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投票に行かなかった自民党支持者 - NHKが予言した棄権者層の民意

投票に行かなかった自民党支持者 - NHKが予言した棄権者層の民意_c0315619_13234209.png朝日の1面見出しは、「自公改選過半数」、「改憲勢力3/2は届かず」と打たれている。毎日も同じで、「自公改選過半数」「改憲3分の2割る」。読売は「与党勝利改選過半数」「1人区自民22勝10敗」となっている。自公維が得た議席の合計は81で、改憲3分の2ラインである85に届かなかった。理由は1人区で自民党が目標どおり議席を奪えなかったからで、1人区で野党側が善戦したからである。新聞各社の情勢調査では、1人区で野党側が取る議席数はせいぜい8ほどで、二桁の10を予想した社はなかったのではないか。特に大分で野党が金星を上げると考えた社はなく、大きな番狂わせが生じている。少なくとも1人区の結果だけを見れば、アンダードッグのアナウンス効果が起きたと評していいだろう。共同通信の序盤情勢報道では、自民は65議席取ると予想され、選挙区で44議席と見込まれていた。結局のところ、総括として何が言えるかというと、公示前後にNHKが世論調査を通じて案内していたとおりの図式になったと言える。二点ある。



投票に行かなかった自民党支持者 - NHKが予言した棄権者層の民意_c0315619_13204091.pngNHKはこう語っていた。(1)有権者は与党の議席ではなく野党の議席が増えることを望んでいる。(2)有権者は憲法改正に対して消極的である。この二点を選挙前の「民意」として強調して解説していたが、果たしてそのとおりの投票結果に落ち着いた。さらに、NHKは、(3)投票率はかなり低くなるだろう、とも予想を述べていた。投票率は48.8%という過去2番目の低さとなっていて、この予測も的中した。NHK、恐るべし。NHKが事前に分析したとおりの民意が出たわけたが、これをさらに深掘りして解読すれば、何が見えるかというと、要するに、自民支持者が投票に行かなかったという仮説になろう。朝日が7月14日に報じた世論調査によると、「比例区ではどの政党、またはどの政党の候補者に投票したいと思いますか」の質問に対して、自民と答えた有権者は35%に上っている。以下、立憲12%、国民2%、公明6%、共産6%、維新6%。投票一週間前でこの数字が出ていて、すなわち、このとおりに投票が実行されていれば、自民党は3500万票を獲得する計算になる。比例の議席にすれば30だろうか。

投票に行かなかった自民党支持者 - NHKが予言した棄権者層の民意_c0315619_13215741.png蓋を開けてみれば、自民の比例獲得票は1750万票に止まっている。アバウトに見積もって、自民に投票すると答えた者の半分が足を止めた。野党支持者たちは投票所に足を運んでいる。今回の選挙の結果は、このように意味を総括することができるだろう。自民支持者の中にも濃淡があり、改憲を強く望む安倍信者の極右もいれば、そこまで欲せず、むしろ国会での与野党の正常な審議が戻ることを望むマイルドな保守もいる。後者は地方に多く住んでいて、ずっと自民を支持しているけれど、アベノミクスの恩恵は全く受けてない人々だ。この者たちの足が1人区で止まり、アンダードッグの現象となった。山梨とか三重とか香川とか、もう少しで野党が取った選挙区も少なくない。消極的な自民支持者たちは、投票に行かないという棄権行動を通じて、安倍晋三の政権運営に自重を促したと言える。加えて、もう一つ言えそうなのは、共同などが圧勝の予想を出したものだから、終盤、自民が慢心して1人区で選挙運動が止まった点も大きい。二階俊博、萩生田光一、甘利明の気が緩んだ。

投票に行かなかった自民党支持者 - NHKが予言した棄権者層の民意_c0315619_13221758.png自民党側の気の緩みは、テレビを見ていても一目瞭然で、緊張感が全くなかった。それは、実は野党の方に原因がある。どれほどマスコミが野党の劣勢を伝えても、テレビに出る野党(立・国・共・社)の幹部に危機感がなく、弁論に迫力がなく、この選挙に賭ける決意や覚悟が窺えなかったため、与党側(萩生田・石田)も泰然自若でのんびりとゲームを流していた。後半のテレビ討論会は消化試合になっていた。1人区で10敗、自民57議席という結果は、安倍晋三にとっては不本意だろう。安倍晋三や右翼の不本意は、産経が胸中を代弁していて、1面見出しに「改憲3分の2割れ」と大きく打っている。ただし、これで安倍晋三の臨時国会での改憲政局に歯止めがかかるかといえば、決してそうとは言えず、国民民主を取り込む策で発議の数を確保しようとするだろう。国民民主の政調会長は渡辺周で、幹部を含め議員を見渡しても強烈な改憲派ばかりが揃っている。北朝鮮や中国との情勢が動けば、いつでも安倍晋三の改憲策動に応じるスタンバイはできている。民民が呼応すれば、立憲の改憲派(山尾志桜里ら)も連動する。

