そんななか、逆にどこに行っても尋ねられた同じ質問がある。それは「貴方の映画は、アメリカで、英語を使い、アメリカ人ばかり...
『10+1』 No.26 (都市集住スタディ) | pp.31-33
[Cinemascape 3]
幾つかのショットを重ねて然るべく物語の空間配置を説明することなく、一ショットで、音声と光への繊細な感性を画面に漲らせ、われわれを無意識にスクリーンへと吸い寄せてしまう映画作家が存在する。例えば、侯孝賢(ホウ・シャオシエン)。彼にかかれば、ロングショットひとつで、われわれを画面に引きつけてしまう。『童年往事』(一九八六)...
『10+1』 No.28 (現代住宅の条件) | pp.33-34