野党の経済政策には未来がない - 豊かにする経世済民の理念がない
鬱陶しい梅雨空の日が延々と続き、晴れ間は全く見えない。参院選は、残念ながら経済政策が争点として盛り上がる方向に行かず、憲法(改憲)の方にマスコミの焦点が当たるという最悪の形勢となった。野党側の非力と失態のため、安倍晋三の思いどおりに選挙戦が運ばれている。已んぬる哉。久しぶりに経済に関心が集まり論争される局面になるかと期待し、経済統計を調べて資料作成に励んだが、その努力と準備が特に役に立たない進行となった。昨夜(15日)のNHKの夜のニュースを見ていると、各党党首の街頭演説が短く切り取られ、要点として放送されていたが、NHKらしい巧妙で狡猾な細工が施され、安倍自民の盤石を印象づける映像に仕上がっていた。安倍晋三は、野党の財源案を「できもしない公約」と切り捨て、自民党政権の経済運営を自画自賛、安定を力説して支持を訴えている。一方、枝野幸男は、選択的夫婦別姓と同性婚を訴え、多様性を重視する姿勢を強調している。この二つのメッセージを比較して、普通に受け止められるのは、自民党が選挙に勝つだろうという大勢の示唆だ。
自民安倍と立憲枝野が四つに組んでいない。NHKが四つに組ませていない。もともと、この選挙戦はあの2千万円の老後資金問題が焦眉の関心事として浮上し、年金政策が最大の争点となって火蓋が切られたものだった。マスコミの世論調査でも、有権者が注目する第一は年金と消費税であり、社会保障と経済政策である。その国民の視線に即して、公示日以来の論争が行われてきたはずだった。しかるに、投票を6日後に控えたテレビ報道で、立憲民主の主張を選択的夫婦別姓と同性婚にフォーカスし、立憲民主の政策の個性を特徴づける処理をしているということは、立憲民主がこの選挙において年金問題で有効なカウンターを放っておらず、噛み合った論戦になっていないことを暗示している。財源問題で有権者に示すほどの内容はないとNHKが査定していることを暗黙裏に意味づけている。NHKがそのようにバッサリ裁断するのは、おそらく終盤情勢で大差がついているからだろう、そういう背景と事情があり、NHKが報道の根拠に自信を持っているからだろうと、普通の視聴者は推測し判断する。
7月からの既成政党の論戦を聞きながら、つくづく思ったことは、特に野党は日本経済に未来を描いてないということだった。与野党とも経済成長に対して積極的ではないが、それでもまだ、安倍晋三や萩生田光一は、パイの拡大が必要だというフレーズを(形式的には)小さな声で挿入する。安定的な年金財源を見積計上するためには経済成長を想定しないといけないという一般論は小さく囁く。大きな声で断言はしないが、小さな声でそれを呟く。経済成長論を強く前面に押し出すことはしないが、消極姿勢ながら、与件としてそれが必要だという霞ヶ関の政策論は崩さない。野党の議論には、経済成長の契機が全くないのである。経済成長などあり得ないという態度で一貫していて、経済成長で社会保障の財源を確保するという発想を完全に棄てている。経済成長が視野になく、その必要性が眼中にない。政策理念の中に経済成長の要素がない。ずっとこのまま、500兆円のGDP規模が永久に続くか、より縮小するかの如き表象で日本経済と社会保障を考えていて、最弱者への行政の手当策ばかりを論っている。
不毛だ。自民党の経済政策は欺瞞だが、野党の政策は「施し」の類であり、経世済民のセオリーとコンセプトを欠いている。本来、社会保障の政策は、経済成長と一緒にパッケージで考えなくてはいけない問題であり、経世済民として一つのものである。経済成長が順調に伸びるから社会保障も潤沢にできるのであり、社会保障を充実させるためにこそ経済成長はどうしても必要なのだ。われわれはここに、名宰相としての田中角栄のキャラクターを置き、経世済民の本義を確認することができるだろう。現在の自民党の政策とも全く逆方向で、現在の野党の政策とも完全に異なる。田中角栄のとき、日本の社会保障は大幅拡充され、70歳以上の老人医療費の無料化が実施され、年金支給額が大胆に増額され、生活保護水準も引き上げられた。それを革新自治体が後押しした。田中角栄と革新自治体は競争するように日本の福祉を充実させ、「世界で唯一成功した社会主義国」として海外から羨望される国になった。田中角栄には経世済民の確かな理念があったと言える。何のために経済成長するのか。国民の福祉のためだ。
