シュワントナーの重要な証言
お馴染みBand Journalに連載ものとして「視点」というコーナーがあって、現在は作曲家の後藤洋氏が執筆してるのだが、2月号の内容は個人的に示唆に富む内容だったので、ご参考までに。題は、『それはもはや私の音楽ではない!〜作曲家の意図と「編成」』
まずシュワントナーとは誰かというと、
ジョセフ・シュワントナー(1943〜)は、言うまでもなくアメリカの現代音楽界における最重要人物の一人。オーケストラや室内楽のための作品も多いが、われわれにとって最も重要なのは、大編成の管楽合奏のための作品群だろう。特に《…そしてどこにも山の姿はない and the mountains rising nowhere》(1997)は、その音響と時間の設計に対するまったく新しいアイディアによって「ウィンド・ミュージックの世界を根底から変えた」(コーポロン)記念碑的作品といえる。
で、後藤洋氏は2005年の春にシュワントナー本人に会う機会があって、思い切って質問してみた。「《…そしてどこにも山の姿はない》の吹奏楽版は作れないの?」
シュワントナーの作品は多くが編成が特殊。《…そしてどこにも山の姿はない》もそうで、
6本のフルート(4本はピッコロ持ち替え)、4本のオーボエ(2本はイングリッシュ・ホルン持ち替え)、2本のクラリネット、4本のバスーン、それぞれ4本ずつのトランペット、ホルン、トロンボーン、1本のテューバ、コントラバス、ピアノ(PAで増幅される必要がある)、そして、ほぼ30種類の楽器を駆使する6人の打楽器奏者が要求されている。
面白いのは打楽器奏者が何するかというと、ワイングラスをザーッと並べてふちを擦るんですね。とってもとっても不思議な空間が広がる。曲の詳細はこちらへ→http://www.meiwa.tv/new_page_193.htm
通常この作品が演奏されるとき、大抵この指定を無視して「通常の」編成で演奏されてしまうのを後藤氏は懸念して、吹奏楽版があればもっと演奏されるはずだ、と。
だが、
しかし、シュワントナーの答えは「ノー」であった。
「いや、イエスとかノーとかの問題ではないな。そんなことは考えられないし、考えたこともない。それはもはや私の音楽ではない。そんな提案をしたのは君が初めてだ。」
と彼は続け、逆に筆者に訊ねた。
「日本では私の作品をそうやって演奏しているのか?」
まさか「イエス」と言うわけにはいくまい。※強調は引用者による
やられましたな。そりゃそうだ。
その後後藤氏の奮闘が続くわけだけど、まあそれは各自読んで頂くとして、面白い言及としてはこんなの。
日本の吹奏楽コンクールではメシアンの《われ死者の復活を待ち望む》も演奏されたことがあるが、これもほぼシュワントナーの《…山…》と同様の編成(多数のカウベルとゴングが必要)。グレグソンの《剣と王冠》はサクソフォンを含まない代わりに、拡大されたトランペット・セクションが特徴。シュミットの《ディオニソスの祭り》は非常に大きな編成で、各種のサクソルン系金管楽器が加えられている。
メシアン演奏されたんだ。そう《われ死者の復活を待ち望む》は編成としては管楽器と打楽器が指定されてて、弦楽器がない。これを聴いたとき「吹奏楽で演奏すればええじゃん」て思ったんだけど、絶対反発あるだろうからね。無調音楽反対!って。そういうのを偏見だ、って思うのだけれど。
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最後にシュワントナー関連。聴いたことない方は、聴くべきだよ。
…そしてどこにも山の姿はない/and the mountains rising nowhere
- アーティスト: ユージン・コーポロン,ノース・テキサス・ウインド・シンフォニー
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ここであげるCDの殆どは実際に持ってないので、プレゼントしてくれたら泣いて喜ぶよ。
*1:http://inkpot.com/classical/wildflowers.html コーポロンはしっかりした仕事してると思うよ。一連の録音の中にはシュワントナーの作品を多く取り上げてるよ。