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投票に行かなかった自民党支持者 - NHKが予言した棄権者層の民意_c0315619_13314603.png安倍晋三の立場になって考えてみよう。参院選がかく不本意な結果に終わった以上、再来年の総裁選で四選を確実にするためには、次に控えた衆院選で必ず圧勝しなければならない。衆院選を何の旗印(争点)に掲げて戦うか。改憲しかないのである。10月に消費増税があり、景気は落ち込む方向に向かう。経済政策が争点になったら、今回の参院選と同じドローの結末になるか、地方でもっと大きく負ける可能性が高い。地方保守層のアベノミクスへの期待や信頼は薄れる一方だ。すなわち、野党の改憲派を調略し、改憲をストレートに争点に据え、一か八か国民に是非を問う、正面突破の博打作戦しか安倍晋三には残っていない。負ければ下野だが、ドローでは四選の見通しは立たない。今回の参院選と同じ票の動きになれば、衆院でも改憲3分の2を失う羽目になるだろう。そうなれば四選は潰えたも同然であり、菅義偉が確実に離反して総裁選に出る構えを見せる。安倍晋三としては、求心力を維持するためにも改憲の旗は降ろせないのであり、改憲を前面に押し出して野党を切り崩し、強引に衆院選に持ち込むしかないのだ。

投票に行かなかった自民党支持者 - NHKが予言した棄権者層の民意_c0315619_13225634.pngさて、今回の選挙の注目は、共産党とれいわ新選組の票の動きがどうなるかという点にあった。特に注視したのは共産党の比例の得票数である。結果は448万票。この数字は、前回2016年の601万票を大きく下回っている。153万票、25%も減らしてしまった。議席も1議席減となった。共産党の党としての選挙は敗北である。どれほど1人区で「野党共闘」が善戦したと言い張っても、肝心の党の勢力を減衰させては意味がない。448万票という得票は、2年前の衆院選の440万票とほぼ同数である。このときは枝野幸男の立憲民主が立ち上がり、判官贔屓の同情票を集めて勢いよく急伸、共産党の得べかりし浮動票を回収した。共産党にとってはアクシデントだった。2年前に失った票を回復するのが今回の参院選だったが、見事に失敗、共産党は党勢の復活を果たせなかった。要因の一つとして、新興の太郎新党に票を奪われたことがある。2年前の立憲民主の旋風のときと同じだ。れいわ新選組の比例得票は228万票。2016年参院選の生活の党と山本太郎のなかまたちの得票が106万票なので、そこから122万票を上乗せしている。

投票に行かなかった自民党支持者 - NHKが予言した棄権者層の民意_c0315619_13230983.pngこの上乗せされた122万票の中に、3年前に共産党に入れた票の多くが移動して含まれていると推測することができる。社民党も同じで、3年前は153万票を取り、今回は104万票なので、50万票(33%)がれいわ新選組に流れている。太郎新党が6月中に本格的に態勢を固めて進撃し、選挙の主役になって5議席以上を狙う戦い方をしていれば、共産と社民の減少幅はもっと大きくなっていただろう。次の衆院選は政権選択の選挙となる。仮に枝野幸男が公約の政権構想の中に共産を入れた場合、それまで寝ていた地方の保守票も、刺激されてむっくり起きるという図になっておかしくない。参院選だから、所属が不明な野党統一無所属候補が生きるのであって、衆院選の小選挙区でこの戦術で有権者の支持を受けるのは容易ではないと考えられる。マスコミも、立憲と共産の政策不一致を叩くだろう。特にそのとき、憲法改正が最大の争点となった場合は、政党間のフリクションを隠せず、「野党共闘」はきわめて面倒な状況に陥るに違いない。いずれにせよ、政党の観点から見れば今回の選挙はドローに終わった。