野党の経済政策には夢がない。国民生活を豊かにするという理想と信念がない。逆に、貧しくても構わないという断念と諦観がある。宗教的な感覚すら漂わせる屈折した清貧主義があり、豊かさを忌み嫌う奇妙なバイアスがある。経済を豊かにしなくても、他の課題の達成で人間は幸せになれるという強烈な意識があり、同性婚だの、LGBTのための公衆トイレだの、そんな方面の(新しい文化左翼の)政策にばかり注力している。むしろ、経済成長は悪であるという規定すら前面に押し出し、右肩上がりに執着する者は時代遅れのマッチョイストだというレッテルを貼って排除する倒錯に及んでいる。田中優子や小熊英二や内田樹がそうだ。旧民主党がこの方向性を牽引し、8年前からのしばき隊の跳梁跋扈を通じて共産党がこの思想に感染、「野党共闘」時代の標準の政策哲学として定着した。文化左翼の動機づけは、ジェンダー、マイノリティ、LGBTにあり、さらに、麻薬解禁、(子どもの)刺青解放、入管解体というような過激な極リベラリズムへ暴走しており、止まるところを知らない。どれほど貧困でも構わないらしい。
日経が6日に発表した世論調査によると、20代の政権支持率は7割に上っていて、若い世代ほど安倍政権へのコミットが強い。同じく日経が3月に発表した世論調査を見ても、安倍四選の是非を尋ねたところ、全体では賛成35%で反対54%だったのに、39歳以下は過半数が賛成だったという結果が出ている。他のマスコミの調査を眺めても、同じ傾向のデータが出ていて、若年層の安倍支持・自民支持はくっきりした現象となっている。この事実について、政治思想すなわちイデオロギーの面から、右翼教育(マンガ・テレビを含めて)の影響に着目しなければならないのは当然だが、理由はそれだけではないように思われる。反安倍野党の側の経済政策に魅力がなく、経済成長の展望が描けてなく、そこに自分たちが豊かになる未来とその経路が示されてない点が重要なのではないか。本当に気の毒なことだが、普通の庶民として生まれた日本人の若者には豊かな人生を得られる希望がなく、そこへ導いてくれる政治がない。その政策を約束する政党がない。銀座を歩いても、奥日光を歩いても、そこで消費や観光を楽しんでいるのは中国人だけだ。
自民安倍と立憲枝野が四つに組んでいない。NHKが四つに組ませていない。もともと、この選挙戦はあの2千万円の老後資金問題が焦眉の関心事として浮上し、年金政策が最大の争点となって火蓋が切られたものだった。マスコミの世論調査でも、有権者が注目する第一は年金と消費税であり、社会保障と経済政策である。その国民の視線に即して、公示日以来の論争が行われてきたはずだった。しかるに、投票を6日後に控えたテレビ報道で、立憲民主の主張を選択的夫婦別姓と同性婚にフォーカスし、立憲民主の政策の個性を特徴づける処理をしているということは、立憲民主がこの選挙において年金問題で有効なカウンターを放っておらず、噛み合った論戦になっていないことを暗示している。財源問題で有権者に示すほどの内容はないとNHKが査定していることを暗黙裏に意味づけている。NHKがそのようにバッサリ裁断するのは、おそらく終盤情勢で大差がついているからだろう、そういう背景と事情があり、NHKが報道の根拠に自信を持っているからだろうと、普通の視聴者は推測し判断する。
7月からの既成政党の論戦を聞きながら、つくづく思ったことは、特に野党は日本経済に未来を描いてないということだった。与野党とも経済成長に対して積極的ではないが、それでもまだ、安倍晋三や萩生田光一は、パイの拡大が必要だというフレーズを(形式的には)小さな声で挿入する。安定的な年金財源を見積計上するためには経済成長を想定しないといけないという一般論は小さく囁く。大きな声で断言はしないが、小さな声でそれを呟く。経済成長論を強く前面に押し出すことはしないが、消極姿勢ながら、与件としてそれが必要だという霞ヶ関の政策論は崩さない。野党の議論には、経済成長の契機が全くないのである。経済成長などあり得ないという態度で一貫していて、経済成長で社会保障の財源を確保するという発想を完全に棄てている。経済成長が視野になく、その必要性が眼中にない。政策理念の中に経済成長の要素がない。ずっとこのまま、500兆円のGDP規模が永久に続くか、より縮小するかの如き表象で日本経済と社会保障を考えていて、最弱者への行政の手当策ばかりを論っている。
