キャラクタードリヴンでのプロジェクトが今後加速する
キャラクタードリヴンという言葉がある。もともとは映画だとかの制作の現場で、ストーリーを主軸にして作品を作るのか、キャラクターを元にして作品を作るのかみたいなところで使われる言葉だ。キャラクターを重視すれば作品自体はキャラクターを引き立てるためだけの道具となり、ストーリーを重視したら(プロットドリヴン)キャラクターは作品のための記号となる。マンガはキャラクタードリヴンの性質が強く、それゆえに二次創作がされやすいし、小説や映画はプロットドリヴンの性質が強い。
このキャラクタードリヴンという言葉を全く別のシチュエーションで目にした。「南極点のピアピア動画」というニコ動をモデルにしたSF小説(ライトノベルなのか?)があり、ニコ動だとか初音ミクだとかのサブカルチャーを取り入れつつも、SF小説としての出来がいいと評判だったため、電子書籍で読んでみた。内容は、ニコニコ技術部などのニコ動コミュニティが中心となって、ロケットやら宇宙エレベーターやらを作るみたいな話なのだが、それらのプロジェクトはすべて、初音ミク(作中では小隅レイ)を偶像崇拝する形で進めていくという「キャラクタードリヴン」のプロジェクトだったのだ。作中ではこのキャラクタードリヴンという考え方を最重要視しており、初音ミクを神輿に担ぐことでいろいろなプロジェクトが成功に導かれる事となる。
この偶像のもとに集まるコミュニティの熱量をコントロールするというのは今後非常に重要になってくるのではないだろうか。そのコミュニティには利害関係が存在せず、その偶像という共通のバックグラウンドがある。このオープンコラボレートとソーシャルメディアの時代、そういったつながりは強固で、大きな価値を持つ。その偶像自体が法律で国家でプラットフォームとなるだろう。ポップカルチャーを裏から操ろうと試みているbackplane社が提供しているlittlemonster.comなんか、完全にこれを狙っている。Lady Gagaを偶像として、その周囲のコミュニティの熱量をコントロールして新しい価値を生み出そうとしている。
おれはあまり詳しくはないのだけれど、エヴァンゲリオンはキャラクターを重要視し、それに伴って発生したコミュニティの熱量を巻き取る形でエコシステムを形成し、カルチャーとなったらしい。そのため、ストーリーの変更や設定の変更などは当たり前で、二次創作を認めながらエヴァンゲリオンを拡張していく。これもかなり直接的ではあるが、見事なキャラクタードリヴンのビジネスだと思う。
最近だとRovioがこの分野を支配しようとしている。次々とAngry Birds関連グッズとメディアミックスを発表し、キャラクターを基準とするコミュニティを着実に広げつつある。そして事実、Angry Birdsにあやかろうと様々なタイアップの話がきている。Angry Birdsはキャラクターがすでにプラットフォーム化している。この熱量がうまくコントロールできれば(もちろんやる気だろうが)彼らの目指しているDisney超えは実現すると考えている。
ゲームは漫画キャラなどと違い、ストーリーや思想があまり強くないため、キャラクタービジネスに昇華させるのに向いていると思う。量産されているカジュアルゲームの中から上手く、なにか魅力的なキャラクターができ、そのまわりにできたコミュニティの熱量をうまくコントロールし、カルチャーを作っていく。その過程の副産物が価値を生み出していく。
これは現代の宗教だと言っても過言ではないのかもしれないが、ソーシャルメディアによってこんな時代が確実にきている。