勝ったのは、維新と、NHKが主役に想定した棄権者のサイレントマジョリティである。安倍自民の圧勝とはならなかった。新聞各紙の1面大見出しに安倍圧勝の文字はない。何とかいつもの悪夢を回避できた。客観的・総論的には安倍晋三の6連勝に違いないが、6勝の中でも最もほろ苦い勝利であり、意図が外れ、改憲に慎重な民意が浮上する選挙となった。


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by yoniumuhibi | 2019-07-22 23:30 | Comments(5)
Commented by 一仙台市民 at 2019-07-22 19:25 x
自公与党はとりあえず過半数が当選しましたが、今回、全て1人区になった東北6県は、野党共闘で4県が勝利しました。
加えて新潟も、かつては東北7県とも言われ、東北電力の管轄にあるので、宮城県民としてはかなり親しみがあります。
終盤、山本太郎氏の力が大きかったと思います。できれば6県全て回ってほしかったけれど、仙台での演説会は、まさに歴史に残るような熱いものでした。
この場に居合わせたことを誇らしく思います。石垣のりこさんとの呼応もなかなかでしたね。
ただ、立憲民主党はやはり自党の議員当選が何より大事、という印象は否めません。
消費税ゼロと公示前にはっきり宣言してしまった石垣さんが、今後立憲民主党という大きな組織の中で、
新人議員としてどう行動して行くかが、期待もあるし心配でもあります。
Commented by さな at 2019-07-22 19:31 x
共産党は、大阪で宮本岳志に次いで辰巳が落選した事実を、しっかりと受け止めてほしいです。この2人は非常に重要な議員だったと思いますので、残念です。
今回勝ったのは菅義偉でしょうか。岸田が総裁候補脱落、安部の改憲はすんなりいかなくなった。
特に岸田を脱落させた過程(広島で2人擁立)は、見事といってもいい。私は岸田はリーダーの器ではないと思っていましたから。
国民民主党は、今後、没落していくと思います、当然でしょうね。
立憲民主党もいうほど選挙区では支持されていないですね、世に倦むさんの東京選挙区の分析ぴたりとあたりましたね。
最後6議席目を右がとるという言葉通りに、維新がとりました。
Commented by 愛知 at 2019-07-23 01:05 x
愛知選挙区は定数4に12人が出馬。結果は、予想通りというか残念なことに(自)(国)(立)(公)。続く圏外は(維)(共)。(維)は河村名古屋市長の地域政党、(減税)と統一候補。河村市長(南京大虐殺などなかったと公言)が付ききりでしたが、近くで見ていても聴衆は立ち止まらず。(維)は大阪でしょという醒めた空気。ところで「野党は共闘」という耳にタコのフレーズ、そんなもの、有権者に見えるところで言って、有権者に関係ないでしょという思いがずっと。一般の多くの方は「アベ倒せ」に興味もなく、むしろ嫌悪感が。そこに持ってきて有権者がメリットを感じられない「野党は共闘」でダメ押しの感が。驚いたのは投票日前日の夕方。名古屋の中心地、栄に200人から300人のスーツ姿(上着なし、ノーネクタイ)の一団が。30代から40代の働き盛りばかりで、定年退職者中心の見慣れたデモの光景からすると異様。手にしているのは「投票に行きましょう」のプラカード。選管の人たちかと思って先頭を見ると「連合」のプラカード。どうするのか見ていたら合流した先は(国)の街宣車。どうか(国)が改憲で(自)に呑み込まれないでと祈るばかりです。いつも乍ら正鵠を射た分析に感謝します。
Commented by コス at 2019-07-23 10:30 x
しぞーか選挙区では、当初はTが数ポイントリードしてたともいいます。ただ、おざーが浜松入りして車屋(軽自動車作ってる車屋)の爺さんに、別の野党の候補者の支持をお願いした。
(これは記事になってました)
この候補者はほんとにみっともなかったです。「わたしは皆さんと同じ庶民だ、庶民の生まれだ」とかそんなことばかり連呼して、自民政治批判はせず、政策論も言わず、ひたすら同情を誘おうとしてました。
この候補者に対する憤懣がR憲内部にかなりあったから、どうしてもとここに候補者を立てたんですよね。自民の関係者と飲食をともにし、ゴルフをしてる人ですから。
で、官邸も、この候補者は崩せるからR憲が当選するよりはいいと、自民票を回したと記事にされていました。

私は政治には幻想は抱いていませんし、過大な期待ももっていませんが、R合とかおざーが裏で操ろうとする勢力は、隠れ自民みたいなもので、まったく支持できません。

Commented at 2019-07-24 02:42 x
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