不毛だ。自民党の経済政策は欺瞞だが、野党の政策は「施し」の類であり、経世済民のセオリーとコンセプトを欠いている。本来、社会保障の政策は、経済成長と一緒にパッケージで考えなくてはいけない問題であり、経世済民として一つのものである。経済成長が順調に伸びるから社会保障も潤沢にできるのであり、社会保障を充実させるためにこそ経済成長はどうしても必要なのだ。われわれはここに、名宰相としての田中角栄のキャラクターを置き、経世済民の本義を確認することができるだろう。現在の自民党の政策とも全く逆方向で、現在の野党の政策とも完全に異なる。田中角栄のとき、日本の社会保障は大幅拡充され、70歳以上の老人医療費の無料化が実施され、年金支給額が大胆に増額され、生活保護水準も引き上げられた。それを革新自治体が後押しした。田中角栄と革新自治体は競争するように日本の福祉を充実させ、「世界で唯一成功した社会主義国」として海外から羨望される国になった。田中角栄には経世済民の確かな理念があったと言える。何のために経済成長するのか。国民の福祉のためだ。
野党の経済政策には夢がない。国民生活を豊かにするという理想と信念がない。逆に、貧しくても構わないという断念と諦観がある。宗教的な感覚すら漂わせる屈折した清貧主義があり、豊かさを忌み嫌う奇妙なバイアスがある。経済を豊かにしなくても、他の課題の達成で人間は幸せになれるという強烈な意識があり、同性婚だの、LGBTのための公衆トイレだの、そんな方面の(新しい文化左翼の)政策にばかり注力している。むしろ、経済成長は悪であるという規定すら前面に押し出し、右肩上がりに執着する者は時代遅れのマッチョイストだというレッテルを貼って排除する倒錯に及んでいる。田中優子や小熊英二や内田樹がそうだ。旧民主党がこの方向性を牽引し、8年前からのしばき隊の跳梁跋扈を通じて共産党がこの思想に感染、「野党共闘」時代の標準の政策哲学として定着した。文化左翼の動機づけは、ジェンダー、マイノリティ、LGBTにあり、さらに、麻薬解禁、(子どもの)刺青解放、入管解体というような過激な極リベラリズムへ暴走しており、止まるところを知らない。どれほど貧困でも構わないらしい。
日経が6日に発表した世論調査によると、20代の政権支持率は7割に上っていて、若い世代ほど安倍政権へのコミットが強い。同じく日経が3月に発表した世論調査を見ても、安倍四選の是非を尋ねたところ、全体では賛成35%で反対54%だったのに、39歳以下は過半数が賛成だったという結果が出ている。他のマスコミの調査を眺めても、同じ傾向のデータが出ていて、若年層の安倍支持・自民支持はくっきりした現象となっている。この事実について、政治思想すなわちイデオロギーの面から、右翼教育(マンガ・テレビを含めて)の影響に着目しなければならないのは当然だが、理由はそれだけではないように思われる。反安倍野党の側の経済政策に魅力がなく、経済成長の展望が描けてなく、そこに自分たちが豊かになる未来とその経路が示されてない点が重要なのではないか。本当に気の毒なことだが、普通の庶民として生まれた日本人の若者には豊かな人生を得られる希望がなく、そこへ導いてくれる政治がない。その政策を約束する政党がない。銀座を歩いても、奥日光を歩いても、そこで消費や観光を楽しんでいるのは中国人だけだ。
日本の若者には、所得減と負担増の緊縮ばかりが押しつけられる。他の諸国は20年間で2倍3倍の経済成長を成し遂げている。GDPが2倍になるのだから、所得も税収も自然に2倍になり、社会保障基盤の厚みも2倍になるだろう。だが、日本ではそれがアジェンダにならない。最近、MMT学者の松尾匡が『左派・リベラル派が勝つための経済政策作戦会議』と題した新刊を上梓していて、本の内容紹介の欄に次のように書いている。曰く、「リベラルが何度も失敗を繰り返してきたのは、『景気拡大反対』『脱成長』のイメージがあったから。長期不況や小泉構造改革などで失業した人、あるいはやっと職にありついた人たちには自分たちが救われないとしか聞こえない。左翼とかリベラルのイメージが嫌われたというよりは、『なるべくお金を使いません』という倹約的なイメージが嫌われていた。この現象は世界中で起こっている。安倍総理の経済政策は本当はどちらかと言えば緊縮。国民の生活のためにお金をたくさん使いますという姿勢はかなり疑わしい。しかし左派側がもっと景気の良い対案をアピールしないせいで負けている」。
基本的に正論で、私と同意見だが、せっかく松尾匡が6月中旬にかかる本を出版しながら、この種の問題提起は全くマスコミに取り上げられず、選挙戦の経済政策の討論に割り込むことがなかった。残念なことである。その責任は山本太郎にもあるのだろうけれど。
by yoniumuhibi
| 2019-07-16 23:30
|
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