哲学科に進まない人のための哲学書25冊

※2013年5月くらいに書いたらしい書きかけの文書。

哲学史と哲学的論題

哲学史は問題の花園である。
それは ふつうの人は どんな問題に関わってはいけないか を教えてくれる。暮らしの中で そうした特殊な問題に出会ったときには、その問題が出ないところまで戻ってやり直すか、それを回避するようなプラクティカルな手立てを何か考えるべきだ。しかし哲学的な問題に うっかり哲学的に取り組んでしまわないためには 哲学を学ぶ必要がある。自分が特殊な問題に出会っていることに気づくためには知識が要るのであって、哲学者を目指さない人が哲学(史)を学ぶ 第一の・そして最大の意義はそこにある、と私は思う。

他方、職業哲学者たちは そうした ふつうの人が関わってはいけない問題に 人類を代表して取り組んでいるのだから、敬意をもって遇するべきであろう。
アナス&バーンズ『古代懐疑主義入門――判断保留の十の方式 (岩波文庫)』(ISBN:4000003313、ISBN:0521256828、ISBN:0521276446)
一家に一冊。ものすごく実用性が高い。
会議なんかで このカタログに出てくる論法を誰かが使ったら、議論に何か不味いことが起きていないかチェックしてみたほうがいい。
ウンベルト・エーコ『薔薇の名前〈上〉』『薔薇の名前〈下〉』
普遍性が関わる論題は、日常生活の中にも頻出する。
問題になる前に・早くに気づいて、いつでも逃げられる態勢をとっておきたい。
ディーター・ヘンリッヒ『神の存在論的証明 新装版: 近世におけるその問題と歴史 (叢書・ウニベルシタス 190)』
日本で生まれ育った人には その意味・意義・重要性が およそ理解しがたい表題のテーマが、なぜ また どのように繰り返し論じられてきたのかが丁寧に解説されている。
廣松 渉『新哲学入門 (岩波新書 新赤版 5)』、『哲学入門一歩前-モノからコトヘ (講談社現代新書 916)』
私がこれまでに読んだものの中で最も易しくて親切な哲学入門書はこれ。
イアン・ハッキング『言語はなぜ哲学の問題になるのか』
この本も入門に適していると思う。

解決策

問題が生じた時に、それを解消するやり方を教えてくれるもの。

J. L. オースティン『オースティン哲学論文集 (双書プロブレーマタ 2-5)』
読むと頭がよくなる。
ハーバート・ハート『法の概念』
そうしたやり方でもって、現実にあるものを どんなふうに扱えるか、というのの一つの実例。

古典

中公『世界の名著』で。
偉い人のセレクションに従っておこう。

教養

マルティン・ハイデガー『ニーチェ1 (平凡社ライブラリー)』『ニーチェ2 (平凡社ライブラリー)』
対象の読解に必要なことがら──たとえば「伝統的な美学・芸術学において何がなぜどのように論じられてきたのか」など──を簡潔かつ丁寧に教えてくれる。
ハイデガーの厚めの講義録は みんなそんな感じ。読むと教養が簡単に増える。