ノベルゲームにおいて環境人文学に関わるテーマが少ないと感じるのは私だけだろうか。これは環境、非人間を表象することが、人間の社会関係にどう影響するかを捉えるのが難しいということなのか。しかし人間の身体の物質性に注目するとき、再考したいと思う作品がいくつかあった。そのなかでもここでは『沙耶の唄』と『ぼくのたいせつなもの』についてふれてみたい。作品自体へ言及する前に、今回の理論的枠組であるマテリアル・エコクリティシズムについて少しだけ整理する。 人間と非人間の関係を探求するマテリアリズム・エコクリティシズムの議論から、この記事で検討するテーマは三つである。ひとつは人間の抱く純粋性(purity)につ…